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底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす  作者: うどん


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第66話:裏切りは蜜の味

 お宝お宝と譫言のように呟きながら連続ブーストで先に行ってしまったランさん。

 パージした武装を回収し、俺も急いで彼女を追い掛けた。

 カメラのシャッターのように自動で開いた扉の先。

 そこには巨大な螺旋階段のようなものがあり、下へと穴が続いていた。

 ランさんの反応は穴の下で、少し悩みながらも俺は穴の下へと向かった。


 警戒しながら進み。

 穴の奥底まで進んでいけば、またしても扉があった。

 が、既に開いた状態であり、中ではランさんが何かをしていた。


 俺は床を滑りながら彼女の下までいき――感嘆の息を漏らす。

 

「……おぉ」

《……凄いでしょ?》


 そのエリア内にはお宝がある。

 中心から段々になるような構造になった広い部屋。

 無数の箱状の機械――データ保管用のサーバーがある。


 ランさんはその中心にてデータを収集している。

 サーバーたちの上では無数のウィンドウが表示されていた。

 それらを見ただけでも、どんなデータであるかは素人でも分かる。

 それらのデータこそが、金銀財宝にも勝るお宝たちだ。

 

 

 金でも調度品でもない。傭兵にとっての宝――“設計図のデータ”だ。


 

 メックや武装。

 特殊合金のレシピや金属ではない特殊な素材のレシピもある。

 俺にとっても宝だが、竜一が見れば三日三晩踊り狂う代物ばかりだ。

 レシピについては判断できないが。

 パッと見でメックや武装に関しての設計図は……かなりの値が付くんじゃないか?


 素人が作ったものじゃない。

 タイタンシリーズのお抱えメカニックが作ったであろうものたちだ。

 そんじょそこらのプロの作ったものよりも質は良く。

 これらのレシピから作った素材を使ったのであれば……そうだな。


「……一流のEスポーツチームを相手にしても、経験の差を埋められるくらいには……いや、でも……」

《何? 欲しいの? 悪いけど、これ全部データを取ったら消えちゃうから。それにぃ、共有何てしないから。分かると思うけど、データは独占するからこそ価値があるんだなぁ……ふふ、どうするぅ? 私を殺す? 此処で? その物騒な武器でさぁ。ねぇねぇ……ねぇ》


 俺がぼそりと呟けば、ランさんが機体の姿勢を正し此方を見て来た。

 互いに無言のまま見つめ合う。

 こんなものを見せられて全く興味が無いなんて言葉は嘘でも言えない。

 それを言ってしまえば最期で……まぁそうだな。


「興味はあります。正直、友人なら絶対に欲しがりますよ……でも」

《……でも?》


 ランさんは僅かに手に持ったグレネードランチャーを動かす。

 俺はその動きを見ながら――笑みを浮かべる。


「約束しましたから。裏切らないって……だから、全部諦めますよ」

《諦める、ねぇ……ふふ、やっぱり、アンタに依頼して正解だった……私の見込んだ通りの男だったよ。根黒っち♡》


 彼女は笑う。

 信用してくれたのかは分からない。

 が、彼女は俺に背を向けて作業を続けた。

 俺はひとまず胸を撫でおろす。

 そうして、肝心のデータキーは何処かと探して見た。


 ……稼働しているサーバーばかりだな。本当にあるのかな?


 探して見たが、やはり見当たらない。

 俺は諦めて、ランさんに心当たりはないかと聞く。


《ん? 無いのぉ? おっかしいなぁ……あ、そういやぁそっちにさ! 部屋あるっぽいよ! ほら、そこ! サーチしたら分かるけど、うすぅい壁で仕切られてるよ! 壊して見たらぁ?》

「……また敵が出たりは?」

《はは、無い無い! 幾ら何でも、こんな場所でエネミーなんて出ないっしょ! 安心しなってぇ。あ、もしもデータキーあったら全部取っといてよ! ちょっと色々持ってき過ぎちゃってねぇ。インベントリがギリなのよ! おねがぁい!》

「えぇぇ、まぁ、いいですけど……何を持ってきたんだ?」


 俺は少し怪しみながらも、ランさんが銃口を向けていた場所へ向かう。

 壁へと近寄れば違和感はなかったが。

 試しにサーチしてみれば、システムが壁の奥に空洞がある事を伝えて来た。

 嘘では無かった。俺はそう認識し、壁の前に立って――蹴りつける。


「お、脆い」


 たった一回の蹴り。

 それだけで壁は崩壊し、新たな部屋が出現した。

 中へと入れば、少し広いだけで何も……いや、あるな。


 部屋の奥。

 頭上でほのかな明かりが灯り、それは辛うじて見えていた。

 ボックスであり、自由探索領域内でも見かけるアイテム保管用のボックスだ。

 所謂、宝箱であり……これかな?


 俺は宝箱に近づく。

 そうして、一応はサーチをして罠は無いかをチェックする。


「……罠は無し、か……頼む。入っててくれよぉ」


 俺は心の中で祈る。

 そうして、軽くボックスを蹴れば短い機械音の後にボックスが展開されて――データキーが出現した。


「おぉ!! あった!! ありましたよぉランさん!」


 本物のデータキーだ。

 情報通り、10本ある。

 俺は部屋の外にいるランさんに声を掛ける……あれ?


 返事が無い。

 通信をチェックすれば繋がっている。

 が、感度が悪いようで……離れてる?


「え、何で? まだデータキーは……取り敢えず、さっさと回収しておくか」


 ランさんの裏切りも考えたが。

 此処で裏切っても彼女にはメリットが無い。

 データキーは全て俺の手の中であり。

 彼女としてはデータキーも手にしたい筈だ。

 

 そう思ったが……違和感がする。


 何故か、俺の心が警鐘を鳴らしていた。

 不自然であり、何かがおかしいと。

 しかし、このエリアを離れる事は出来ない。

 未踏破エリアであり、離れた場合、戻って来れる保証はない。

 目の前のデータキーを取らないのはリスキーであり……あぁもう!


「大丈夫! きっと! メイビー!」


 俺はデータキーに手を伸ばす。

 そうして、全てをインベントリに入れる選択肢を取り――“警報が鳴る”。


「――へ?」


 謎の警報は施設からのものではない。

 ゲームのBGMのようなものであり、インベントリに入れた筈のデータキーが――3本出て来た。


 それらから黒くドロドロとした泥のようなものが溢れ出す。

 何かが形を成そうとしていて――俺はすぐに逃げ出す。


「何あれ何あれ何あれぇぇ!!?」


 焦っていた。

 データーキーから飛び出した謎の泥。

 思い出せば一つだけ該当する――偽物だ。

 

『多分だけど、沢山集めてるような奴にはハズレが出やすいってどっかの誰かが言ってたなぁ』

『もしも戦闘になって死んだら持ってるもの中で何かを奪われるらしいよ!』

『確か、データキーが優先的に奪われるんだっけ? 無かったら、価値あるものだったかなぁ?』


 偽物、出現する排除不可能な強力な傭兵の出現。

 情報通りであり、俺は運の悪い事に――3体も呼び出してしまった。


 こんな事があるのか。

 そもそも、3体も出るなんてあって良い事なのか。

 俺は必死に考えながらも、上へと向かって飛んでいく。

 勝てるのか。いや、戦ってはいけない。

 攻略不可能な敵であり、耐える事が重要で――空間を震わすほどの咆哮が響く。


「ひぃぃ! 機械生命体か!? 傭兵だろ!?」


 俺は恐怖する。

 瞬間、俺の視界には何かが表示されて――ふ、ふへ。



 

【緊急ミッション――5分間、生き延びろ】

「ふ、ふざけんじゃねぇよ……兎に角、止まらず逃げ続ければ!」



 

 下から何かが迫って来る気配。

 それを感じながらも、元来た入口まで戻って来た。

 俺は滑るようにその中を通り、そのまま大型のメックと戦った部屋に入る。

 すると、隠しエリアの入口の前でランさんの機体がこっちを見て立って――怖気が走る。


 俺は思考するよりも前に限界ギリギリまで上昇する。

 瞬間、部屋の至るところに転がっていた小型の爆弾が起爆し――紅蓮の炎が広がる。


「あつ! こ、これ……へぁ!?」


 入って来た場所を見る。

 すると、謎のバリアのようなものが展開されていた。


《機密情報庫前にて想定外の損害を検知――エリア内を一時的に封鎖します》

「嘘だァァァ!!!」


 俺は叫ぶ。

 その間にも謎の気配が強くなっていく。

 俺は入口の前に立ち、必死にランさんに声を掛ける。


「ランさん! 何とかしてください!! このままじゃ俺!! ランさん!! ねぇ、何で見てるだけなんですか!? このままじゃ俺!! 本当にやばいから!! ねぇ!! ねぇってばぁ!!!」

《……》


 彼女は何も言わない。

 ただ立ったままで、俺を見つめるだけだ。

 すると、背後で何かが降り立つ音が聞こえて――真横に連続ブーストをする。


 瞬間、見えない何かがバリアへと当たり凄まじい衝撃音を響かせた。

 俺はだらだらと汗を掻きながら、視線を謎の力の発生源へと向けて――凍り付く。


《《《――――》》》

「あ、あぁ、ぁぁ」


 黒衣の巨人。

 謎の黒い靄に覆われていて、機体に巻かれた包帯のようなものがはためいていた。

 ボロボロの機体であり、頭部の装甲の一部が砕けて内部のコードが露出していた。

 双眼センサーの一部が丸見えであり、赤く輝くそれはまるで不死のそれだ。

 武装と呼べるものは何も装備していない。

 鋭利な銀色の爪の手と蛇腹のように伸びる尻尾がある。

 胸部の装甲は砕けていて、ドクドクと鼓動の音が聞こえてくる心臓のようなコアが見えていた。


 

 ハッキリと分かる――勝てない、と。


 

 完全なる攻略不能なエネミー。

 あからさまなほどに運営側が危機を知らせていた。

 戦ってもいい。しかし、無駄であると物語るようなBGMだ。

 俺は秒で相手の力を理解し――奴の口が開く。


「――うき!?」


 俺は瞬時に、全力で横へと飛ぶ。

 瞬間、またしても謎の力が飛んできた。

 それらは近くに転がってきていた鉄球へと当たり――木っ端みじんに吹き飛ばす。


 俺はそれを見た瞬間に――あ、死んだわ。


 危険すぎる。やべぇ存在だ。

 滝のような汗が流れて心臓が早鐘をうつ。

 目ん玉をかっぴらいて全神経を集中し――場違いな声が響く。



《根黒っち――本当にありがとう♡》

「は、ぁ?」


 俺は間抜けな声を出す。

 その間も不気味な敵たちは不気味な声を発しながら迫って来る。

 音速の攻撃であり、黒い風となって一撃必殺の攻撃が来る。


 焦り、戸惑い。そして――恐怖。


 ランさんは、まるで恋人へと語りかけるような甘い声で囁いてきた。


《アンタのお陰でぇ、私はぁ目的を――2つ達成できそうだよぉ♡》

「ら、ランさん……アンタは!? アンタ、何言って!!」

《まだ、分からないかなぁ? 私の目的はお宝を手に入れる事と――アンタを嵌める事だったんだよぉ♡》


 ランさんは笑う。

 俺はそれを聞いた瞬間に契約の内容を思い出す。

 これは明確な裏切り行為だ。

 が、彼女のそれは――契約の範囲外だ。


 彼女との契約はボスエネミーを討伐するまで。

 それ以降は契約書の効力の範囲外だ。

 コウちゃんはその違和感を指摘していた。

 が、俺たちは裏切りの可能性は低いと認識していた。

 それはそうだ。ボスエネミーを倒した後に、敵が控えているのであれば疑う。

 しかし、ボスエネミーの後に別の敵が現れる可能性は低い。


 ゲームのお決まり事だ。

 高難易度のミッションであれば連戦は当たり前。

 が、隠しエリアの規模を考えれば連戦はあり得ない。

 ましてや、そのボス自体が強い敵であれば尚の事。

 そもそも、データキーを手に入れる事も目的であれば。

 他の敵がいるなんて情報を隠す事はあり得ない。


 そう考えるのであれば……これは……“偶然の結果”とでもいうのか?


 あり得ない、あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない――思考が乱れる。


《お宝さえ手に入ればそれでも良かったよ? だからね、アンタを嵌める計画自体はほとんど賭けだったんだぁ。お宝を手に入れる前に、クライアントが差し向けた傭兵たちが殺してしまう可能性も考えたけどぉ……ま、それは絶対にあり得ないって思ってたけどねぇ。だからこそ、ボスを良い感じに疲弊させた後に殺されてくれる事がベスト? うーん、まぁそれもどうだったかなぁ》


彼女は楽し気に語る。

まるで、自分が見た映画の内容を友人にネタバレするように。

ひどく嬉しく、ひどく喜び満ちていた。

俺はそれに激しく戸惑っていた。


「アンタは、何が――!?」


 殺気を感じた。

 瞬間、俺は連続ブーストでその場から逃れる。

 瞬間、音もなく接近してきていた敵が腕を振り終えた後だった。

 一瞬の突風。そして、響き渡る高音の金属音。

 見れば頑丈な筈の壁には深々と爪痕が刻まれていた。


 まだ来る――まだまだ来るぞ。


 デフォルトで残像が見えるほどの速さで奴らは宙を翔ける。

 視線は常に動き、眼球と脳みそが痛みを走らせた。

 俺は鼻血が出るほどに集中し奴らの攻撃を回避する。


 回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避――声が響く。


《でもね、アンタは最後の最後で――大当たりを引いたんだよ!》

「……っ!」

《一つでも出てくれば十分。でもでもぉ、アンタは私の期待を超えて――さ、3体も、ぷ、ぷく! だ、出しちゃったねぇ! ふ、ふは――ぎゃははははは!!》


 彼女は笑う。

 腹を抱えてゲラゲラと笑っていた。

 俺は何も言えない。

 何も出来ない。

 集中を乱せばその瞬間に死ぬ。


 が、心にはふつふとと怒りがこみあげて来る。

 騙された、踊らされた。

 傭兵として生きているのであれば裏切りなんて日常茶飯事だ。

 こんな事は良くある事で、怒るほどの事じゃない――ざけんじゃねぇよ。


 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな――理不尽だ。

 

 騙される事に慣れる事なんて無い。

 こんな事くらいだと笑い飛ばせるほど広い心は無い。

 どんなに清らかな心のプレイヤーであろうとも。

 自らが騙されて、自らが死に追いやられようとすれば――怒りが湧く。


「……ッ!!」


 奥歯を噛み締める。

 俺の心は未だに、彼女を信じようとしていた。

 短い時間であろうとも、共に戦っていた。

 俺自身も、彼女とのやりとりは好ましく思っていた。


 信じていたのか、好いていたのか。

 今ではそれを確かめる事は出来そうにない。

 ただ目頭が熱くなり、涙が出そうになっていた。


 その間も、敵の理不尽な攻撃は続く。

 避けながら、混乱しながら、それでみ俺の体は最適な動きをし続ける。

 不可視であり、一撃必殺で――彼女の機体が動く。


 ちらりと見れば、彼女の機体は背中を向けていて――振り返り手をひらひらと振った。 



《本当に、アンタに頼んで良かったよ。優しくて、純粋で、律儀で――騙されやすい童貞お馬鹿さんでぇ♡ ぷぷぷぅ♡》



彼女の明るい声。

ウィンクでもしたような言い方。

全てにおいて罪悪感の欠片も無い、その全てに――ぶちりと切れる。



「このぉぉぉぉぉ裏切りものがぁぁぁぁあああああ!!!!」



 俺は叫ぶ。

 喉がはち切れんばかりに。

 赤い涙を流さんばかりに目を見開いて。

 瞬間、四方八方から敵の殺気を感じ――ゴーストジャンプ。


 一瞬の差で、天井を大きく抉るほどの攻撃が飛んだ。

 俺は壁を蹴りつけて地上へと降下し滑る。

 歯をガチガチと鳴らし、涙を流して――



 

《じゃあねぇ、根黒っち。もしも、生きて出られたらぁ――フレンドになろうねぇ♡》

「くぅぅぅぅぅそぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 



 ブチブチと怒りで血管が切れていく。

 俺は真っ赤な涙を流しながら叫ぶ。

 そして、死ぬ気で生き残ってやると誓う。


 迫りくる不死の化け物たちは。

 目を真っ赤に輝かせながら――俺に久方ぶりの恐怖を感じさせた。

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