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1. 神との脚本談義

■神との脚本談義

現世での退屈な人生を終えたゼノンは、目の前の胡散臭い神に対し、不満げに腕を組んでいた。

「ふむ、お前には特別な恩恵を与えよう。望むがままのチートで、異世界を悠々自適に――」

「いや、ちょっと待ってくれ。

神様、アンタが用意したその『チート無双』のシナリオは、あまりにもつまらない」

神は意外そうに眉を上げる。

「ほう? なぜだ?」

「だってそうでしょう? どうせ舐めプしても勝つんでしょう?

どれだけピンチになっても、結局はチートパワーで一発逆転。

それじゃ、最初から結末が決まっている劇と変わらない。盛り上がりに欠けるんですよ。

やっぱり英雄ってのは、絶望的な状況で、血反吐を吐きながらも、

ほんの紙一重の差で勝利を掴むからこそ格好いい。そう思いませんか?」

ゼノンは目を輝かせながら、まるで映画プロデューサーのように熱弁する。

神は面白そうにクツクツと笑った。

「フム。では、お前のその『英雄の定義』とやらに沿ったチートを与えてやろう。

常に敵と拮抗し、常にギリギリで勝利を掴む……。

名付けて**『ブックメーカーのチート(呪い)』**。その脚本、お前自身が演じてみせるがいい」

「ああ、最高の脚本だ。感謝する、神様」

ゼノンは満足げにうなずいた。 目の前の神は、面白そうに笑っている。

「最高のチートだ! やはり英雄は、苦戦してこそ――」

ゼノンの言葉は途中で途切れた。 体が光に包まれ、次の瞬間、見慣れない森の中に立っていた。


「……ここが、異世界か」

ゼノンは興奮を抑えきれずに、目の前の景色に目を凝らす。


■英雄の誕生と、あまりに早い失墜

駆け出しの冒険者パーティが、本来その森にいるはずのない**上位竜ドラゴン**に襲われていた。

絶体絶命の瞬間、ふらりと現れたゼノンが割り込む。

「……いい脚本だ。まさに英雄の登場にふさわしい」

ゼノンの『ブックメーカー』が発動する。相手はドラゴン。

ゼノンのステータスは一気に跳ね上がり、ドラゴンと対等に渡り合う。

「見ろ! あの男、ドラゴンと正面から殴り合っているぞ!」

「なんて凄まじい剣技だ! 彼こそ本物の英雄だ!」

ゼノンは死闘の末、最後の一撃でドラゴンを退ける。

息を切らし、ボロボロになりながら笑うゼノンの姿に、パーティメンバーは感涙し、その場で彼をスカウトした。


パーティに加入したゼノンだったが、翌日のゴブリン退治で異変が起きる。

相手はザコ。ゼノンの『ブックメーカー』は相手に合わせて出力を最小限まで下げる。

「ゼノン! ゴブリンくらいさっさと片付けてくれ!」

「待て……! こいつ、意外とやるぞ……! ぐわああ!」

ゼノンはたった三体のゴブリンを相手に、ドラゴン戦と同じくらいボロボロになり、

一時間かけてようやく勝利した。

ゼノンは自分の腕を組み、真剣に悩んでいた。

(おかしい……。ドラゴン戦はあんなに体が動いたのに、ゴブリン相手だと途端に体が重くなる。

……そうか! あの神、**『強敵相手に接戦』**と言ったな。

つまり、ザコ相手にはチート(加護)が発動せず、

今の俺は『自力(素のステータス)』で戦わされているんだ!)

ゼノンは決意する。

(ドラゴン相手に善戦できたのは神のおかげ。だが、ゴブリンに苦戦するのは俺が未熟だからだ。

もっと修業して、自力を上げないと!)


しかし、パーティメンバーの視点は冷ややかだった。

「ゼノン、お前……昨日のドラゴン戦は何だったんだ?」

「あれだけ動けるくせに、ゴブリン相手に一時間も泥仕合して遊ぶなんて、手抜きが過ぎるぞ。」

ゼノンは必死に弁解する。

「違うんだ! ドラゴンは神が助けてくれたけど、ゴブリンは俺の実力なんだよ!」

俺はもっと強くならなきゃいけないんだ!」

「……謙遜を通り越して嫌味か?

死にかけた俺たちの前で、余裕ぶって遊ぶような奴はもういらない。消えろ」

ゼノン、パーティ追放。

本人は

「自力が足りないからクビになった」

と思い込み、さらなる修行(という名の非効率な努力)を求めて、一人「より強い敵」を探し始める。



■ ソロ活動開始と新天地への逃避

 パーティを追放されたゼノンは、自嘲気味に剣を眺めていた。

(……クソ。自力が足りないってのは辛いな。

ドラゴンは『神の演出チート』で倒せたが、ゴブリン一匹に一時間もかかるようじゃ、

この国で冒険者を続けるのは無理だ)

 彼は決意する。この国では

「不真面目な手抜き野郎」

のレッテルを貼られてしまった。

それなら、いっそ別の国へ移動して、ゼロから「修行」をやり直そう。

「そうだ。隣国で自力を鍛え直してやる」


■ 国境の殺気と豪華な馬車

 国境の緩衝地帯。そこには静まり返った森が広がっていたが、ゼノンの肌はチリチリとした熱を感じていた。

(……なんだ? この異常な『重圧感』は。茂みの奥に、とんでもない数の軍隊が潜伏してやがる)


ゼノンは茂みの中で冷や汗を流しながら、必死に脳内演算を行っていた。

(待てよ。あの『神との契約』を思い出せ。ドラゴン(強敵)にはチートが発動した。

だがゴブリン(ザコ)には発動しなかった……。

ということは、このシステムは『生物としての格』を基準にしているんじゃないか? 相手は人間だ。

人間が一人でドラゴンより強いなんてあり得ない。

つまり、人間相手に俺のチートが発動する可能性は極めて低い。

伏兵が100人いようと、俺にとっては『ザコが100人』だ。

そんな相手に飛び出せば、チートが発動しないまま袋叩きにされて終わる!)

ゼノンにとって、この状況は「勝算のないギャンブル」だった。

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