アンドロメダ-3
2050/7/26 夕刻
G地区。ホテル・サンジョーリナ。
「おい!!コンシェルジュ!!
酒が足んねえんだよ!!使えねえなあ!!
早く持ってこいよ、バカ野郎!!」
自室で酒に酔い当たり散らす女。
「はい。ボマー様。」
淡々と受け流してワインのコルクを開けるコンシェルジュ。
「お前いい加減にしろよ。
飲んだくれたってしょうがないだろう?
もっといろいろ作戦を練ろう。」
ボマーを宥める黒人女性。
「ジェシカ…、アンタさあ、本気で生き残るつもりでいるの?
笑える…。あたしとアンタは戦闘員じゃなく工作員。
ドンパチ撃ち合う兵士じゃないんだよ。
ただの捨て駒。人数合わせ。必要ない人材。わかる?」
ボマーが言い捨てるように毒を吐く。
アンドロメダ派遣組の二人だ。
「そんなことはわかっている‼
だからこそ悔しいんだよ。
シャロンが伝説とか騒がれたギャングをひとりで100人その場で殺した『LAの殺戮』、ルビーの仕事だった『ノーラン卿暗殺』、その他アンドロメダの大きな作戦の下準備をやったのは誰?
お前とわたしだ!!
危険極まりない最前線にわたしがトラップを仕掛け、お前が爆弾を設置した。
地形や町のルートを把握して、正確にターゲットを誘導した!!
わたしたちの仕事によって、シャロンは殺しただけ、ルビーは撃っただけ、作戦部隊はスムーズに進行できた。
なぜわたしたちのような有能な人材を簡単に切り捨てるんだ?
所詮はどんなに危ない仕事したって裏方が評価されないってことだろ?
それが悔しいんだよ!!」
ジェシカが声を荒げて不満を爆発させる。
それに冷めた声でボマーが答える。
「シャロンは殺しただけ?100人以上を一人で始末してんのよ?
ルビーは撃っただけ?あの嵐のような強風の中、300メートル離れた場所から一発で仕留めた。たった一発で。
あたしたちの代わりなんていくらでもいんのよ。
男の工作員だってアンドロメダには売るほどいる。
確かにあたしたちは優秀な人材ではある。
でも特別な人材じゃない。
だって考えても見なよ。工作員の仕事をサポートしているのは諜報員からの事前調査があってのもの。
組織の歯車のワンパーツでしかないのが現実なんだよ。
爆弾娘とトラップマスター。
肩書だけなら立派なもんじゃない。なんか強そう。
女だけの大会だから、これはうってつけの駒だわね。」
そういうと新しく注がれたワインをグッと飲み干す。
「アンジェラ…。」
その態度にジェシカがため息交じりに呟く。
「その名前で呼ばないで‼
あのクソ親からもらったな名前なんて聞きたくもない‼
みんなファーストネームをコードネームにしてるけど、あたしはその名を捨てた。その時からこの世界で生きていくと決めたの。」
過剰に反応するボマーに、
「だったら…!!
わたしかお前のどちらかでも生き残れる策を練ろう…!!」
とジェシカが説得するかのような口調で言う。
その声を聴いたボマーは、
「ハッキリ言って生き残る自信はない。断言しちゃう。
だってアンタも前回の大会で一緒に現地監視委員やった時に見たでしょ?
クローレ・プルシェンコのあの奇妙な能力を。
死なない相手を殺すことは不可能。
それにシャロンのバカみたいな強さも仕事で見てる。
ルビーとマリアもまともに戦って勝てる相手じゃない。」
とねっとりした口調で言う。
それを聞くジェシカは、認めなくてはいけない事実を突きつけられて険しい顔になる。
しかしその直後ボマーは本性を現したかのゲス顔で、
「ジェシカ、あたしがただで死ぬような女じゃないことをアンタが一番知っているはず。
どうせ殺られるなら大きな花火をあげてやろうじゃない。
アンタの最強のトラップとあたしの特大の爆弾で街ごと滅ぼすハイパーテロやっちゃおうぜ!!」
と低く悍ましい言葉を吐いた。
それを聞いたジェシカは眉が上がり笑顔を見せて、自分のグラスにワインを注ぐ。
「お前はやっぱり最高だな!!
ああ、やってやろうぜ、爆弾娘!!」
そういうと高らかにグラスを挙げた。




