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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖女で魔女な⁇

 

 この世界の設定として、悪魔の近くにいると、気に当てられて徐々にハイテンションになるという意味のわからない設定があります。

 それを踏まえて主人公の豹変ぶりと、聖女で魔女な彼女(分類的には悪魔の一種)をみてやってください。


 私はどこで道を踏み外したのでしょうか。

 思えば私はなんでここにいるんでしたっけ。

 誰か早く回答をください。早急に。私が血を一滴残らず搾り取られて、私御用達の露天で売っているような干からびた保存用の塩漬け肉のようにはなりたくないのです。

 私だってまだ生きたいですよ。

 まだ20代前半(笑)の裏若き乙女ですよ。

 目の前にはなんかもうそれはそれはやたらと血気盛んな吸血鬼様方。

 どうぞ私の血は美味しくないのでさっさとお帰りくださいませ。

 そう祈っても無駄でしょう。


 あれですよ?魔族内カーストの頂点に居座られていらっしゃる高貴な身分の吸血鬼ですよ?

 魔王とかそういうのは置いといて。


 いや、この際白馬に乗った王子様とかじゃなくてもいいのでとりあえず助けてください。

 まじで。

 誰でもいいので。

 なんならうちの所有するなら土地でもいくらでもあげるので。

 あれですよ?年中作物が取れる王都特別仕様のハイポーション入りのふわふわしっとりな土が沢山あるうちの畑とかありますよ?

 助けてくれたなら全部あげますから。



 そんなことを約1秒で愚考するも、こんな辺鄙なお屋敷。白馬の王子様も、偶然通りかかった冒険者も、誰も彼もいません。こんな丑三つ時を過ぎた真夜中に。興味本位できた私とここを根城にしている吸血鬼さんたち以外は。


 こういう時巷で有名な創作小説ではどうしてましたっけ。

 主人公が危機に陥った時助けてくれるのは誰でしたっけ。

 悪魔召喚とかでしたっけ。

 天使召喚でしたっけ。

 異世界人召喚でしたっけ。

 土壇場で主人公の能力が覚醒するんでしたっけ。


 残念。私どの魔法も使えません。覚醒する予定の能力も保有してませんし。

 

 ついに目の前まで吸血鬼が来た時、生に縋りたいという生物の本能で少し口走ってしまったのです。

 「ーーー」

 と。


「ごきげんよう!!私「レスタ」と申します聖女で魔女でございまーす!本来吸血鬼(こいつら)の敵に回るのは普通にダメなのだけれど、貴女が人間の王都の限定販売、ハイポーション入りふわふわしっとりな土のある土地をあげると聞いてしまった以上食糧不足の魔王城の王サマがそわそわして、わそわそして…。っと今の最重要機密事項だったかしら?失敬失敬。お忘れあそばせ!!」


 どこからともなく強い魔力反応をダダ漏れで現れた聖女で魔女?のすげーきれーなおねーさんがそこにいらっしゃいました。私、今世紀一番の驚き。魔女召喚できたんかい。


 ちょっと待って脳みその処理が追いつかない。ただでさえ美女が急に現れたってのに、魔王…⁇魔王!!??なにそれ!! この美女魔王直属の方ってコト…!?


 それはそうと、この人まじで美人すぎる。

 めちゃくちゃにクセのある綺麗な絹のような金髪に、ドワーフ王国でしか取れないという高純度の魔精核を切り取って埋め込んだような大きな青緑の瞳。すらっとした鼻筋に飾り気のない唇が美しい。同姓である私が危うく惚れかけた。危ない危ない。私にそっちのケはない。


 衣服は漆黒の生地にと金色の刺繍が施されているシンプルなワンピースに、あまり目立たない黒いコルセット。

 目立たないおかげで腰の細さがとても強調されていてとても美しい。

 いーなー!そのほっそいウエスト!!


 手に持っているのはなんだろうか。なんかすごい禍々し魔力もするし、すごい清々しい魔力を感じる。

 杖…かな…?細長い棒には細かい彫刻が施されている。

 王宮魔術師でもこんないい装飾じゃない!全魔法使いの憧れ!!



 装飾は一旦置いといて、問題はその先の魔聖核。

 本来人間が持ってはいけない代物。触れたら最後三日三晩熱にうなされて最後は死神に魔界に連れていかれる夢を見るらしい。

 生きてるのが恐ろしくなるぐらい恐ろしい夢を見るそうな。


 そんな魔聖核を覆うように輪っかがかぶさっている。

 例えるならこの丸い星の模型の周りについている輪っかのようなものが2つ。

 禍々しい魔力反応と、清々しい魔力反応どちらも帯びている。

 これかー!原因不明の気味悪い魔力!!そばにいるとなんか言っちゃなんだが気分が悪いな…。


 わーお…。美女がこっちをめっちゃみてくる…。返事、返事。


「えっ…あ…えっ…。きゅ、吸血鬼達から私を助けてくれるんですか…⁇」


 あー!!!か細い!!とってもか細い返事!!!しかも小動物感が否めない!!!

 ザ・助けを求める弱小生物って感じ!!!


「えぇ。貴女の家にある土を魔王軍にくれたらね」

「あっ。どうぞどうぞ!! 実家が困窮しない範囲であれば本当に!!!」

「じゃぁもらっていくわよ!」

「はい!!」


 なんで私たちがこんなに会話して、思考を巡らせてる間に吸血鬼たちが襲ってこないのか。

 答えは目の前のレスタさんにあるみたいで、レスタさんがどこからともなく現れたあたりから吸血鬼たちは怯えて?こちらに近づこうとしない。

 やっぱり気味の悪い魔力のおかげかなぁ…。


「ところで、貴方達。今からうちの食糧事情をどうにかしてくれる子に対して危害を加えようと思ってるんですの…? 例え、カースト上位の魔物でも私譲歩しなくってよ!!! 貴方達、墓石の準備はできてるのかしらァーッ!!!!」


 あぁ…。迫力が…。迫力が。

 気味の悪い魔力ダダ漏れで、世にも奇妙なまでの美女が闘争精神丸出しできたら、どこぞのプライド激盛り吸血鬼さんも失禁するぐらいはするでしょ…。

 もうこっちが泣きそう。


「あッ…」


 吸血鬼の頭?的な魔物は、一瞬の隙に魔法が脳天ヒットしてこの世から去っちゃった。

 

「リーダーッ!?」

 

 他の吸血鬼達は慌てふためいて右往左往。

 こう。なんていうんだろ。一方的に蹂躙されている魔物を安全席から眺めるというのは、なんともまぁ、優越感がすごい。

 だけれど、側から見れば私は地べたに座り込んでぽけーっと口を半開きにしている小娘に過ぎない。


 矢継ぎ早に吸血鬼達がこの世を去っていく。

 気づいたらこのお屋敷には私と、レスタさん。あと小動物以外の気配が消え去った。


「それでは、約束通り、貴女の家の土を幾らか貰いますわ!」

「どっ、どうぞどうぞ! なんなら余ってるハイポーションもつけますんで!! 本当に助けてくださり、ありがとうございました!!!」


 溢れ出る小物感。

 まぁ。生き延びたのでいいのである。

 私の体はどこも干からびてはいないし、かすり傷ひとつもないのだから。


「まぁ素敵!貴女素敵ですわ!! 是非ともうちに欲しいですわ!!!私の屋敷、貴女みたいな人が本当にいませんの!!!」

 

 えっ。あっ。どーやって反応すればいいんだ!!!!

 助けて!! 助けて!!! 私人間!!!

 人間!!魔族!!味方!!!断罪!!!!胴と首永遠にバイバイ!!!!!

 でもこの人断れない!!!!命の恩人!!強い!!!怖い!!!!!


「えっ。あっ。あっ」


 返事に困って変な返事とも取れる、自分自身でもよくわからない返事。


「あぁ! 確か人間界では魔族に味方すると、首が飛ぶのでしたわ!懐かしいですわ!!」


 そうやって私の事情を完璧に理解したレスタさんは一呼吸置いてから


「…じゃぁ、無理にとは言いませんの。いつか、人間なんて皆死んでしまえというぐらい人間に失望したら、私を呼びなさいな。 その時はうちで雇ってあげますわ。大丈夫。ちょっと騒がしいけれど、貴女ならなんやかんや馴染めるはずよ」


と、続けてくれた。


 人生の希望!!まじ女神!!!聖女様!!!!あっ!この人聖女(自称)だった!!!

 


「はい!!その時が来たら是非ともお願いします!!!」

「えぇ。任せなさいな!」


 快い返事を返してくれたレスタさんの凱旋は、私の影から。

 いいな…。影移動。私も覚えたいんだよなぁ…。



 屋敷から人の気配がなくなって、しばらくの間呆けてからようやく気づいた。

 お天道様が!うっすらと空が色気付いてきた!!


 とりあえず、家に帰って色々事情を説明して土とハイポーションを用意しなくちゃ。

 そしてベッドで心おぎなく休むんだ!!

 


 読んでいただきありがとうございました!!!

 私もハイテンションです!!!やっふぅ!!!

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