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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第76話 野乃の夢

「両親が亡くなった後、ひとりで生きていくためにもより良い仕事を探そうと王都に向かったんです。そして王都で職探しをしている時に美雨様の侍女を募集していることを知り思い切って申し込みをしてみたんです」


「それで野乃は私の侍女に採用されたの?」


「はい。侍女になるには一応それなりの身分が必要なのですが、幸いにも私は水族の族長の遠縁にあたりまして」


「え! 野乃って水族の族長の身内だったの!?」


 今まで野乃の家族のことも知らなかったが野乃の身分的なことも考えたことはなかった。

 しかし王女付きの侍女になるには身分的なものが考慮されてもおかしくはない。


「身内と言っても血縁的には今の族長とはかなり離れていますが。でもそのおかげで美雨様の侍女になることができました」


「そうだったのね」


「はい。そして美雨様の侍女として働くうちに美雨様が闇の王配殿下との約束を果たすために女王教育に一生懸命打ち込む姿を見て私も亡くなった両親の死を嘆くばかりではいけないという気持ちになれたのです」


 野乃はニコリと微笑む。

 その笑顔からはこの場限りの嘘を吐いているようには見えない。

 美雨が女王を目指すために勉強をしていた姿を見て両親を亡くした野乃が前向きに人生を歩めるようになったのなら美雨も嬉しく思う。


「それに私には子供の頃に夢があったんです。大人になったら女王陛下に仕える仕事がしたいと。美雨様の侍女になった時にその夢のことも思い出しました」


「まあ、そんな夢を持っていたの?」


「ええ。ですから美雨様が女王陛下になることは私の夢でもあるのです。美雨様。もし次代の女王陛下になった時も私を侍女としておそばに置いていただけますか?」


「もちろんよ! 野乃にはいつまでもそばにいて欲しいわ」


「ありがとうございます。美雨様。ぜひ私の夢を叶えてくださいね」


 野乃は美雨にとっても大事な侍女だ。

 これまで野乃に助けられたことも多い。

 野乃が望んでくれるなら自分が女王になった後も侍女として仕えて欲しいと願うのは美雨だって同じだ。


「俺も美雨のそばにいつまでも一緒にいていいか?」


 少し拗ねたような声音で光主が美雨に尋ねてくる。


「こ、光主は私の光の王配なんですから女王になった時にいつまでも一緒にいてくれないと、こ、困ります」


 王配が女王と一緒にいることは当たり前だ。

 歴史上、女王と結婚した王配が離婚したことなど一度もない。


 だが美雨の言葉を聞いた光主はなにやら不満顔になる。


「それは俺が光の王配だから一緒にいたいってことか? それとも俺だから一緒にいたいってことか?」


「……っ!」


 どうやら光主は女王が光の王配を必要とするから一緒にいたいのかそれとも「光主」だから一緒にいたいのかを聞きたいらしい。


(そんなこと決まってる。私は光主様だから一緒にいたいのよ……でもそのことを口にするのは恥ずかしいわ)


「……こ、光主だからに決まってるじゃないですか。光主以外の光の王配は必要ありません……」


 羞恥心から小さい声になってしまったが美雨はハッキリと自分の気持ちを伝える。

 そこで美雨はハッとした。


 なぜ闇のお父様や水のお父様が亡くなった時に新しい王配を母が迎え入れることがなかったのか。

 疑問に思っていたことのひとつが分かった気がする。


(お母様はお父様たちを愛していたからその代わりを選ぶことができなかったんだわ)


 自分の愛する者の代わりなどそう簡単に見つかるわけがない。

 たとえ女王として新しい王配が必要だと言われてもそこに愛がなければ意味がないはずだ。


 少なくとも美雨は光主以外の光の王配など必要だと思えない。

 美雨の唯一無二の光の王配は光主だと断言できる。


「俺も美雨が女王だから一緒にいたい訳じゃない。美雨だから一緒にいたいんだ」


 美雨の言葉に上機嫌になった光主は美雨の手を取りその手に口づけをする。

 その行為から光主がどれほど美雨を愛しく想っているかが伝わってくるようだ。


 だが美雨はふと言いようのない恐怖のようなものを感じてしまう。

 この幸せはずっと続くのだろうかと。


「光主……光主は私を置いていなくなりませんよね……?」


 脳裏に闇のお父様や水のお父様のことが浮かび不安に襲われた美雨は光主に確認せずにはいられなかった。

 自分が愛する者の死を見るのはもう嫌だし怖いのだ。

 幸せな日常は突如として崩れ去る。そんな経験をしているからこそ美雨は今の幸せが壊れるのではと臆病になってしまう。


 すると美雨の不安を敏感に感じ取ったのか光主は安心させるように美雨の頭を片手で撫でる。

 美雨の銀髪を撫でる光主の手は優しく温かささえ感じるほどだ。


「当たり前だろ。美雨が嫌だと言ってもそばにいてやる。絶対に美雨を置いてどこにも行かないから安心しろ」


 優しい光主の言葉に美雨は安心感に包まれていく。

 まるで美雨の身体全体が何かに護られている感覚になる。


(そうよ。光主様が私を置いていなくなる訳ないじゃない。悪い想像はしちゃダメよ、美雨)


 自分に活を入れて美雨は邪念を追い払う。


「ありがとうございます、光主。そろそろ出発しましょう。水の都までもう少しですから」


「ああ、そうだな。それじゃあ、行くか」


 美雨たち一行は休憩を終えて水の都を目指す。


(水の都かあ。どんなところかしら? 水族は「海の民」とも言うけれど。水の王配候補者たちってどんな人たちだろう)


 水族で無事に自分の水の王配が見つかることを願いながら美雨はまだ見ぬ水の都のことをいろいろと想像していた。


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