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その展開はご容赦ください  作者:
3章『畜生道にご留意ください』
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1話

「さぁー始めますよっ」


いつになく陽気なマミヤに困惑。


「今回は二元中継でお送りします」


「二元中継って何すか?」


「あれだ、画面二分割で同時に映すやつ」


「なるほどっす……え?なんで」


たしかに、二元中継の意味はわからない。


だが意味などないのだろう。


「一度に二つの世界を見ちゃおうぜ、と主様のご提案です」


ほらね。


主様とマミヤは下界の出来事を物語を楽しむ感覚で見ている。


傍観者的な視点だった俺たちとは違い、どこか自分事のように下界を見ている気がする。

泣いてたし。


「皆様にはこれから畜生の生きる道を見ていただきます」


「畜生?なんすかそれ」


「畜生道、ってやつ?」


「そうです!クスノキさん勉強家!」


テンションあげあげモードのマミヤは止まらない。


「まあ、下界の中でも下層のもの、といった理解でよろしいです。

その生き様を要所でリテイクするのが今回の案件となります。何度失敗してもかまいません」


「は? リテイク回数の制限ないんすか?」


「はい。下層なので」


ひどくない?


「冗談ですよ。アカシさん」


「真顔で冗談はやめてください」


めちゃめちゃテンション高い口調でマミヤはずっと真顔。もう怖いのなんのって。


「今までとは違い、具体化ポイントを使えば、誰にでも介入できたりしますよ。

多少現実にはありえないような生き物を生成することもできます。具体化ポイント最高ですね」


具体化ポイント乱用を俺たちに勧めるマミヤ。

生まれ変わらせる気ないのか。


「そんなことしたら下界大混乱ですからね……まあ、ルールがだいぶ甘くなったあたり、なんか裏があるんですよね?」


「アカシさんは疑り深いですね」


「突然ルール変えられて疑らないやついないでしょ」


「皆さんモニターに釘付けですが」


言われてモニターに振り返ると、クスノキ、クラタ、ユラの三人が食い入るようにモニターを見つめていた。


「お前らさ、話聞け……」


「いや、だってアカシさん!いままでと違うんすよ。画角が」


「画角?」


言われてモニターを見ると、二画面の右半分は真っ暗、左半分には地面に這いつくばっているように低い視点が映っている。


「対象者、ほふく前進でもしてるのか?」


「ですよねぇ。いままでこんな地べた這いずり回るようなカメラワークなかったっすよね?」


「あっ」


「なんだよクスノキ」


「下層だから這いつくばってるのかも」


「クスノキさん……」


さすが、と言わんばかりにクスノキを見つめるマミヤ。


ガサガサ、と草が擦れる音がする。


どこにいるんだこの対象者。


「あ、なんか喋ってるっす!」


また変人だったらどうしよう、という一抹の不安がよぎる。


【生まれ落ちたその時から、祝福などされなかった。搾取されるだけの命。踏みにじられる命。だが、我は諦めない。この命に煌めきを。弱者に救済を!】


「歴戦の戦士みたいなやつ出てきたぞ」


「勇者、とかっすかね?」


「なんだよ勇者って」


「世界を救う者っす。超強いっす」


「下層なんでしょ?そんな人いるかな?」


クスノキの辛い発言の最中、別の声が聞こえてくる。


【ジャクソンくん】


誰?誰と誰?


声の主に応えたのは勇者(仮)だった。


【なんですか、マイケル】


「マイケルもジャクソンも画面に映らないの気味悪いっすね」


「どこの国だよこれ」


「日本です。蔵田さんや真柴さんのいた時代と同じあたりです」


這いつくばっているジャクソンとその視界に映らないマイケル。


マイケルは、


【青春をやろう、ジャクソンくん】


と最悪の提案をしてきた。


「流行ってるんすか?」


「この時代のやつ深刻な青春不足なんだろ」


「青春不足ってなんすか?」


「聞くな。自分でも何言ってるかわからん」 


マイケルの提案を快く受けるジャクソン。


【いいですね。示しましょう、我らの存在を】


いちいち尊大な発言をするジャクソン。


【我には時間がないのです。うぬもそうでしょうマイケル】


「人のことうぬっていうタイプなんすねジャクソン」


だいぶゴツいガタイの人間じゃないかジャクソン。


そういえば、気持ち声色もシブい気がする。


気持ちシブめの声でジャクソンは語る。


【我らの命は儚い。

故に何を残すか。それが大事なのだ。

なあ、マイケルよ……マイケル?え?マイケル?】


マイケルからの返答はなかった。


【マイケル!返事をしろ!なあマイケル!】


急にどうした?


画面が酷くぶれて見えなくなる。


「モザイクみたいっすね」


とマミヤを疑うクラタだったが、マミヤは「今回はコンプライアンスの必要がないので」と否定する。


【……マイケル、うぬの命は無駄にしない】


「なんか知らないうちにマイケル死んだんすけど!」


「えらく物騒な世界だな。戦地とかなのか?」


画面に開けた世界が広がった。


太陽は高くのぼり、雨上がりなのか、草木には露がつき光っている。


【いかねば。マイケルの命を無駄にせぬため】


「あ、水溜まりっす!」


「水溜まりがどうした?」


「このカメラ全然本人映らないっすけど、水溜まりあったら反射して映るかもじゃないっすか」


対象者の眼前に水溜まりが光っている。


次の瞬間、画面がブレた。


視界が少し高くなる。


「跳ねたんすか?」


「いや、この高さは」


飛んでいる?飛行だ。

人間がそんなことできるはずがない。


【仲間と共に青春を示す旅にいざ行かん】


水溜まりは対象者の姿をありありと映し出した。


細身の体躯に尖った顎、手に鋭い武器を携えた……、


「カマキリじゃねぇか」


「カマキリっすね」


珍しい青色の身体以外は、紛うことなき昆虫カマキリだった。


「いやぁ、虫ぃいいい。助けて!ジャクソン」


虫嫌いらしいユラがややこしい発言をしている。


市松人形のジャクソンは我関せずといった感じで転がっている。


カマキリジャクソンの視界が浮遊していく。


【まずは仲間たちの下へ……くっ、マイケル】


一瞬振り返った草木の中に、マイケルの死骸が転がっている。


近くで獲物を狙う目をした猫が睨みを利かせていた。

踏まれたなマイケル。


「見てください!目頭を押さえて苦悩していますジャクソンさん」


マミヤがつられて泣きそうになっているが、そもそもジャクソンは泣いてないし、カマキリに目頭とかあるのかも不明だ。


「ん?何の音っすか?」


「車か?」


パーバン、パパパパン!!


と甲高いエンジンが耳をつんざく。


そして、ジャクソンの眼前に一瞬現れた黒っぽい車。


ジャクソンは轢かれた。


轢かれる寸前、


【えっ、あっ、嫌っ】


と勇者とは思えない情けなさを披露したジャクソン。


「我々は何を見せられているんですか、マミヤさん」


ジャクソンさん……と目頭を押さえるマミヤ。

どこに泣ける要素が?


「夢半ばで敗れる儚き畜生道をご覧いただいています」


「マジの畜生出てくると思わないじゃないですか」


「私言いましたよ?下層の畜生だと」


まあ、そうは言いましても、ねぇ。


「ジャクソンさんは上手く行った世界線では人間たちに存在をしめす行動にでるお方でした。

ほら、蔵田さんのイベントに仲間を引き連れ姿を現したジャクソンさん、皆さんも見たでしょう?」


「あの虫の大群こいつが主導してたんですか?」


「はい。

今回は道半ばで倒れてしまいましたが、上手くいけば『スイミーやって人間驚かせよう』計画が成功するはずでした」


「やっぱりスイミーだったじゃないっすか!ね!アカシさん!ね!」


うるせぇなこいつ。


「なんであれが青春やろう、に繋がるんです?」


「マイケルさんはどの世界線でも残酷な死を迎えるのですが」


サラっと悲しいこと言わないでほしい。


「マイケルさんは、死が宿命づけられたオスカマキリの自分たちが輝けるステージを探していたのです。

一瞬だけでも周囲に注目され、その煌めきを思い出にメスに食われよう、と」


キテレツな人間たちが青春ステージをやってる横で、キテレツな虫がそんなこと考えてるとか思わないじゃない。


「カマキリって喋れるんすね」


「喋れるわけないだろ。ずっとモノローグ再生だったんだろ……ってモノローグもあるわけないか」


「ここから見た全ての命は平等なのです。

下界で伝わる言語体系以外もこのモニターは映し出すのです」


すっかり感動が冷めたマミヤがモニターを指差す。情緒どうなってんだ。


「ご覧ください。もう一つのモニターに動きが!」


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