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【休載中】イノセントワールド  作者: 泉水遊馬
Chapter 2
14/121

シウダー・フアレス-6

「ではまず…なぜ私とカスミが落ち合うことを知っていた?」

ルビーが最初の疑問をぶつける。

明らかにカスミと自分を選んでスカウトをかけてきているからだ。

『ああ、そんなの簡単よ。あなたたちが恋仲で必ずこのフアレスで事前に会うことなんて誰だって予測できるわ。

私はあなたたちの事は何でも知っているのよ。何でもね。』

自信ありげに答えるリンにルビーは、

「例えば?私たちの何を知っている?

誰も知らないことを言ってみて。何でも知っているんでしよ?」

とさらに挑発的に問い返す。

『そうね…G…てかもうカスミちゃんって呼んでもいい?

カスミちゃんのお家の草場流剣術。

4つの奥義と様々な型が存在する。

多くの型は時代と共に進化し、結果的に実践で使えるのは26。

草創期の頃にはなかった二刀流の型もいくつか加わっているのよね。

そんな草場流には仕事着が二種類ある。防弾性の生地を使ったスーツ。

そして同じ生地を使った隠密用の戦闘服。

でもカスミちゃんはスーツはまったく着ない。

戦闘服しか着ない理由がある。そうよね?カスミちゃん。

カスミちゃんはボインちゃんだからスーツだとそれが目立つ。

だからワンサイズ上の戦闘服で体のラインを隠している。

これは普段着でも同じ。

私的にはうらやましい話だけど、カスミちゃんにはコンプレックスなのね。』

カスミの秘密をシレっと暴露する。

「そうなの?」

ルビーがちょっと笑顔でカスミに確認する。

「いや…まあ…うん…。」

と顔を赤らめてカスミは答えた。

挿絵(By みてみん)

さらにリンは続ける。

『ルビーローズちゃんは…とんでもない大物を暗殺している。

これがどれだけのトップシークレットかは…わかるわよね?』

この言葉にルビーの顔色が変わる。

それだけの極秘情報をリンが握っていると確信せずにはいられない。

『それからルビーローズちゃんはかなり優秀な子だった様ね。

軍の養成所では入隊後すぐにトップの成績で飛び級で前線に配属。

銃の腕はさることながら格闘技にも精通。その小さくて華奢な体で屈強な男たちを訓練で投げ飛ばしまくってた。クールね!

そりゃ、アンドロメダからスカウトが来るのは当然。

そのオファーを受けるきっかけがイギリス特殊部隊をやめた理由にある。

かなりのトラウマになってるようね。

あのイギリス軍が参戦した北欧内戦のコペンハーゲン事件はルビーローズちゃんの親友…キャリーちゃんだったけ?戦闘中の爆発で首だけになっちゃった。

なんならその時のイギリス側のカメラ映像を提示してもいいけど?

でも見たくないわよね。』

ルビーの顔が怒りの表情に変わり、デリカシーを感じさせないリンに、

「あの時の映像を持っているの!?悪趣味ねッ!!」

と悪態を投げる。

挿絵(By みてみん)

『貴女が話せと言ったのよ、ルビーさん。』

と、アナが口を挟む。

一瞬にして我に返ったルビーは昔の辛い出来事をぶり返されて、感情的になり冷静さを失ったことに自分を責めた。常にこちらが主導で進めなければならない。

「そうね。今の発言は撤回するわ。ごめんなさい、リンさん。」

必死に自分を取り戻すルビー。

『あら、いいのよ。

わたしの商売柄そんな言葉ぐらいで傷ついたりしないわ。

さ、次の質問は?』

リンが余裕の声色で応答する。自分の感情的な一言で主導権が平らになり、むしろ次の質問が駆け引きのカギを握っているとルビーは危機感を覚え、慎重な質問の選択に迫られていた。

だがイギリス軍の極秘映像を手に入るような人間なら、アンドロメダのシステムにハッキングすることぐらい可能かもしれないというひとつの疑念が払拭される。

ルビーは質問の順番を変え、最後に聞くはずだったものに前倒す。

「貴女たちと協力する私たちのメリットは?」

と、核心へと一気に突っ込んだ。

『頭のいい人ね、ルビーローズちゃん。

現状の立ち位置を把握している。

やっぱりあなたたちをチョイスしてよかったわ。』

リンが楽しそうに言う。

「イヤホン外すわよ。」

ルビーが低い声で迅速な返答をうながす。

『まあ、聞いてよ、ルビーローズちゃん。

あなたが次に聞きたかったのは、そのイヤホンや監視カメラの件。

こちらの手の内を探りたかった。もっと言えばそれが自分たちにとって有益な物か判断の材料にしたかった。

でも自らの弱い部分を露呈してしまったために結論、つまり二人が生き残ることに繋がるのかを先に聞かなくてはいけなくなった。長い質疑になるほどパワーバランスが我々に傾くと悟ったから。

どう?ルビーローズちゃん?』

リンが言ったことのすべてがルビーの思惑通り。

次の言葉を失うルビーにリンは、

『心配しなくてもある程度の手の内は見せる。

こちらは説得している立場。交渉をしているわけではない。

だからその質問には答える。

あなたたちのメリットは、その胸元に入れられたマイクロチップを取ってあげる。わたしがね。

どう?話を続ける気になったでしょう?』

と、核心を口にした。

『取れるの?』

カスミが驚いた声を出す。

そんなカスミを制してルビーがリンに迫る。

『いい加減な事を言わないで!!貴女が取るですって!?

そりゃ無理やりナイフでえぐれば取れるでしょうけどそのあとは?

すぐに捕まって殺されるわ。

簡単に取れるなら苦労しないわよ‼』

当然の反応である。アンドロメダの科学と技術が集約された代物だ。

アンドロメダの怖さを一番知るルビーだけに受け入れられない話である。

しかしそこにアナが加わる。

『それが取れるの、ルビーさん。

もちろんリンがひとりで取るわけじゃない。本人の協力も必要。

現にリンは取った。私が手伝った。現実の話よ。

まあ、かなりリスクはあるけど、私はそれを目の当たりした。

疑うのは当然だけど、信じてほしい。』

アナの優しい訴えにルビーは再び言葉を失いジレンマが襲う。

そこにカスミが口を出す。

「ねえ、リンさん、アナさん。

なんでわたしたちにそんな話をするの?

それなら二人でチップを取って逃げればいいんじゃない?」

カスミのまっすぐな疑問にリンの声が高くなる。

『そう!カスミちゃん!

本当の話はそこ!やっとスタート地点にたどり着いたわ!

このまま逃走しても、追手が来てすぐに捕獲される。

だから大会中に死んだように見せかける必要があるわけ。

それに少しやらなきゃいきけない事もあるし。

そうなるとある程度の時間を生き抜く戦力が必須。

だからあなたたちを選んだの。ここまではいい?』

沈黙での了承をするしかない渋い顔のルビー。

対照的にカスミは好奇心にあふれた表情をしている。

『オーケー、続けるわね。

さっきルビーローズちゃんがカスミちゃんに言ったわよね。

クローレとシザーハンズ以外はモブだって。

その通り!

あとこの二人が殺し合うシチュエーションになればなんとかなるかもって。

その通り!

まさに的を得た分析よルビーローズちゃん!

漠然とした思案の中でしっかり状況を判断している!

最高よ、ルビーローズちゃん!』

ひとりテンションを上げるリンに、

「ルビーでいいわ。」

と敬称不要を伝えるルビー。なんとなく不快感とわずらわしさとうっとおしさを感じていた。

『おお、距離が縮まってきたわねルビー!

じゃあ、ここからはわたしの状況分析を話すわ。

確かにクローレとシザーは抜けて強い。

ただルビーとカスミちゃん。

そしてクイン・ハーデン。この女はヤバイわよ。

現役のグリンベレー隊員だもの。

陸軍の歩兵200人に相当する戦力を、グリンベレーの隊員一人が保有しているって言われるぐらいだもの。

もうひとり挙げるならマリア・ハインツ・ゲッペス。

アンドロメダの軍隊で一師団の隊長に任命されるほどの腕前。

ルビーもよく知ってるわよね?

わたし的はこの4人はけっしてモブではない。

わたしが二人を選んだのはその強さと性格。

そして何より裏切らない。だって二人で一緒に帰るんでしょ?

だからこの後で話すけど、いろいろ策がある中であなたたちは必ずやり遂げてくれる。

その一緒の中にわたしとアナも混ぜてよ、ね?ルビー?カスミちゃん?』

ルビーは、リンの言葉を聞きながら彼女が情報戦のプロだと確信する。

なぜならこの世界ではルビーが通称であり、ルビー・ローズという本名は公表していない。

同じくカスミもコードネームのGが通称である。

さらに言えば同じアンドロメダから派遣されたマリアのフルネームも言ってみせた。

アンドロメダの個人情報はサイバーセキュリティのトップ項目である。

「いいわ。続けて。」

とルビーがリンに促す。

マイクロチップを取りだせる件はまだ信用できないが、彼女の話を聞いてみたいという思いが強くなっていた。

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