天才の誤算-3
2050/7/28、0:00
F 地区
大会開始のブザーを聞き終えてシザーハンズはゆっくりとホテルのエントランスを出た。
街は薄い街灯に照らされ、遠くから銃声も聞こえる。
シザーハンズは、そんな暗い道を歩き約束の場所へと到着した。
「ミリア。早いな。」
待っていたのはアンドロメダ所属諜報員のミリア。
「だって私のホテルのすぐ裏だもの。」
女の色気を結集したかのようなその美貌と妖艶さ。
「一本タバコを吸ったら終わりましょ。」
そういうとミリアはタバコに火をつけた。
言葉を発さずにそれを見ているだけのシザーハンズに、
「シャロン、どうしたの?
これから大勢を叩きのめしていかないといけないのに元気ないわね?」
とミリアが顔を覗き込む。
「ミリア…本当にこれでいいのか?」
静かにシザーハンズが問う。
「シャロン、何度も話したじゃない?
他の誰かに殺されるぐらいならシザーハンズに殺されたいって。
納得してくれてたんじゃないの?」
諭すようにミリアが答える。
それでも何も言わないシザーハンズに、
「私の仕事はハニートラップ。
何百人いるアンドロメダの諜報員でも、このジャンルは数人しかいない。
14才の初任務で騎乗位から男の眉間にアイスピックをぶっ刺した。
その時の男の顔ったら幸せそうなアヘ顔だったのを覚えているわ。
そうやって何百人もの男に跨って20年以上この仕事をしてきたの。
そんな私がこんなところに放り出されるってどういう意味かわかるでしょ?
用済みってことよ。私よりも若くて魅力的な諜報員が今はたくさんいる。
かなり需要があるジャンルなのに戦力外通告。
だからこそ惨めな死に方はしたくない。
親友としてお願いしているの、シャロン。
世界最強の女の手で…ね?」
そう言ったミリアがコルトガバメントを腰から抜きシザーハンズの胸元に押し付ける。
「ミリア…。」
呟くシザーハンズにニコリとほほ笑むミリア。
「ずっと友達でいてくれてありがとう、シャロン。」
その言葉と同時にシザーハンズの左手の長い鉄爪一本がミリアの胸元に刺さり素早く抜く。
ボムッ!!
小さな爆発音と共に崩れ落ちるミリア。
シザーハンズの爪が的確にミリアのマイクロチップを破壊し誘発させた結果、ミリアは即死。一瞬の苦しみも与えずに親友の願いを叶えた。
シザーハンズは倒れたミリアを抱えて抱きしめる。
ふと地に落ちたコルトガバメントを確認する。
弾は一発も入っていない。
そっとその場に寝かせ、胸にコルトを乗せる。
近くにいた数人の現地監視員に、
「ちゃんと手厚く埋葬するようにジェームズにつたえてくれ。」
と一言残し後にした。
その場にいた現地監視員の顔が恐怖で引きつっている。
それほど怒りを露にしたシザーハンズの表情だった。




