裏切りの夜-5
2/28 14:35 B 地区
隠れ家の扉が激しく開かれてリンとアナが息を切らせて入ってきた。
「時間かかったね。トラブルでもあった?」
リンが心配そうにアナに聞く。
だがリンが疲れた顔をして、
「もう、大変だったんだから!!
あっちゃこっちゃでドンパチやってるし、この街って最悪!!」
とキツイ声色で言う。
隣でアナは優しくほほ笑むが、次の視線はゲストであるクインに注がれる。
「あらためて、はじめましてクイン。」
とリンが真面目な顔で一声を放つ。
「よっ、天才。」
クインは軽く手を挙げ軽快に答える。
「私もご挨拶を。
アナスタシアと申します。クインさん。」
アナも加わる。
「ああ、フェニックスのお嬢さんか。
スゲー美人だな。」
とクインの笑顔がまぶしい。
「さて…まずあなたとお話ししなくちゃね…クイン。」
とリンはタバコに火をつけて言う。
「ほう。なにをだ?天才。」
とクインもタバコに火をつけ答える。
するとリンはルビーの方を向いて、
「天才天才って言わないで!!
今回は誤算ばかりで心が折れかかってんだから!!」
と大きな声で言う。
明らかにクインが天才と茶化すのはルビーが先導しているからだ。
あまりの剣幕に、
「はは…ごめんね。」
と静かに謝るルビー。
それを受け入れたリンは、
「じゃあ、気を取り直して…。
クイン、まずあなたの真意を知りたい。
わたしたちに関わる事がどれだけのリスクかは承知のはず。
すでにカスミと共闘してしまっているからあとには戻れない。
だからこそハッキリさせておかなければいけないの。
クイン。なぜ首を突っ込む?」
真剣な眼差しで問われたクインは、
「刺激だな…。」
とつぶやく。
「どういうことですの?」
アナが興味深そうに問う。
深くタバコを吸いこみ一気に吐き出したクインが続ける。
「この中で、本当の戦場を経験しているのはわたしとルビーだけだな。
北欧内戦の時は同じ西側だったわけだ。
あの戦争は酷かったな。
地理的にも冬の時期は死ぬほど寒い。
そんな中でわたしらグリンベレーはサバイバル戦をひたすら繰り広げていた。
確かに戦場は怖い。当然だよ、命がかかってんだから。
でも、軍人の中にはわたしのような変人も多くいるんだよ。
あのギリギリの中で凌ぎ合う命の駆け引き…。
そして仲間との達成感。まるでスポーツのような軽い錯覚に陥ってしまう。
あたしは…、カスミとルビーを逃がすというミッションを思いついたとき、このくだらない大会が一瞬にして輝かしいものに変わった。
なあ、フェイ・リン?
邪魔はしねえからさ、このミッションをやらせてくれよ。
スゲー戦力になるぜ。何でも言うこと聞くからよお。
さっきも指示通りにカスミを逃がさなかったろ。な?」
と真剣に語ったあとにおどけて見せた。
「あーーーーー!!
思い出したああああ!!!!」
突然、カスミが大きな声でリンに怒りをぶつける。
ルビーが大きな笑顔でそれを止める。
するとアナが、
「ふふ、素直じゃないところはリンと気が合うかもしれませんね。
クインさん。
結局は、カスミさんとルビーさんを気に入ってしまったのでしょ?
私たちと同じですわね。」
と優しく言うと、リンとクインがお互いを見て苦笑いをした。
「ありがとうクイン。」
ルビーが言うと、
「お、おう。」
と照れた声色でクインが返す。
「さて、天才プランナー。これからどういたしまして?」
アナが茶化してリンを鼓舞する。
リンはその言葉にイヤな表情をみせたが、すぐに笑顔となった。




