ハイルブロンの怪物-9
そんなクレアの生活がカールの怒号で突然の終焉を迎える。
「エプスタイン様がアメリカでFBIに拘束された!
ここも捜査の手が入るだろう。すぐに身支度して国外に出るぞ!」
慌ただしく部隊に指示を出す。
エプスタインはパリの拠点からニューヨークに戻ったが、空港で待ち受けていたFBIにその場で身柄を拘束された。
児童買春や不正取引など、容疑は数知れず。
世界でも指折りの実業家で投資家が堕ちた瞬間であった。
「カール!囲まれちまってる!」
ひとりの部下が叫ぶ。
すでに屋敷はアメリカから派遣された特殊部隊に包囲されていた。
激しい銃撃戦が始まり、カールの部隊は劣勢に立たされた。
カールはクレアを引き寄せ抱きしめる。
「お前だけでも生きろ。」
そういうと地下にある緊急用の脱出口に行くよう促す。
渾身の力で首を横に振るクレアの表情は苦渋に満ちていた。
「本当の娘のように想っていたよ。幸せになれ…というのは無理な願いだろうがな。
ロシアでモロゾフ・プルシェンコの元に行け!!
きっと助けてくれる!!
さあ、行け!命令だ!」
そういうとカールはクレアを突き飛ばし、再びライフルで応戦を開始した。
ひとりまたひとりと仲間が倒れていく光景を見ながら、カールの頭が吹き飛んだ瞬間、クレアは地下へと走った。
枯れ果てたと思っていた涙があふれ出す。
この時からクレアの本当の意味での茨の道が始まったのである。




