バトルロイヤル 1 チャーリーの告白
18:05
シウダー・フアレス地下 管理本部
チャーリー・ベロンの高笑いが響く管理本部。
「おい、みんな見たかい?
あのフェイ・リンの顔!!
まさかフェニックスのお嬢さんに裏切られるなんて思ってもいなかっただろうなぁ!!
そして最後はクソの沼にドボン…傑作すぎてしかたがないな!
まあ、あのゴキブリみたいなクソ女にはお似合いの最期だ。」
笑いが止まらないチャーリーの姿を見るエリア管理者たちの表情は複雑だった。
この大会が始まる前から、リンとアナの関係性は資料にもあり、まさかの事態としかとれない光景を目の当たりにしたのである。
もちろん最後の勝者は一人であるのだが、アナがリンを殺す状況など誰も予想だにしていなかった。
この大会の本当の恐ろしさを体感したのだ。
そんな空気を察したチャーリーが一つ咳ばらいをして話始める。
「アナスタシア・フェニックスこそが、親父が用意したジョーカーだよ。」
チャーリーの言葉に一同理解ができない。するとひとりのエリア管理者が、
「ジョーカー様ならD 地区で待機してますが…。」
と、執行部より派遣されたジョーカーの現在位置を提言した。
「違う!!あの爺さんのことじゃない!!
ああ、怒鳴ってすまない。僕の言い方が悪かった。
ジョーカーと言ったら、みんなあっちを連想してしまうね。
つまりアナスタシアは、この大会で唯一、マイクロチップを装着されていないプレイヤーなんだ。
ここまで言えばわかるよね?」
チャーリーの言葉に何人かのエリア管理者がなにかを悟った表情をする。
しかし確信にまで至ってはいない。
チャーリーはコーヒーで口を湿らせて続ける。
「アナスタシアの現在位置は純粋に支給した端末から送られてきている。
だいたいフェイ・リンも得意げにアンドロメダの包囲網をハッキングしていると自慢げにしているが、全部お見通し。
逆にアナスタシアを安全な場所へと常に誘導してくれていたわけだ。
滑稽だろ?
ただ、さすがにフェイ・リンという女は頭は切れる。
僕ほどじゃないが天才と言ってもいいだろう。
あのワイヤレスイヤホンだけは傍受できなかった。
だが、たいした問題ではない。
まあ、クローレやシャロンとエンカウントした時はちょっと焦ったけどね。
ここまでみんなに黙っていたのは、モチベーションを下げたくなかったからなんだ。
だって、これだけの大規模な大会の優勝者を、こちらで操作している作業なんてやりたくないだろう?」
この告白に、すべてのエリア管理者が状況を察した。
今回の大会はこれまでと違いプレイヤーの人数が少ない。
だからギャンブル側の参加者のオッズが分散されにくく上位人気とそれ以外の差が大きくなることは目に見えていた。
クローレが優勝した場合、すでに1倍を切っている状態であるが、2倍保証というアンドロメダ側のサービスで補填をしなくてはならない。
一日でアメリカの国家予算並みの金が動くこの大会で、大きな損失になりかねない状況への対応として、10回目にして初めて勝利者の操作をアンドロメダ側は行っているのである。
「親父…いやCEOがアナスタシアにご執心でね。
まあ、あんだけの絶世の美女にはなかなかお目にはかかれない。
しかし、あのお嬢さんもお淑やかに見えてなかなかのクソビッチだよ。
動物保護団体の運営者ってのが肩書だが、なんにせよ密猟者だの人間を殺しまくってる。
その運営資金を色仕掛けでCEOから集ってるんだよ。」
と言って一気にコーヒーを飲み干した。
だが、エリア管理者たちは、だからこそなぜアナがプレイヤーとして参加しているのかが理解できない。
するとチャーリーが立ち上がり近くにいた女性スタッフの髪を優しく触り、
「欲深い女は怖いもんだよ。とうとうこの大会の優勝賞金にまで手を伸ばしやがった。
ただ、CEOもクローレに優勝されると困る。だからと言っていなければ今回の大会は成功しない。
なんせ女性限定大会だ。前回覇者が女性だったからこそ思いついた大会形式。
クローレが出場してこそ意味がある大会なんだ。
そしてCEOは思いついた。アナスタシアを優勝させれば、アンドロメダ側の収益もでかい。
さらに寵愛するアナスタシアに媚を売れるってね。」
と、顔を赤らめる女性の髪から頬に優しく手を添えながら言った。
「あとは時間までエリア外で隠れていてくれればいい。
最終マッチアップは同士討ちに見せかけた演出にするから、生き残ったアナスタシアが優勝者だ。
ただ、さすがにひとりも殺さなかった人間が優勝者とはカッコがつかない。
だからライブ配信無しでフェイ・リンを殺させた。
仮にもアジアじゃビッグネームのテロリストだ。
それなりに説得力をもつ結果になるだろう。
そういう事だから、ここからが僕たちの本当の勝負となる。
みんな、いろいろと考えることはあると思う。
でも我が社の社員としての誇りを忘れずあと6時間頑張ってくれ。
いいね?
さあ、とっととフェイ・リンの死体を回収するように現地監視員に指示してくれ。」
とチャーリーは言ってエリア管理者の顔を見まわし反応を見ている。
するとひとりの女性エリア管理者が、
「それではシャロンやルビー、マリアは捨て駒ですか?」
と怪訝な顔でチャーリーに詰め寄る。
すかさずチャーリーは女性に近づき、
「きみは仲間想いなんだね。優しくて勇気がある。
素晴らしい女性だ。
たしかに弊社に所属する彼女たちを犠牲にするのは心が痛い。
だが…だからこそみんなで団結して乗り越えなければならないんだ。
その先にきっと輝かしい未来が待っているだろう。
だから、そんな顔せず、協力しておくれ。」
と優しく説得する。
そして大きな声で、
「クローレとクインのバトルはまだ終わらないのか?
各配信カメラを存分に使っていい絵を撮ってくれ!!
ここからが本番だぞ!!」
とフロア全体に響かせる鼓舞をした。
このチャーリーの言葉をフロアの隅で聞いていた女がいた。
カスミのコンシェルジュであるクロエだ。
怒りで体が震えてくる。
そして彼女はコンシェルジュ会議には参加せず姿を消した。




