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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第46話 釣った魚

「この夕食の魚は私が釣ったのよ、野乃。すごいでしょ?」


「まあ、そうだったのですね。美雨様に釣りの才能があるとは思いもしませんでしたわ。素晴らしいです」


 美雨の前には今日光拓と魚釣りに出かけた時に自分で釣り上げた魚を焼いた料理が置いてある。

 約束通りに光拓は美雨の釣った魚を厨房で調理させて夕食に出してくれたのだ。


 好き嫌いのない美雨は魚も肉も野菜も何でも食べるが自分が釣ったと思うとこの魚料理は特別おいしく感じるから不思議だ。


(でも私だけ食べるのはもったいない気がするな。もっと釣れたら光主様にも食べてもらえたのに…)


 結局、美雨が釣ったのは最初に釣り上げた魚だけ。

 その後は全然釣れなかった。光拓は何匹か釣ったのでやはりそれは経験の差だろう。


「どうかされましたか? 美雨様」


 料理を食べる手が止まった美雨に野乃が声をかけてきた。


「釣れたと言っても一匹だけだったからもっと釣れば皆にもこの魚を食べてもらえたかなって思って」


 本当は光主に食べてもらいたかったのだがそのことを正直に野乃に言うのはまだ恥ずかしい。

 だから「光主に」ではなく「皆に」という言葉を使う。


 光主に好意を持っている自覚はあるがまだ他の王配候補者たちと交流する予定なので野乃たちには正式に光主を光の王配と決めた時に自分の光主に対する想いを話したいと思っているのだ。


 今の時点で迂闊に光主に好意を持っていると野乃に言ったら「それならすぐに光主様と婚約しましょう」と勧めてくるに違いない。

 王配選びにやり直しはきかない。それ故に美雨も慎重にならざる負えないのが現状だ。


「そうですね。美雨様が釣りの腕を上げてたくさん魚を釣れるようになったら私もいただきますわ。でも私よりもまず光主様に食べてもらう方がよろしいかと思いますが。美雨様もそれをお望みでしょ?」


「えっ!?」


 野乃の口から光主の名前を名指しされて美雨は手に持っていたフォークを思わず落としてしまいガチャンとフォークが皿に当たって音を立てた。


「な、なに言ってるのよ、野乃。わ、私は、皆に食べて欲しいって…」


「おや、光主様に食べて欲しいのではないのですか?」


「そ、それは、もちろん光主様にも、た、食べて欲しいけど…」


 美雨は頬を朱く染めどんどんと声が小さくなる。


「フフフ、やはり美雨様は光主様に好意をお持ちなんですね」


「…っ!」


 ハッキリと野乃から指摘されると美雨は恥ずかしくて仕方ない。

 野乃に自分の気持ちがバレているとは思わなかったがこれだけは伝えておかないといけないと思い美雨は野乃の顔を見る。


「こ、好意は持っているけど、まだ光主様を光の王配として決めたわけではないの。王配選びは感情だけではできないから」


「承知しております。女王陛下と同じく王配の方々に誰がなるかはこの国にとってとても重要なことですから。でもこれは私個人の意見ですが美雨様には美雨様が想うお相手と結ばれて欲しいです。美雨様の恋が実るように私も尽力させていただきます」


 美雨の気持ちを一番に考えてくれる野乃に美雨は感謝で胸がいっぱいになる。


「ありがとう、野乃。他の王配候補者の方々ともお話してみて自分の光の王配を決める予定だけどその時は自分が納得する相手を選ぶわ」


「そうですね。それがよろしいかと。それでは明日のご予定はいかがいたしますか?」


「えっと、月天様には一緒に本を読みたいって言われていて光延様にはお茶会に誘われているんだっけ?」


「はい。今のところはその二つのお誘いですね」


(う~ん、月天様と本を読むのってきっと太陽神殿の中でのことよね。一日読書するっていうのもなんだし。午前中に月天様と本を読んで午後は光延様とお茶会にしようかしら)


 読書もお茶会も太陽神殿の中で行われるなら移動に時間を取られるわけではないから掛け持ちしても問題ないだろう。

 それに正直に言えば月天と光延は美雨の苦手なタイプの人間たちだ。なるべくなら必要最低限の接触で彼らとは交流したい。


「それなら午前中は月天様と読書をして午後は光延様とお茶会にするわ」


「承知しました。そのようにお伝えしておきます」


(ふぅ、王配選びで王配候補者たちの全員と話すことは必要なことだけど明日は気が重い一日になりそう。そういえば光主様からはあれから次のお誘いがないけれど今頃どうしているのかな)


 自分に愛の言葉を伝えてくれた光主からは新しく伝言は来ていないようだった。

 もちろん王配候補者だっていろいろ忙しいだろうことは分かっているつもりだ。ましてや光主は族長の長男でもある立場だから美雨の相手ばかりするわけにもいかないだろう。


 それでも好意を持った相手の顔も見れないのは寂しい。


(明日は太陽神殿の中にいるから偶然光主様にもお会いできるかもしれないわ)


 美雨はそう思いながら食事を再開した。






 光主が食堂で夕食を食べていると光拓がやって来て光主の隣りに座る。


「今日は光主兄さんは何をしていたの?」


「野暮用を片付けていた」


 雷神の加護を受けるための儀式の下準備をしていたとは光拓には言えない。


「ふ~ん、てっきり俺は光主兄さんは俺と美雨様が魚釣りしている間、陰で見張っているかと思ったのに」


「そんなことする必要はないだろう。美雨様には王配候補者たちと交流する権利がある」


 そうは言うものの光主が他の王配候補者たちの動きに目を光らせているのは事実だ。

 美雨の光の王配になるのは自分なのだから。


 本来なら美雨が光拓と魚釣りに行く話を聞いた時に光主は光拓の言うように見つからないようについて行き陰で見張っていようかと思ったのだがそれをしなかったのは既に想い人のいる光拓が相手だったことと「雷神降ろしの儀式」の下準備が必要だったからに過ぎない。


 光族最強の男にならなければ美雨の光の王配には相応しくない。


「へえ、光主兄さんってもっと嫉妬深いと思ってたのに」


「俺が嫉妬深いわけないだろう。俺だって王配選びが感情だけで決められるものではないことぐらい理解している。それで魚釣りはうまくいったのか?」


 光拓の嫉妬深いという言葉を否定しながらも美雨と光拓がどんな時間を過ごしたかが気になってしまう。

 すると光拓がニヤリと笑う。


「やっぱり俺と美雨様が何をして過ごしたか気にしてるじゃん。その時点で立派な嫉妬だと思うけどなあ」


「別にそんなことはない」


「またまた無理しちゃって。でも安心してよ、光主兄さん。美雨様には俺は想い人がいるから俺を王配に選ばないでくれって頼んだだけだからさ。後は純粋に魚釣りしてただけ」


「…そうか」


 ある程度光拓の行動を予想していた光主に驚きはない。

 普通に考えれば王配候補者でありながら王配に選ぶなと頼むなどおかしな話だしそのような者を王配候補者にしたのかと女王陛下から光族に苦情を言われても仕方ないことだが。


(だけど美雨はそれを受け入れたんだろうな)


 美雨は優しい女性だ。

 他に想い人がいると告白されてもなおその人物を自分の王配にと考える人間ではない。


「俺は伝えることは伝えたからこれからは美雨様が自分の想いで王配を選べるように協力するつもりだよ。美雨様には幸せになってもらいたいからね」


「美雨様は俺が幸せにするから問題ない」


「うわ! 光主兄さんって嫉妬深い上に独占欲の塊みたい。光主兄さんが無事に光の王配になったとしても他の部族の王配とは仲良くしてよ。あくまでこの国には「六人の王配」が必要なんだから」


「………………善処する」


「いや、マジでその間が怖いんだけど」


 光拓は溜め息を吐く。

 他の部族の王配と仲良くできるかは光主も未知数だ。


(美雨を女王にするのには他の部族の王配が必要不可欠だがそいつらと仲良くできるかは別問題だな。そもそも俺と同等の力を持った男しか美雨の王配には認めん)


 他の部族の王配に侮られないためにも自分は光族最強の男を目指すのだ。



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