シウダー・フアレス-5
7/25 PM19:30
高台から街を眺めながら二人で今後の作戦を考える。
「大会開始の6時間前までにはホテルに戻らくちゃいけない。
だから実質あと1日半しかない。」
ルビーが遠い目をして呟く。
「その時間にできること…か…。」
霞も思案のポーズに入る。
「よし!」
と、ルビーが笑顔で言う。
期待大の表情で次の言葉を待つ霞。
「今夜はぐっすり寝よう。」
ルビーはそういうとニコッと笑った。
「え?あ…うん。」
とりあえず返事をする霞。
「そして明日から歩くわよ。
この街をくまなく歩くの。隅から隅までね。」
ルビーがそう続ける。
「探索?」
霞がルビーの顔を覗き込んで聞く。
「そう。探索よ!なにか見つかるかも。
二人で帰れる手掛かりがね!」
ルビーのその言葉に霞の顔が満面の笑みに変わる。
「さ、今夜は私の部屋に泊まって!
いっぱい可愛がってあ・げ・る❤」
ルビーの腕にしがみつく霞。
しかし、
「部屋に監視カメラついてるよね?」
と怪訝な表情に変わる。
「じゃあ、たっぷり見せつけてやろう。」
とルビーはイタズラな笑みで言った。
そんな会話で盛り上がる二人。さっきまで抱えていた不安が一緒にいるだけで無くなる。
すると突然、霞のポケットからワーワーと音が聞こえてきた。
「カスミ、ポケットに何入れてるの?」
ルビーが不思議顔で聞く。
「あ。」
何かを思い出したかのようにポケットからワイヤレスイヤホンを取り出した。
「なんか知らない女の人に渡されたの…。」
霞の言葉を聞いてルビーが片方のイヤホンを装着した。
『はーい、ルビーローズちゃん。
もう一個を隣のかわいい彼女にも付けるように言って。
あ、ちゃんと髪の毛で隠してね。』
聞こえてきた女の声にルビーは霞の耳にサッとはめて周囲に注意を払う。
『さすがアンドロメダの女性部門人気ナンバーワン。
状況がわかってる。
あ、男性部門はイケメンが多いから目移りしちゃうのよねえ。』
そんな女の言葉には答えず、
「どこで見ているの!?」
とルビーが強い口調で威嚇する。
一方、状況が読めない霞はキョトンである。
『あなたたちの後ろにある街灯にカメラがついてるでしょ?
そこから二人の熱いラブストーリーを見させてもらったわ。
ポケットのイヤホンから会話も聞こえてきて、感動してちょっと泣いちゃったじゃない。』
それを聞いて霞が、
「やっぱりわたしの落とし物じゃなかった!」
と頬を膨らませながらプンプン顔。
「わざとカスミに持たせるように渡したのよ。」
とルビーは言いながら振り返り街灯のカメラを確認する。
「あれってアンドロメダのカメラよ。
まさかアンドロメダのシステムをハッキングしてるの?
いや…それはあり得ない。絶対に不可能よ。
貴女いったい何者?」
ルビーが怪訝な表情で女に問う。
『これは失礼。自己紹介が遅れまして。
お互いを知ることで信頼関係が生まれる。これ常識よね。
はじめましてルビーローズちゃん。
さっきはどうもコードネームGこと草場霞ちゃん
私の名前はリン。あなたたちと同じ参加者。
リストで名前ぐらいは見てるでしょ?
どうぞよろしく。』
甘ったるい声で正体を晒すリン。
「ああ、中国反政府軍のリーダー。
肩書きは革命家だっけ?
今はテロリストをそう呼ぶのね。」
ルビーが呟く。
『あら、プロフィールまで読んでくれたなんて光栄だわ。
あとこの会話にはもうひとり同じ参加者のアナも加わっているからご了承を。』
と付け加えた。
ルビーとリンの会話に沈黙しかできない霞。
「いろいろ聞きたいことはあるけど…まずそちらの用件を伺おうかしら。」
ルビーがあきらかに挑発する口調で問う。
「警戒心を解かずにこちらの腹を探る。
さすがね、ルビーローズちゃん。銃の腕前だけじゃなく交渉事にも精通している。元イギリス特殊部隊ってのはいろいろできるのね。」
先程からのリンの口調や言葉に霞は何とも言えないイライラを感じていた。
そして爆発する。
「用件はなんですかっ!!」
と柄にもなく大きな声で恫喝すると、
『幼く見えて普段はおっとりしているのに情熱的な一面ももつ。
最近の裏社会を賑わせている超一流の暗殺者G。
銃やライフルなんて使わずに刀一本で仕事を終わらせる…素敵よ。
わたしはあなたのファンなの、本当よ。』
再びリンが霞をイラつかせる。
するともうひとりの参加者アナが、
『リン。いい加減になさい。
貴女の悪い癖よ。いい加減早く話を進めなさい!』
と艶っぽい声で叱る。しかし、
『ああ…アナスタシア…。我々と違い表の社会で生きる殺戮の女神。
密猟者から動物を守る慈悲の心と、容赦なくそいつらを殺す無慈悲さ。
あなたほどの絶世の美女から殺されるならきっと密猟者も本望だわ…。』
とまったくききめががない。
「そろそろこのイヤホンを捨ててもいいかしら?」
ルビーがキレ気味に言い放つ。
焦ったようにリンが話し出す。
『あ、ごめんなさい。本当に私ったら自分に酔ってしまうの。
天才が故の言動…自分が嫌になるわ。
では単刀直入に…二人のかわいいお嬢さん…私たちと手を組まない?』
やっと本題に戻った会話。
霞は驚いた顔。
ルビーはある程度の予測はしていた表情。
一時の間を開けて、
「用件は理解した。これからこちらからいろいろと質問させていただく。
少しでもはぐらかしたりこちらが嘘と判断したり横道にそれたら即刻イヤホンをアンドロメダに渡して貴女の事を告発する。通信機器を持ち込んでいるってね。
でもこちらが納得できるお話しならば前向きに検討します。
よろしい、天才さん?」
とルビーが低い声で言った。
『了解したわ…。
それぐらいのリスクは承知であなたたちを誘ってるわけだし。
何でも聞いてちょうだい。
ただこれはお互いにいい話になるはずよ。』
リンは静かに返事をした。




