月下の約束-6
2050/7/28、4:00
H 地区
クローレと距離を保ちながら後退していたリンとアナ、そしてルビー。
しかし、確実に近づいてくるクローレ。
「不思議ね…。まるでわたしたちの場所を特定してるかのように向かってくる。」
リンが感心するのも理由がある。
他のプレイヤーは3時間ごとに更新され端末に送られてくるその時点での情報しか知るすべがない。
リンのみが自作のスマホとリンクさせたこの街のネットワークを利用することで特定のプレイヤーの動向を知ることができるのである。
しかしアナが、
「リン!!のんきな事言っていないで考えなさい!!
それが貴女の役目でしょ!!」
と叱る。
さらにルビーも、
「こそこそ逃げ回るのも飽きてきた。
迎え撃つ!!カスミはひとりで戦ってるんだから‼」
と戦闘モードに切り替わる。
「賛成ですわ。
私もそろそろ逃げることに嫌気がさしてきたところですの。
リン、戦うわよ。」
アナがルビーに同意する。
「了解、わたしは後方待機。
二人は左右に。しっかり隠れてよ。
あんなでっかい弾、今の装備じゃかすっただけでも死んじゃう。
そして…武器屋で追加した、【クローレ専用弾丸】に装備を切り替えて。」
リンはそういうと二人の装備品が入った荷物を持って退避を開始。
「こんな弾が通用するの⁉」
半信半疑のルビーは、通常の弾丸が詰まったマガジンを装着している。
「来ましてよ!!」
アナが叫ぶ。
ルビーは目を凝らし、街灯に照らされながら道の真ん中をまるでムービースターがレッドカーペットを歩くように威風堂々とクローレの姿を確認した。
辺りを照らす明かりが強くなる。
これはマッチ配信がされているという事だ。
「余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》って感じ…。
舐めれれたものね…!!」
ルビーの眼光が、まさに上位傭兵たるプロの兵士のそれに変わる。
そして民家の陰に潜み、じっくりとライフルを構えスコープでクローレの頭部を狙う。
すでにクローレはルビーのテリトリーの中、20メートルの距離。
風向き、距離、環境と状況を体が勝手に感じ整えていく。
「さよなら、美人将校さん…‼」
ルビーがゆっくりと引き金を弾く。
放たれた弾丸はまっすぐにクローレの眉間へと向かっていく。
しかしクローレの2メートル手前で、ありえない曲線で弾丸がそれていく。
そして不敵な笑みを見せる。
「ルビー!!なんで信じないの!?
普通の弾じゃ通用しないんだってば!!」
リンの怒鳴り声。
「ちょっと、どうなってるの!?
確実にとらえてたのに!?」
ルビーの動揺が、震えた声で伝わってくる。
「ルビーさん!!
私たちは前回大会でこの不可解な現実を見ているのです!!
だから装弾を変更してください!!」
アナが叫ぶと、ルビーは慌ててマガジンを外し、リンの指示した弾丸のものに変える。
「さあ、攻撃してきますわ!!
ルビーさん、切り替えて!!」
アナの促しに、
「あれ人間なの?ねえ、アナさん、リン!!」
ルビーが戸惑いを見せる。
「説明はあと!!切り抜けるわよ!!」
リンがルビーに、50口径の銃口を向けるクローレに集中させる。
そしてクローレの攻撃のターンへ代わっていった。




