揺れ動く女心
ここは、山に囲まれた、田舎町。人口8000人程の、小さな集落だ。ここで生まれた、若林理子は、今、38歳で、バツイチで子供は、いない。都会に、憧れて、東京に出て、働いていた時に、知り合った男性と、結婚したが、性格の不一致から、別れた。
その後、地元に、帰ってきた。刺激もなく、つまらないな、と思いながら、生活をしていた。そんな矢先、理子にとって、憧れだった高校の先生、鈴木正人と、再会したのだ。とても嬉しかった。先生と、時の経つのも忘れて、立ち話をしてしまった。先生は、バツイチになっていた。10歳の年の差は、あったが、話がはずんだ。
理子は、先生と生徒の関係から、大人の男女の関係に変わったことを、感じていた。これから、先生と、もっと、親しくなりたいと思っていた。先生も、理子が、大人になって、きれいになったと思って、感慨深げだった。理子は、持ち前の明るさから、先生に、「先生、先生は、今、付き合ってる人いますか?いないなら、私、立候補します。」と、言った。先生は、ビックリした様子で、理子を見ながら、「誰も付き合っている人は、いないよ。」と言った。「でも、歳も離れてるし、もっといい人いると思うよ。」と、先生は、言った。理子は、「先生がいいの。」と、なかば、強引に腕をくんだ。先生は、戸惑いながらも、嬉しかった。そして、2人は、付き合う様になった。
そんな時、先生をよんで、クラス会をしようということになった。そして、そこには、もちろん、先生と理子も、出席することになった。クラス会は、20人くらいが、集まっていた。みんな、にぎやかに話をしていた。その時、理子のもとへ、駆け寄ってきた、男性がいた。高校時代に、付き合っていた、飯塚圭一だった。理子は、ビックリしたのと、懐かしさで、圭一を見た。圭一は、理子に、「結婚したの?」と、聞いた。理子は、「バツイチだよ。」と、応えた。圭一は、「俺は、まだ、独身だよ。俺たち、また、付き合わないか。」と、言ってきた。理子は、「私、今、お付き合いしてる人がいるの。」と、言った。圭一は、「そうなのか。」と言った。その様子を、先生は、黙って見ていた。
クラス会が、終わって、理子は、先生と一緒に、帰った。先生は、理子に、「飯塚圭一くんと親しいの?」と聞いた。理子は、正直に、高校時代に付き合っていた事を、話した。そして、また、付き合わないか、と、言われたことも、そのまま、話した。先生は、「それなら、飯塚圭一くんと、付き合ったら、どうかな?」と、理子に言った。理子は、怒って、「先生、ひどい。」と、言った。少しの沈黙の後、先生は、「その方が、君が幸せになれると思う。」と、言った。理子は、「それは、私が決めることで、先生が、決めることじゃないと思う。」と、言った。理子は、悲しくなっていた。
先生は、複雑な気持ちになっていた。理子のことを、好きになりかけているが、理子にふさわしいのは、飯塚圭一の方ではないかと思っていた。そして、離婚したこともあり、自信がなくなっていた。
理子も、いろいろと、考え始めていた。先生が、どうして、圭一くんと付き合った方が、いいというのか。先生が、自分のことを、どうして、受け入れてくれないのか。でも、あれこれ、考えても、結論は、出なかった。先生に、当たって砕けるしかないと、思っていた。
先生と、地元のファミリーレストランで、待ち合わせた。食事をしながら、理子は、単刀直入に先生に聞いた。「先生は、私の事をどう思っていますか?」先生は、「君のことは、好きだけど、今は、まだ、自信がないんだよ。」と、言った。理子は、「じゃあ、私との結婚は、考えられますか?」と聞いた。先生は、「君が、本当に、僕でいいなら、考えたい。」と、応えた。理子は、「先生がいいの。」と言った。
その場で、先生は、理子に、プロポーズをした。「こんな俺だけど、理子と結婚したい。結婚しよう。」そう言って、理子の手を握った。理子は、とび上がる程、嬉しかった。離婚の後、何もいいことがなくて、田舎の地元に、帰ってきたけど、憧れだった先生と、結婚できるなんて、夢の様だった。理子は、まるで、高校時代の少女の様な気持ちになっていた。
そんな理子のもとに、一人の女性が、訪ねてきた。それは、先生の元奥さんだった。せまい田舎町だったから、先生と理子が付き合っているのを、聞きつけてきたらしい。先生の元奥さんは、理子に、「鈴木(先生)と、別れてください。」と、言ってきた。「鈴木には、子供も3人います。私は、鈴木とやり直そうと思っています。」と、元奥さんは、言った。理子は、何も言う事ができなかった。子供さんのことを考えたら、先生と、別れなければいけないと、思っていた。理子は、「考えさせてほしい。」と言った。元奥さんは、連絡先を置いて、帰って行った。
理子は、やはり、先生と、別れることに、決めた。それは、それは、辛い選択だった。でも、仕方がなかった。先生に、なんと言って、別れたらいいのか、迷っていた。お互い、未練は、残さないようにしたかった。難しいことだったが。
先生を、ファミリーレストランに、呼び出した。理子は、すぐに、「先生、ごめんなさい、やはり、私、先生とは、結婚できません。」と、言った。先生は、ビックリして、「どうして?」と聞いてきた。理子は、言葉につまって、しばらく黙っていた。「私は、やはり、まだ一人でいたくなりました。」と、理子は、声を震わせながら、話した。先生は、「そうか。」と言ったきり、しばらく、考え込んでいた。
先生も、理子も、少し涙ぐんでいた。先生は、「君が決めたことなら、従うよ。」と言って、お店を出ていった。理子も、後を追う様にお店を出た。
その後、理子は、風の噂で、先生と元奥さんが、復縁したことを知った。理子は、これで良かったのだと、自分にいいきかせていた。自分の幸せも、大事だが、先生の子供達には、不幸になってほしくはなかった。
理子は、これから、また、素敵な人と、巡りあえるように、自分磨きを、頑張ろうと、思っていた。この経験は、決して、無駄ではなかったと思っている。




