アンドロメダ-7
2050/7/27、10:05
「さあ!二人とも起きて!」
クロエの軽快な声が響く。
ぐっすりと眠っていた霞とルビーは驚いて飛び起きる。
「レストランで待ってても全然来ないんだから!!」
怒った口調だが顔は笑っている。
昨夜の去り際とは打って変わって表情は明るい。
「あ、クロエ…昨日はごめんなさい。」
ルビーがすぐに近づき手を伸ばす。
「ルビー、違うの。そうじゃない。
私こそ声を荒げてしまってごめんなさい。
一番苦しいのはあなたたちなのに、感情的になってしまって。」
クロエはルビーの手を掴んで受け入れた。
そしてベッドでもう一度眠りの世界へ旅立とうとする霞に、
「カスミ様!!起きてください!!」
と大きな声で連れ戻す。
そして、
「さあ、いつまでも素っ裸でいないで、シャワーを浴びてこれに着替えて。」
と言ってお揃いのワンピースを2セット二人に見せつけた。
「ささやかだけど私からのプレゼント。
今日のデートはこれで出かけてくれる?」
クロエの言葉に霞が反応する。
「お揃い…!!」
飛び起きて裸でクロエに抱き着き喜ぶ霞。
「喜んでくれて嬉しいわ。
じゃあ、着替えてランチ食べて、自由に過ごして。
私はコンシェルジュの打ち合わせに出掛けます。
カスミ様は必ず18時までにお戻りください。
それを過ぎると現地監視員たちが騒ぎだしますので。」
クロエの言葉に霞は頷く。
「そしてルビー。必ず生きて…。
私はカスミ様もルビーも大好きよ…!!
いつか…どこかで…また会いましょう…!!」
そういうとクロエは一粒涙を流しルビーを抱きしめた。
「ありがとう、クロエ。」
涙声のルビーもスレンダーな裸体をクロエに密着して強く抱きしめ返す。
そしてクロエは涙をサッと払って名残惜しそうに静かに部屋を出た。
しみじみとした空気が漂う中、二人でシャワーを浴び、クロエの用意してくれたワンピースとハイソックスに着替えた。
「かわいい…。」
霞がワンピース姿のルビーを見て笑顔になる。
「もう、クロエったら…。私の好きな黒を選んでくれたのね。」
ルビーも感激している。
お互いのペアルックを褒めながら、クロエに感謝する二人。
するとルビーが、
「せっかくだからこの服で町に出てなんか食べよ!!」
と提案する。
もちろん霞も満面の笑みで頷く。
しっかり手をつなぎホテルを出て散策しながら、アイスを食べたりタコスを食べたりとまさに至極の時間を過ごしていた。
C地区で飲み物を買って歩いていた時、10人程度の如何にもギャング風の連中が道をふさいだ。明らかにちょっかいを出してくる空気だ。
早いメキシコ語でまくしたてる男たちを無視して通り過ぎようとしたとき、男のひとりが霞のお尻を鷲掴みした。
それを見ていた男たちはケラケラ笑っている。
「ルビー…これって怒っていいやつだよね…?」
霞の目が細くなり表情が怖くなる。
「ええ、完全に正当防衛ね。
でもカスミ…本気出しちゃダメよ…!!」
とルビーも顔が仕事モードに変わる。
そのあとが早かった。
左右に散った霞とルビーは素早い動きで男たちを制圧していく。
確実に一発で仕留められる男たちがひとりひとりバタバタと倒れていく。
プロの殺し屋に喧嘩を売ってはいけない。
瞬殺で男たちは全滅。むしろなぜ自分が地に倒れて、体に激痛が走っているのかすらわからない。
それほど迅速かつ正確な打撃を二人は繰り出したのだ。
命があっただけでも幸せに思わなければいけない。
超一流のハンターとは生きている世界が違うのだ。
「いい準備運動になったね。」
霞がまた柔らかな表情に戻った。
「あー、なんかまたお腹すいてきたぁ‼」
ルビーはそういうと霞の手を取って目に入ったスイーツの店に飛び込んだ。
そしてその場に倒れていた男たちは死に物狂いで逃げ出した。
2050/7/27、16:30
二人で階段に腰掛け空を眺めていた。
そこは再会したB地区32。
「そろそろ…だね。」
霞が静かに呟く。
「うん。帰ろ。」
とルビーも寂し気に答える。
A地区を横切り、お互いのホテルへの分岐に差し掛かった。
「じゃあ、またあとで。」
ルビーが優しく言う。
「うん、すぐに行くから。」
そう霞は答える。
そしてお互い見つめ合い、まるでこの世の終わりの如く激しいキスをした。
もう言葉はいらなかった。
体が離れた時、二人は別々の道を歩き出した。




