アンドロメダ-5
2050/7/26、19:00
アナのホテルを出た霞とルビー。
一緒に居られるタイムリミットが24時間を切ろうとしていた。
今日は霞のホテルを愛の巣とし、C地区まで歩いていく。
つながれた手のぬくもりをお互いに感じながら、今この瞬間を必死に楽しんでいる。
「明日の大会開始10分前…だから23時50分にイヤホンの電源を入れる…。
ギリギリじゃないと充電が持たないかも…。」
霞がリンからの指示を復唱している。
「もともと落ちてたものだから、いつ壊れてもおかしくないんだけどね。」
とルビーが言うと二人で大きく笑った。
「だからこそ絶対に離れちゃダメだよね。」
霞の言葉にルビーが大きく頷く。
「とにかくまずは二人が合流するのが優先。
リンたちとはそのあと。いい?」
ルビーが優しく確認する。
笑顔で応える霞だが、
「みんな凄いね…。」
とつぶやいた。
「どうしたの?」
とルビーが不思議顔でのぞき込む。
「ルビーもリンさんもすごく考えてここに来たんだなぁって。
それによく知ってる。わたしが知らない事をたくさん。
だってわたしはルビーに会いたかった。
そしてクローレ・プルシェンコにお兄ちゃんの仇を討ちたかった。
それしか考えてなかった。無知すぎて恥ずかしいよ。」
声は明るいがリンとアナとの出会いで心境の変化を見せた霞。
ルビーはつないだ手の力をギュっと強め、
「カスミは間違ってないよ。
私を探した。私も探した。
そしてちゃんと会えた。
だから二人で生きるという希望が見えた。
だからカスミはなにも間違ってないんだよ。」
声は優しく、しかし眼差しは真剣なルビーの言葉に霞は幸せに気分になる。
「ルビーはリンさんの作戦とか考えとかをきいてどう思った?」
霞の問いに、
「そうね…最初に参加者のリストを見た時にシャロンとクローレよりもクインの名前が気になった。まさにリンと同じ考えね。
まさか現役のグリンベレー隊員が出てくるとはね…。
カスミとここで会う前まで自分が生き残ろうなんて思わなかった理由に、彼女の存在もあったのは確か。
もちろん面識はないけど、経歴だけで絶望しちゃう。
グリンベレーってホントにヤバイ連中なの。
だからリンがクインの存在を把握していたことに対して彼女はちゃんと事態を把握していることが分かった。」
とルビーが説明する。
「じゃあ、クローレとシザーハンズを早い段階で戦わせるっていうのもクインって人への対策なのかな?」
霞がさらに問う。
「お、カスミ鋭いね‼
クローレとシャロンが一騎打ちになったら、まあ間違いなく決着がつく。
どちらかが残るって考え方になるよね?
じゃあ、残った方は誰が戦う?
そう、クインがその役にハマる。
そしてどちらが勝とうが無傷なわけないよね。
そこを一気に叩く。おそらくこの段階で私たちは死を偽装して離脱という流れでリンは考えているんじゃないかな?」
ルビーが確信に近い顔で言うが、
「そんなにうまくいくかな?」
と霞は不安げな顔をする。
それに対してルビーは笑いながら、
「ふふふ…絶対いかない‼」
とキッパリ断言する。そして、
「相手はこの三人だけじゃないの。
他にも銃を持った参加者がうろついてるんだよ。
それらを相手しながらこの作戦をブレなく実行なんてできない。
ぜーーーったいムリ‼」
と茶化したように付け足した。
「うーん…。」
と唸ってモヤモヤを表現する霞。
その姿をみてルビーが楽しそうに宥める。
そして核心を話す。
「カスミ。リンの言った作戦なんて実行不可能なの。
リンが欲しいのは時間。そして護衛。
おそらくどこかのタイミングでマイクロチップを外してくれるのは信じていい。
そこまで四人全員が生き残るための時間稼ぎが本当の私たちの仕事。
リンが言った作戦は私たちを仲間に引き入れる口実でしかない。
だって何も策がないのにマイクロチップを取ってあげるから協力してなんて説得力ないじゃん。
アナのホテルまで私たちを来させて、マイクロチップが本当に取れるってことを実際に見せた時点で、リンの思惑は達成されたってこと。」
話を聞いた霞のモヤモヤがさらに増す。
「じゃあ、なんでできもしない作戦を…!?」
と言いかけた霞を制して、
「リンは…いや、あの二人は何かを企んでる。」
とルビーが強めに言った。
「なにを?」
と霞が聞くと、
「それが何かはわからないけど、場合によっては私たち二人の運命を左右することかもしれない。
だから素直に話に乗って、確実にマイクロチップを取りたい。これが私の作戦。こっちの方がまだ現実的でしょ?」
とドヤ顔のルビー。
「確かに…なんでそんなことまで考えつくの?」
と感心したように霞が聞くと、
「なんでカスミは考えつかないのかなぁ?」
と意地悪な顔をして茶化すルビー。
ほっぺを膨らませて怒ったフリする霞。
ここからイチャイチャタイムに突入となった。




