アンドロメダ-4
2050/7/26夕刻。
A地区、メインストリート。
マリアが辺りを凝視しながらゆっくりと何かを確かめるように歩いていた。
(思ったほどカメラの数が少ない。
てっきり最終決戦はここに誘導してくるものだと思ってたけど…。
違う場所に設定してあるなら考えないと…。
制限エリアのパターンを探るには最後の場所がどこなのか知る必要がある。)
夕方のメインストリートは道行く人間も多い。
その雑踏の中でひとりの女と目が合った。
若干の緊張感をマリアは覚えたが、静かにすれ違う。
(あれはアリー…。凄い殺気を振りまいて歩くのね…。
ニューヨークの死神とはよく言ったものだわ。)
アメリカ東部で最大のギャング組織であるフェアリノ・ファミリー。
現代のアル・カポネと称されるボスのフェアリノが最も信頼をおき寵愛されているのがアリー・ロッソ。
組織の裏切り者の始末、抗争が起きればマシンガンを先陣で撃ちまくるその狂気的な姿を、拠点をおくニューヨークの裏社会では知らぬものはいない。
組織の私刑執行人としての側面が強く、ニューヨークの死神と恐れられる女ギャング。
その威圧的な後姿を見送るマリアに声をかける男。
「あれがアリーか。ようマリア、順調か?」
長身でいて引き締まったボディーがスーツの上からでもわかる。
「あら、ブルースじゃない。こんなところでなにやってんの?」
明るく答えるマリアだが目は警戒を表している。
「雑用さ。俺まで監視員に動員されちまった。
上層部も必死だぜ。執行部からもひとり派遣されてるんだからな。」
うんざりした顔でブルースが愚痴る。
「へえ、ブルースほどの上位傭兵まで現地監視員に投入されるなんて面白いわ。
ああ、きっと次の大会はブルースがアンドロメダから派遣されるんじゃない?かわいそ。」
マリアが嫌味を言う。
「おいおい絡むなよマリア。
俺はお前に同情してんだ。
ガキの頃からアンドロメダで訓練受けて、今じゃ士官クラスにまで出世しちまった。
言ってみればアンドロメダの生抜きってことだろ?
そんなお前がこんな大会に出されるってありえないだろう?
お前が言った通り、明日は我が身ってことかもな。」
ブルースが優しい声でマリアに言葉をかける。
「あんたなんかに同情されたくないわ‼
私は絶対に生き残る。クローレ・プルシェンコだろうがシャロンだろうが全員殺せばいいだけの話。見てなさい‼
あんたのちっぽけな同情なんて私には必要ないって証明してやるから‼」
啖呵をきって威嚇するマリア。
「お前って意外と部下から愛されてんだぜ。
部隊の奴らの元に帰れればいいな。
じゃあ、がんばれよ。」
ブルースはそう言って背を向けた。
その背中に何とも言えない眼光で見送る事しかできないマリアの苦々しい表情があった。




