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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第103話 水連の急病


「う~ん、どうしようかなぁ……」



 次の日の朝。美雨は悩んでいた。



「何を悩んでいらっしゃるのですか? 美雨様」



 食後のお茶を淹れて美雨の前にカップを置きながら侍女の野乃が尋ねてくる。

 ちなみにいつも美雨のそばを離れない光主の姿はない。


 先程、少しだけ美雨の部屋に顔を出した光主は「今日は用事があるから少し外出する」と言ってどこかに出かけたようだ。

 美雨も今日は氷室以外の水の王配候補者と交流する予定だったから光主が不在なのはちょうどいい。


 だがそこで美雨はあることに悩んでしまったのだ。

 水の王配候補者と交流を持つことは決めているが誰から交流するかというその順番だ。


 光族の時には王配候補者の方からお誘いの話が来ていたが水の王配候補者からのお誘いは美雨のもとに来ていない。

 なのでここは美雨の方から行動を起こすしかないだろう。



「今日は氷室以外の王配候補者の方たちと交流しようと思うんだけど、誰から交流しようかなと思って……」


「そうでしたか。そういえば先程お茶の用意をするために少し使用人の方と話をしたのですが昨夜から水連様が急病で寝込んでいるらしいですよ」


「え! 水連様が!?」



 美雨の脳裏に顔合わせの時に会った水連の顔が浮かぶ。

 少し軽薄そうな印象を受けたが病気になるような前兆はなかったように思える。


 病気の前兆を美雨が感じられるわけではないがそれでも健康そのものにしか見えなかったのは事実。

 急病という話だが本当に突然の病なのだろうと想像した。



「それで水連様の容態はどんな感じなのかしら? もし「癒し」の力が必要なら私の力を使ってもいいけれど」



 美雨の「癒し」の能力は万能というわけではない。

 ケガと病気であればケガの方が治しやすいが病気の場合も症状を緩和することができるし軽い症状なら病気も治すことは可能だ。


 もちろん水の族長が水連を医者に診せているだろうがそれでも心配してしまう。

 たとえ第一印象が良くなくても水連も水の王配候補者のひとりなのだから。



「すみません、美雨様。私も詳しい容態までは聞いていなくて…」



 野乃は申し訳なさそうな顔をする。



「それなら会えるか分からないけれど水連様のお見舞いに行ってみるわ。それで私の「癒し」の力が必要なら癒してあげたいし」


「そうですね。それが良いかもしれません。水連様の部屋がどこか使用人の方に訊いてきますのでしばらくお待ちください」


「分かったわ。よろしくね、野乃」



 野乃が部屋を出て行くと美雨はお茶を飲んで喉を潤す。

 王配候補者が病気になるなど想定外の出来事だ。



(水連様。重い病気なのかな……)



 自分の水のお父様を病気で亡くしている美雨には水連が病気と聞いて他人事には思えなかった。

 救える命は救いたいといつも願っている美雨だ。

 そこへ野乃が帰ってきた。



「美雨様。水連様の部屋の場所が分かりました。当麻様に話しておきましたので当麻様と一緒にお出かけください」


「お出かけと言っても屋敷内だから場所さえ教えてくれれば私がひとりで行ってもかまわないけど」


「光主様より美雨様をひとりにしてはならないと厳命されております。美雨様が水の王配候補者の方々と行動する時以外は必ず誰かが付き添うようにと」



 野乃の言葉からは固い決意が感じられる。

 おそらく美雨が何を言っても野乃たちには美雨をひとりで行動させるという選択肢はないに違いない。



(野乃は私の侍女なのに光主様の部下みたい。まあ、でも光主様は私の光の王配だから野乃たちが光主様に従わないのも困ることには困るんだけど……)



 なんとなく釈然としない思いを抱きながら部屋を出るとそこには当麻がいる。



「美雨様。水連様の部屋までご案内します」


「よろしく、当麻」



 当麻の後について美雨は水連の部屋にやってくる。

 扉の前には警備の兵士らしき人物が二人立っていた。



(ここまで来るまでに見た扉には兵士が立っている所なんてなかったのに、なぜ水連様の部屋の前だけ兵士がいるのかしら……? もしかして水連様の病気は何かの感染症なのかな……?)



 感染症なら不用意に病人のいる部屋に人が侵入しないように見張りを置くこともある。

 もし水連が感染症なら面会する美雨も気を付けなければならない。

 そもそも美雨を水連に会わせてくれるかも怪しいが。



「すみません。美雨王女殿下が水連様のお見舞いに来たのですが部屋に入ってもいいですか?」



 当麻が美雨の代わりに扉の前の兵士に訊いてくれた。

 しかし兵士は首を横に振る。



「面会は族長と水連様の兄君の海人様と氷室様以外認められていません。特に美雨王女殿下は絶対に面会させてはならないという命令が出ています」



(え? 私は絶対に面会してはいけないってどういうこと……?)



「あ、あの、なぜ、私は面会してはいけないのでしょうか?」



 思わず美雨がそう兵士に尋ねると兵士も困惑顔になる。



「申し訳ありません。我々もその理由までは聞いていないのです」


「でも私には「癒し」の力があるんです。その力で水連様をお助けできればと思っているのですが……」



 必死に兵士に訴えると突然水連の部屋の扉が開いた。



「何を騒いでいるんだ。病人の部屋の前で騒ぐなど……おっと、これは美雨様ではありませんか」


「海人様!」



 姿を現したのは海人だった。



(海人様に水連様の容態を訊いて必要なら面会して治療させてもらえるように頼んでみよう)



「美雨様がなぜここに……?」


「水連様が急病だと聞いてお見舞いに来たんです。それに私には「癒し」の力があるのでお役に立てるのではないかと思いまして」


「ああ、そうでしたか。ですが水連との面会は許可できません」


「面会できないということは感染症か何かですか?」



 そう尋ねるがもし感染症なら海人が平然と防護服も着ないで水連の部屋にいたのはおかしい。

 しかしそれ以外の理由で面会できない病気というのが美雨には思い当たらない。

 いったい水連の病気とはなんなのか。



「あ~、その話でしたらここで話すのもなんですから私の部屋で話しませんか? 美雨様」



 海人は水連の病状をここにいる兵士や当麻に知られたくないようだ。

 きっと族長の息子の病について変な噂が立つのを恐れているのかもしれない。



「分かりました。では海人様の部屋でお話を伺います」


「それなら私の後について来てください。部屋まで案内します」



 海人が廊下を歩き出したので美雨はその後に続いた。

 水連の病状を聞かないことには自分の「癒し」の力が必要かが分からない。



(私の「癒し」の力が必要ないといいわね。水連様の病気が重病じゃありませんように……)



 美雨は心の中でそう祈った。


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