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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第99話 水連の要求


「ふむ、水の王配候補者はこの5人か。美雨が氷室と出かけているうちに他の奴らに探りを入れてみるか」



 光主の手にある紙には美雨が外出した後に野乃から聞いた5人の水の王配候補者の名前が書かれている。

 水の王配候補者が誰かということは水族の方から光主に説明はない。


 それは当然のことで水の王配選びをする上で誰が美雨の水の王配になってもそれに光主が口を出せる立場ではないからだ。

 直接関係のない人物に王配候補者の情報を説明するほど族長の海羽も暇ではないだろう。


 だが光主にとっては他人事ではない。

 自分の全身全霊をかけて愛する女が他に選ぶ相手が誰かというのは重要なことだ。

 少なくとも光主は自分と同等の力を持った人物でなければ美雨の王配に迎え入れるつもりはない。


 氷室と美雨が二人で外出するのをおとなしく見送ったのは氷室という人物が光主の中に宿る雷神の気配に気付くほどの強い霊力の持ち主だったからだ。

 少なくとも美雨を護ることはできるだろうと判断したから美雨を託しただけ。


 外出時に少しだけ氷室を煽ったのは氷室に自分への対抗心を芽生えさせて美雨の身を護らせる気を起こさせるためだ。

 案の定、氷室は光主への対抗心を燃やし美雨と共に出かけて行った。


 あの様子ならきっと何か起こっても氷室は全力で美雨を護るに違いない。

 美雨を護れなかったら氷室は光主に負けたことを意味するのだから。


 自尊心の高そうな氷室だと思ったから光主はそういう手段を用いた。

 光主なりに氷室に譲歩してやったのだ。


 しかし今現在の力でいえば雷神の力を使える光主の方が氷室より強いのは明白だ。

 あくまで氷室であれば自分と同じ力を持てるのではないかという期待ができるだけの話。


 それに他の水の王配候補者の中に氷室を越える霊力の持ち主がいるかもしれない。

 誰が美雨の水の王配に相応しいかを光主も見極めるつもりだ。


 そのために光主は野乃に協力を仰いだ。

 野乃は優秀な侍女のため美雨が話したことを他に漏らすようなことはしない。

 だが光主が美雨の光の王配に決定しているので野乃も協力してくれる気になったようだ。


 王配が女王を裏切ることはない。

 野乃はそう考えているらしい。

 そのおかげで光主は水の王配候補者の名前と情報を手に入れることに成功した。



「さて、どうやって氷室以外のあとの4人に偶然会うかだが……とりあえず挨拶をしに来たって言えばいいかな」



 美雨の光の王配として挨拶をするという名目なら相手にも不審に思われないだろう。

 そう考えて光主は部屋を出て最初に族長の長男だという海人の部屋に向かった。


 光主が廊下を歩いていると前から若い水族の男が歩いて来て光主と目が合う。

 髪質が硬いのかその男の頭はツンッと尖っているような髪型だ。



「なあ、あんたは美雨様の光の王配だよな?」



 挨拶の言葉もなくいきなり光主の正体を尋ねてきた男の特徴を見て光主は水の王配候補者のひとりの「水連」だろうと推測した。



「ああ、そうだ。美雨の光の王配の光主だ。水族では初対面の人間にはまず挨拶をしなさいとは習わないのか?」



 皮肉を込めて返事をするとその男はムッとした表情になる。



「別に挨拶なんてそんな重要なもんじゃないだろ。だけど自己紹介はしておく。俺は水の族長の三男で水の王配候補者のひとりの水連だ」



 光主の推測通りに男は自分を水連と名乗った。



(やはり王配候補者のひとりか。だけどこいつはなんか頭の中が空っぽのような印象の男だな)



 水連の言動もそうだが服装もわざと着崩した着方をしていて本人はそれが格好いいと思っているような態度だ。

 それが若さだと言えば聞こえはいいが族長の息子なら民の目を意識してもう少しきちんとした格好をするべきだろう。

 少なくとも光主の父親の光の族長の前でこんな姿をしたら間違いなく叱責される。

 


「それで俺に何か用か?」



 内心、美雨が第一印象でこの男に好意を抱かなかったことに安堵しながら光主は水連に尋ねた。

 すると水連はニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。



「俺は回りくどいことを言うのが苦手だから単刀直入に言うが、美雨様の水の王配に俺が指名されるようにあんたからも美雨様に俺を勧めてくれないか?」


「なんだと?」


「俺は水の王配になりたいんだ。もしあんたが俺に協力してくれたらもちろんあんたにお礼をするからさ」



 自分を水の王配に推薦して欲しいという水連の真意を光主は考える。

 水の王配選びに光主が口を出すことを水族が望むとは思えない。少なくとも表面上は。

 もしかしたら水連は光主に水の王配選びに干渉する気があるかどうか探りを入れている可能性もある。

 なので光主は慎重に答えることにした。



「水の王配選びに光の王配の俺が口を出せるわけないだろう」


「だからさあ、そういう回りくどいこと言わないでよね。あんただって光族を優位に扱ってくれる水の王配が選ばれた方がいいだろ? 俺が水の王配になったら光族が優位になるように協力してやるって言ってんの!」


「……ほお、水族のことよりも光族を優先してくれるというのか?」



 族長と違う立場とはいえ王配は部族を代表するものだ。

 己の出身部族より他部族の利益を優先するなど普通ならありえない。

 水連の言動は水族を裏切る行為だ。


 美雨は各部族を分け隔てなく大切に想っている。

 そんな美雨が自分の部族を平気で裏切る行為をする人物を自分の王配に願うはずがない。

 この時点でこの水連という男は美雨の王配に相応しくないと言えるだろう。



「そうだよ。俺は水族が嫌いだしいくらでも光族の味方してあげるよ。政なんて難しいことしないでよくてそれでいて権力があって女とも自由に遊べる王配なんてこんな都合のいいご身分なんて他にないだろ? だから俺は王配になりたいわけ」


「……王配になったら女王以外の女と遊べると思っているのか?」


「当たり前じゃん! 一人の女王に六人の王配なんてその間に愛情なんてあるわけないし王配は愛人がいるに決まってるさ。あんただって美雨様だけを愛してるわけじゃないだろし王配になったら他の女を囲うつもりだろ? 今はまだ美雨様に手を出せなくてたまってるなら俺が水族の女を紹介しても……ぐほおっ!」



 光主の右手が水連の首を掴んでグッと締める。

 水連は苦しそうにもがいて光主の右手を自分の首から両手を使って外そうとするが光主の力の方が圧倒的に強い。

 それもそのはず水連の言葉にキレた光主は雷神の力を使っているからだ。通常の数倍の力が発揮できる。このまま光主が望めば水連を絞め殺すなど簡単だ。



「黙れ、クサレ外道が! 残念だが俺と美雨の間には真実の愛が存在する。外道な考えを持つお前には生涯分からないだろうがな。いいか、お前だけは絶対に美雨の水の王配にはさせない。いや、その前にお前みたいな外道は美雨に近付くな。美雨に近付いたら今度は命はないと思え」



 爛々と怒りの炎を黄金の瞳に湛え水連を睨みつけると光主は水連の首から手を離した。

 怒りの感情に包まれてもここで水連を殺すわけにはいかない。

 水の族長の屋敷で光の族長の息子に水の族長の息子が殺されたらさすがに水族も光族に対して戦を仕掛ける可能性がある。

 華天国内の部族同士で争うことは美雨がもっとも嫌うことのひとつだ。



「ゴホッ! ゴホッ! おえぇ……」



 解放された水連はその場に倒れ込み激しく咳き込む。

 そして怯えた瞳で光主を見上げる。



「あ、あんた、な、なにもん……そ、そんな、強い力持ってるなんて……ば、化け物……」


「外道に化け物扱いされても何も思わないが俺は親切だからひとつだけお前の空っぽの頭でも分かるように教えてやろう。俺は化け物じゃなくて「神」だ」



 ニヤリと笑いながら光主はそう告げると一瞬だけ雷神の力を解放した。

 光主の身体を白い雷が包みバチバチと音を立てる。


 それを見た水連は「ひっ!」と短く悲鳴を上げてその場から脱兎のごとく逃げ出した。

 何度もつまずきながら必死で逃げていく水連の後ろ姿を睨みつけながら光主は呟く。



「どこの部族にもクソ野郎はいるもんだな。あの野郎に比べたら氷室が聖人に見えるぜ。だがこれでひとり候補は消えたな」



 光主が雷神の力の放出をやめると高志乃が光主のところにやって来た。



「光主様。美雨様が屋敷に戻られました」


「もう戻って来たのか。仕方ない、あとの3人を見極めるのはまた後日にするか」



 水連のような外道を相手にした後は聖女のように清らかな美雨に癒してもらうのが一番だ。

 光主は美雨の部屋へと向かった。 


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