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見知らぬ少女がローブの中から

「魔法の馬車、楽しみだなぁ~!」


 レナが浮かれた様子でスキップするように歩いていると、遠くから誰かがこちらに向かって走ってくるのが見えた。


「……ん? なんか走ってこない?」


 真央が目を凝らすと、それはローブをかぶった小柄な人影だった。近づくにつれ、少女だと分かる。


 そして、その後ろから二人の男が追いかけてきていた。


「助けて!」


 ローブの少女は真央の後ろに隠れ、息を切らしながら懇願する。


「えっ?」


 突然のことに驚いたが、真央はすぐにフィオナを呼び出した。


「フィオナ、お願い!」


「任せて!」


 フィオナの魔法で道端の草が一気に伸び、男たちの手足を絡め取る。


「うわっ!? なんだこれは!」


「くそっ、動けねぇ!」


レナはすぐに真央の腕を引っ張った。


「今のうちに逃げるよ!」


「う、うん!」


「え、久しぶりに呼んでもらえたと思ったら私の活躍これだけ!?」


 フィオナは物足りないと言わんばかりの表情をしながら姿を消す。


 真央とローブの少女はレナと共に路地へと駆け込み、そのまま街外れまで逃げた。



「はぁ……はぁ……助かりましたわ」


 息を整えながら、少女はローブを脱いだ。

現れたのは、レナより少し年下に見える腰まで伸びた美しい黒髪の少女だった。


「追われていて困ってたの。本当にありがとうございます。」


「大丈夫だった?」


 真央が心配そうに少女を見つめると、その瞬間——


 リヴィアからお守りとして受け取っていたペンダントが光った。


「えっ?」


 リヴィアの声がペンダントから響いた。


『あなた、こんなところで何してるの』


「え!? うそ!? これ、しゃべるの!?」


 真央が驚いてペンダントを見つめる中、少女はペンダントに向かって叫んだ。


「この声は……リヴィア先生!?」


「えっ、リヴィアさんのこと知ってるの!?てかリヴィアさんって先生だったの!?」


レナも驚いて少女とペンダントを交互に見る。


『そうよ、中央学園で1年間だけ臨時で先生やってたわ。』


「ちょっと待って、どういうこと?」


 真央が混乱する中、リヴィアの声が説明を続けた。


『そのペンダントは私と会話できる魔法のペンダントよ。私からはそっちの様子も見えちゃうわ』


『そしてその子はアルディアスの王女よ。』


「「ええっ!?」」


 真央とレナが同時に声を上げる。


「魔法の馬車にプリンセス…興奮してきたな…」

レナは楽しくなってきていた。


「わたくしの名前はエリシア・アルディアスですわ」


 少女は気品ある動きでスカートの裾をつまみ、優雅に一礼した。


『また逃げ出したっていう噂は聞いてたけど、本当だったのね。』


「だって……リヴィア先生のいない学園なんて、つまらないんですもの……なので…先生に学園に戻ってもらえるようお願いしに来ましたの…」


 エリシアはしゅんとしながら呟く。


『そう言われても私はもう先生はやらないわよ。先生って結構疲れるんだから』


「そんな……!」


『まあ、せっかくだから真央、レナ、中央学園に行くついでにエリシアを連れて行ってちょうだい。』


「えええっ!? そんな適当に!?」


『あと、さっき真央が魔法で捕まえたのは街の警備兵だから、後でちゃんとごめんなさいしなさいね。』


「……え?」


 真央の顔が一瞬で青ざめる。


「いやいや、ちょっと待って、あの二人悪い人じゃなかったの!?」


「わたくしは追われてるとは言いましたが『悪い人に』とは言ってませんわ」

エリシアが屁理屈を言う。


『よろしくね♪』


『あと、エリシアも早く戻らないと退学させられて王様と王妃様にめちゃくちゃ怒られるわよ〜』


 そう言うと、ペンダントの光がふっと消え、リヴィアの声も聞こえなくなった。


「うぅ…退学はさすがにまずいですわ…」

エリシアが呟く。


 真央は開いた口が塞がらず、その場で固まっていた。



「やばい、やばい、やばい!!」


 我に返った真央は大慌てで警備兵の元へ戻った。草に絡め取られた二人の兵士は、どう見ても普通の警備兵に見える。

 真央は申し訳なさそうに頭を下げながら、何とか言い訳を考えた。


「あのっ、その……突然走ってくる人がいたので、てっきり追いかけてるお二人が悪い人だと勘違いしちゃって……! で、でも、暴力は振るってません! ちょっと草が絡まっちゃっただけで!」


フィオナの力を使い、伸びた草を消す。ようやく自由になった警備兵たちは怪訝そうに真央を見つめた。


「お前……何者だ?」


「えっと、その……誤解です! 逃げてた子が助けを求めてきたので、つい……」


平謝りする真央を見て、警備兵たちはため息をつきながらも納得してくれた。


「……まぁ、それはいいがさっきの怪しいローブのやつはどこに行った?」


「街の外へ逃げていきました!」


「それならとりあえず良しとするか……しかし、今度からはもう少し冷静に判断するんだな」


真央は深々と頭を下げた。


「はい! もう二度と勝手に拘束しません!」


(謝るところそこじゃなくね…?)

レナは疑問に思ったが、許してもらえたなら良いかと気にしないことにした。


真央は足早にその場を離れた。



「ふぅ……なんとかなった……」


「ドジっ子属性発動してたね」


「うるさい」


 真央とレナは、エリシアを連れて宿屋まで戻った。受付でエリシアの部屋を取ろうとしたが——


「申し訳ありません、本日はもう満室でして……」


「え……」


 結局、エリシアも真央とレナの部屋に泊まることになった。

レナがニヤリと笑って真央をからかうように言う。


「2人の愛の巣に……!」


「変な言い方しないで!!」


 エリシアは首を傾げながら尋ねた。


「お二人は……そういう関係なのですか?」


「!!??」


レナが何か言おうと口を開いたが、真央が顔を真っ赤にしながら慌てて遮る。


「気にしないでくださいっ!!」



部屋に入ると、3人は改めて自己紹介をした。


「私は真央、えっと……ちょっとした事情でレナと一緒に中央学園に行こうとしています」


「レナだよ! 真央の隣の部屋に住んでる!」


「エリシア・アルディアスですわ。助けてくださって、本当にありがとうございます。あそこで捕まっていたら学園へ強制送還でしたわ」


「それはそれで良かったんじゃ…」

レナが呟く。


「そんなことないですわ!貴方がたのおかけでリヴィア先生とお話出来ましたし!」


 すると、ふわりとした風が舞い、フィオナが現れる。


「私も自己紹介しとくね! 私はフィオナ、真央の精霊!」


「えっ!? 精霊!?」


 エリシアは目を丸くする。


「真央様が先ほど使った魔法は精霊術だったのですね! すごいですわ!」


「え? そ、そうなんですか?」


「ええ、今の時代は詠唱魔法が主流ですから、精霊術を使える人はほとんどいませんわ。とても貴重な才能です!」


「へぇ~、真央すごいじゃん!」


「そ、そうかな……」


 その様子を見て、レナが少し不満そうな顔をする。


(……私も褒められたい……)


 そう思いながら勇者の剣をこれ見よがしに磨き始めるがエリシアは特に気づかず、別の話をし始めた。


「……」


(えっ、気づいてくれないの!?)


 レナはちょっといじける。

どうも勇者の剣の見た目はこの世界ではあまり知られていないようである。



「そろそろお風呂に入って寝ようか!」


 レナがそう言いながら、真央の手を取る。


「ちょっ!? どこ行くの!?」


「お風呂だよ! さ、行こ!」


「今日はダメ!!」


「えー? 昨日、約束したじゃん!」


 真央は顔を赤らめながら、レナの手を振りほどく。


「ま、また二人のときに……!」


 エリシアがまた首をかしげる。


「やはりお二人はそういう関係なのですか?」


「気にしないでくださいっっ!!」


 真央は必死に誤魔化すのだった。


 各自お風呂を済ませ、部屋に戻ってくると——問題が発生した。


「……ねぇ、ベッドひとつしかなくない?」


 レナがベッドを指差しながら言う。


「……あ」


 真央もエリシアも、その事実に今さら気づく。

エリシアは申し訳なさそうに微笑んだ。


「では、私は床で寝ますわ」


「え!? いやいや、さすがに王女様を床に寝させて私たちだけベッドで寝るのは……!」


「しかし、私だけベッドというのも申し訳ないですし……」


「うーん……どうしよう……」


 3人で悩んだ結果——


「……全員、床に寝る……か……」


 布団もないため、毛布を敷いてなんとか寝床を作る。

すると、レナがぱっと顔を輝かせた。


「これはこれで修学旅行みたいで楽しいじゃん! 枕投げしよ!」


「ええっ!?」


「枕を投げていいんですか?それは楽しそうですわね!」


「えっ、ちょっと待って、寝るんじゃ——」


 レナが即座に枕を真央に投げつける。


「わっ!」


「お見事ですわ!」


「もうっ……! なら、こっちも!」


 こうして、まさかの異世界枕投げ大会が始まるのだった——。



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