天才の誤算-2
2050/7/27,23:50
霞はワイヤレスイヤホンの電源を入れる。
『カスミ‼聞こえる⁉』
真っ先にルビーの声が入ってくる。
「うん、大丈夫‼」
霞の返事を確認して、
『揃ったわね。みんな端末で自分の位置を把握して。』
とリンが指示を出す。
『まずC地区のカスミはスタートと共にひたすら南下。
なんせ私たちから一番遠い。
誰かに遭遇してもあなたのスピードなら振り切れるはず。
合流を最優先して!!』
リンの言葉に、
「了解。」
と力強く答える霞。
『よし、いい娘!!
D地区のルビーは、H地区でカスミと合流。
わたしとアナはI地区で合流。
その後、動向を見ながら四人で集まる、ここまではいい?』
リンが早口で確認も兼ねたスタート後のプランを口にする。
『リン、私が行くまで死んではいけませんよ。』
アナが本気ともとれるジョークを入れる。
開始3分前。
『さあ、そろそろね…カスミ、すぐに会えるから!!』
とルビーの気合いが皆の緊張感を上げたところで、参加者全員の端末から、けたたましいアラーム音が鳴る。
もちろん全員が確認する。
【At the same time as the start, A, B, and C districts will become restricted areas.
Players starting from the area must move to the valid area by 0:10.
(開始と同時にA・B・C 地区を制限区域とする
当該エリアからスタートするプレイヤーは、0:10までに有効エリアへと移動すること)】
とのメッセージが入る。
「わたしのエリア…。」
と霞が呟く。
『カスミ!!急いでこっちに…!!』
とルビーが絶叫するが、
『ダメ!!間に合わない!!
カスミのホテルから南にエリアを移動するのに10分は短い…!!』
とリンが止める。
『じゃあ、どうするの!?』
ルビーの怒号に、
『急かさないで!!
クソ…想定にはあったけど、まさか最初から北と南で分断してくるとは…!!』
リンが怒りの声を発する。
そこにアナが一喝を入れる。
『二人とも冷静におなりなさい!!
すでに行動すべき選択肢は決まってしまっています‼
カスミさんはひとまず北へ、我々は迅速な合流、リンはカスミさんの安全を最優先にフォロー!!
ルビーさん、例えリンや私たちと手を組まずにお二人で挑んでも、回避することはできない状況であることは気づいてらっしゃるはず。
むしろリンがこの街に張った情報網でカスミさんをサポートできます。
とにかく落ち着いて行動いたしましょう!!』
的を得たアナの言葉にルビーは唇を噛む。
確かにリンの責任ではない。アナの言う通り、手を組まずに霞と二人だけであった時もまったく同じ状況になったに違いない。
『カスミ!!必ず会えるから…!!
それまでがんばって…!!』
絞りだした声が悲しく響く。
それにリンが続く。
『カスミ‼北側にはシザーがいる。
位置情報は把握してるから。
わたしがちゃんと回避できるよう誘導する…信じて…‼』
二人の必死の言葉に、
「ルビー、大丈夫。わたしは死なない。」
霞の冷静でいて重い言葉。
そして…
【ビーーーーーーーーーー】
と端末からブザー音が鳴り響き、すべてのプレイヤーが行動を開始。
霞はゆっくりと北へと一歩を踏み出した。




