汚れ無き世界-12
ルビーがすべての感覚を研ぎ澄ましながら、ゆっくりと歩みを進める。
自分に向けられている殺意、憎悪。
微かな薬莢の香り。
すると20メートル先にジンの姿を確認。
その手には35口径のハンドガンを装備。
まるでルビーを待っていたかのように道の真ん中で鋭い眼光を向けていた。
「あら、はじめましてジン。
お出迎えしてくれているなんて嬉しいわ。」
ルビーがフードを外して髪を軽くかき上げてから陽気に話すが目は鋭い。
その態度にジンの感情に火がつく。
「てめえ…!!
なんだぁその余裕かまして透かした顔しやがって…!!
舐めてんじゃねえぞこの野郎…!!」
怒号を吐くジンに、ルビーは態度を変えずに軽くため息をつく。
「ねえ、ジン?
貴女は何を目的に出てきたの?
刑務所に入ってれば一生安全に暮らせて行けるのに。
まさか大統領殺しが自由を手に入れてシャバに戻ろうなんて虫のいいこと考えてないよね?
あ、遅くなったけどお兄様は残念だったわね。」
哀れ顔のルビー。
ジンの怒りに油を注ぐ。
「誰のせいでこうなったと思ってるクソ女!!
すべてお前とアンドロメダのせいだよ!!」
激昂するジンに呆れ顔のルビー。
「ねえ、ジン。ちょっと冷静にならない?
そう、貴女はCIAの諜報員として国に尽くしてきた。
とても立派よ。
だからこそ貴女は理解しているはず。
私に対して復讐しても意味がない。
なぜなら私は仕事を忠実に遂行しただけ。
そのあとの事は知らない。
貴女を私の身代わりにしたのも、お兄様を殺したのも私には関係のない部署で行われたんだもの。
誰かに八つ当たりしたい気持ちは理解できる。
でも貴女にも落ち度があった。貴方ほどの一流のエージェントが、自分の情報が改ざんされていることに気がつかなかったなんて。
ロシアのスパイ?
なぜそんな適当な容疑で大統領暗殺まで負わされたのかしら?」
いたって冷静に優しく問いかけるルビー。
これは挑発ではなく最終警告である。
ルビー自身、やはりジンを目の前にすると罪悪感が蘇る。
できれば直接のバトルは回避したい。
もちろんこんな事じゃ止まらない状況だとも理解している。
もう一人の仲間であるモニカの気配も感じている。
一縷の望みに賭けたルビーの言葉。
「関係ないだと…!?
アンドロメダの人間が偉そうに語ってんじゃねえぞクソ女!!
マジでムカつくなコイツ…!!
ホントにぶっ殺してえ…。
10回殺しても足らねえな!!」
ジンの怒りに震えた言葉を聞いてルビーは落胆の吐息を吐いて、
「そうね。そうだよね。
わかったよジン。
私も逆恨みされてうっとおしいんだよぉ!!
舐めんなよ、おい!!
虎を狩るのに子ウサギ二匹で来るんじゃねえよぉ!!」
と罵声を上げて二丁拳銃を正面とノールックで90度左に構えた。
正面にはルビー。左側には忍び寄っていたモニカが銃を構えていた。
「それがてめえの本性だなぁ!!」
ジンがルビーに怒号を吐く。
(そう、これが私。
ルビー・ローズはただの悪人。
それは誰にも否定できない。誰にも否定させない。)
ルビーの銃口は確実にジンとモニカを捉えていた。




