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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第54話 蜂の襲撃

 声がした方を見ると数人の作業員が慌てているのが見えた。

 そして彼らの側のガラスが確かに割れている。


 割れたガラスの部分は人の頭ぐらいの大きさの穴だ。

 そこから既に数匹の蜂が部屋を飛び出して来ていて作業員はパニック状態になっている。


「落ち着け! 慌てるんじゃない! 割れたガラスの穴を板でも何でもいいから塞ぐんだ!」


 そこへ光主の鋭くもどこか人を安心させる声が響く。

 その声に従っていれば大丈夫と思えるような不思議な声だ。


 まるで生まれつき人の上に立つことが定められていたかのような王者のようなその声がパニック状態に陥っていた人々に冷静さを取り戻させる。


「この板で塞ごう!」


「よし!」


 冷静さを取り戻した作業員たちは光主が命令した通りに近くにあった板を使って穴を塞ぐ。

 少なくともこれで新たに蜂が外に出て来ることはなくなった。


 だが既に数匹の蜂が部屋の外に出て辺りを飛び回っている。

 その光景に美雨は恐怖を感じた。


 なにしろ蜂は人の拳の大きさぐらいあるのだ。

 こんな蜂に刺されたら酷いケガを負うことになるしもし毒を持つような蜂だったら命に係わる可能性がある。


 蜂も興奮しているらしく針を突き出して人々を威嚇しているようだ。

 あんな大きい針なら衣服も貫通して肌に針が突き刺さるに違いない。


(どうしよう! 誰かが蜂に刺されたら……)


 蜂に刺された者を美雨の癒しの力で治療することはできるがそれでも蜂に刺されればその時は痛みを伴う。

 民にはなるべく苦しみを与えたくない。


 すると蜂の一匹が美雨に襲いかかってきた。

 巨大な蜂が眼前に迫り美雨は悲鳴を上げる。


「きゃああっ!」


「美雨!」


 その瞬間、美雨の身体は光主に庇われるように抱き締められた。


「う!」


 美雨を庇った光主が短く呻き声を出す。

 襲ってきた蜂が光主の背中を針で刺したのだ。


「光主!」


「大丈夫だ、美雨。すぐに片付ける」


 苦悶の表情を浮かべた光主だったがすぐに自分の腰から短剣を取り出した。

 そして近くを飛び回る蜂をその短剣で真っ二つにする。


 その剣の腕前に美雨は驚愕した。

 拳くらいの大きさがあるとはいえ相手は飛び回っているのにそれを的確に狙いをつけて短剣で真っ二つにするとは。


 余程の腕前でなければできない芸当だ。

 光主は剣術が得意だとは言っていたがそれは誇張でもなんでもなく本当のことだったと分かる。


 すると残りの数匹の蜂も光主を敵と認識したのか一斉に光主に襲いかかってきた。

 背中に美雨を庇い光主は次々とその蜂たちを短剣で真っ二つにしていく。


 部屋の外に出た蜂は全て光主によって退治されてしまった。 

 これでこれ以上蜂に刺される犠牲者は出ないだろう。


 そのことに美雨は安心したがすぐに先程光主が蜂に背中を刺されたことを思い出して蒼ざめる。


(そうだ! 光主様は蜂に刺されたんだったわ! 癒しの力で治療してあげなくちゃ!)


 そう思った瞬間、光主がその場に片膝をついてうずくまる。


「光主!」


 美雨が慌てて光主に駆け寄ると光主は荒い呼吸を繰り返し額には汗を掻いていた。


「大丈夫だ。この蜂に毒はない。刺されてもしばらく腫れて痛むがたいしたことはない」


 光主は気丈にそう説明するがとても苦しそうだ。

 その姿に美雨は自分の胸がギュッと苦しくなるのを感じた。


「すみません! 光主。私のために貴方が蜂に刺されてしまうなんて……」


「美雨が無事ならそれでいい。美雨が苦しむ姿など見たくないからな」


 そう言って光主は自分が苦しいだろうに優しく美雨に微笑む。


「それは私も一緒です。私も光主の苦しむ姿を見たくありません。だから私の癒しの力で貴方を治療させてください。空月様、治療のためにどこか部屋を借りられませんか?」


 近くで様子を見ている空月に美雨はお願いする。

 本当ならこの場ですぐに治療してあげたいが美雨が癒しの力を持っていると分かれば美雨の正体に気付く民がいるかもしれない。

 この国の第三王女が癒しの力を持っているということは有名な話なのだから。 


「分かりました。とりあえず二人ともこちらへ。光主さんには私が手を貸します」


 空月に支えられて光主は立ち上がった。

 そして作業所内の小さな部屋に連れて行ってくれる。


 そこには簡易ベッドがひとつ置いてあった。

 空月は光主をベッドに運び光主はベッドに腰をかけて座る。


「治療が終わるまで私は部屋の外に出ていますね」


 空月が部屋を出て行くと美雨は光主に近付いた。

 まずはケガをした背中を見せてもらう必要がある。


「光主。すみませんが治療をするので背中を見せてくれませんか?」


「…っ!」


 光主の肩がビクッと震えた。

 そして押し殺したような声を発する。


「治療はしなくていい。少し休めば良くなる」


「そんなに苦しそうなのに無理を言わないでください。大丈夫です。治療は痛くありませんから」


「いや、そういうことではなく……」


 光主の表情は苦しさだけでなく何かをためらっているようだ。

 そこで美雨は月天の言葉を思い出した。


(そうだ。月天様は光主様の背中には雷神に襲われた傷があるって言ってたわ。光主様はその傷を他人に見せたくないのね)


 自分だって醜い傷跡が身体にあればそれを他人に見られたくはない。

 でも今は緊急事態だ。


「光主。貴方の背中に雷神に襲われた時の傷があることは知っています。どんな傷跡でも私は気にしません。だって好きな人の身体ならどんな身体でも好きですから。だから貴方の身体を私に見せてくれませんか?」


「…っ!?」


 光主は大きく目を見開き美雨の顔を見た。

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