汚れ無き世界-16
ルビーの元へと急ぐ霞のイヤホンにリンが話しかける。
『カスミ!!ちょっとそのイヤホンをクインに渡して!!』
突然の指示に戸惑う霞だが、返事はせず周囲のカメラに映らない様にクインの耳にそっとイヤホンをつけた。
「あ?なんあだぁ?」
クインが言葉を発するとすぐに、
『カスミを捕まえて足を止めさせて!!』
とリンがまくしたてる。
「はぁ?」
と理解できないクインだがとりあえず霞の首根っこを掴んで進行を止めた。
「ちょっと!?クインさん!?」
焦りと憤りを表情に出す霞。
「これでいいか?」
とクインの言葉に、
『ええ、ありがとう。
そのままカスミを掴んだままわたしの話を聞いてちょうだい。』
とリンが言う。
クインは逃れようともがく霞をギュっと胸に抱えて、
「ああ、わかった。」
と答えた。
『カスミに見せたくないのよ。ルビーの戦いを。』
リンの言葉に、
「なんでだ?」
とクインが短調な声で問い返す。
『ルビーがそう願っているから。
なんで単独でジンとモニカの方に行ったのか…。
片時も離れないと誓ったカスミをあなたに託した。
わかるでしょ?ルビーの気持ち。』
クインは、ギャーギャーと騒ぎ体をうねらせて離脱をはかる霞の拘束をさらに強めて、
「大統領を殺した元CIAエージェントと、それを守れなかった元シークレットサービス。
この組み合わせから察しはつく。
まさかこんなところで本星に会えるとはね。」
と感心した声色でクインが答える。
『ルビーは大丈夫。
こちらから見る限り二人を圧倒している。
おそらくすぐに決着はつく。
ただかなりエグい惨状になりそうなの。
ルビーが完全に仕事モードでゾーンに入っちゃってる。
だからそれまでカスミをそこで止めておいて。』
リンがクインに懇願する。
「天才、お前って優しんだな。
ま、確かにルビーからすればカスミには見せたくない戦いだわな。
いいねぇ、この恋人想いは理解した。」
クインがそう言うと、
『あなたも意外と話が分かる人でよかったわ。
わたしたちもそっちに向かっているから、あとで合流しましょう。』
そう言ってリンは通信を切った。
「クインさん!!離してってば!!」
早くルビーに加勢したい霞がクインに怒鳴る。
「なあカスミ。
ルビーは今、自分の戦いをしている。
それはたとえカスミだろうと邪魔しちゃいけない。
だからここでルビーの帰還を待とう。」
クインがぶっきらぼうだが優しさが見える言葉を投げる。
「ルビーは一人で戦ってるの!!
リンさんが何を言ったか知らないけど、わたしは行かなきゃいけないの!!
だから離して!!」
依然として離脱を試みる霞。
するとクインが拘束の力をグッと強める。
霞の表情が苦悶に変わる。
「聞き分けのない娘にはオ・シ・オ・キ。」
と意地悪な顔をして耳元でささやく。
「離せぇーーー!!!」
霞の絶叫が虚しくあたりに響き渡った。




