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51.チョコがバレる

 やっちまった……。


 いや、ヤッちまったと言うべきか。

 あれ、これデジャヴ?


 気付けば俺がブチ破った窓からはすっかり傾いた西日が差し込んでいて、室内を赤く染めている。

 その夕陽に明るく照らされたベッドの上。

 潰されたヒキガエルのように、うつぶせでビクビクと痙攣するアンズの尻を軽く叩く。


「お゛っ♡」


 ヒトの身体から採取可能なありとあらゆる体液にまみれた女性の口から漏れ出た汚い喘ぎ声に、俺の聖剣がエクスカリバー。

 さすがに節操なさすぎやしませんか、我が愚息よ。

 なんか脱童貞してから、そっち方面のブレーキがぶっ壊れてる気がする。

 これは自制しないと取り返しのつかないことになりかねない。


 いやもうだいぶ取り返しのつかない状況になってるんですけどね。


 そう。

 俺は今、非常にマズい状況に陥っている。

 レイアと和解してお互いの愛を確かめ合った次の日に、他の女性と不貞を働く。

 もしこの事実がレイアに知られてみろ。


 飛ぶぞ? 俺の首が。


 あんだけ好き好き言って新しい命を作ろうとしてたのに、その翌日に尊い俺という命が世界から抹消されるとか誠にご勘弁願いたい。

 1つ増えて1つ減ったから±0だね☆

 言うとる場合か。


 ほらアンズ、そんな風に気を失ってないで早く起きてくれ。

 俺だけじゃなくてお前までレイアに殺されかねないんだぞ。

 それおっき~ろ! あそっれ、おっき~ろ!!(ベシベシベシ)


「ぉ゛っ? お゛っ♡ ほぉ~~~♡♡♡」


 うお、漏らしたコイツ。汚いにも程がある。

 下手に刺激するとかえって良くないな。このままそっとしておこう。

 さて、どうしようか。

 汚れたベッドの片づけをして証拠隠滅しようと思ったけど、アンズが邪魔でできないしなぁ。


 ……待てよ?

 そもそもレイアは王太子の対応してるんだから、こっちまで来るわけないじゃん?

 ここで起こった出来事をレイアは知らない。

 俺はレイアに言わないし、アンズだって自分の命が惜しいんだ。わざわざレイアにチクったりしないだろう。


 つまり、ここでの情事がレイアにバレることはない!


 そうだよ、俺はいったい何を恐れていたんだ。

 アンズは救出した。

 ジェームズは捕縛した。


 それだけレイアに伝えればいいんだ。

 胸を張って凱旋すればいいじゃないかそうジャマイカ。

 ところでジェームズはどうしたっけ。


「うっ……ぐぅぅ……!」


 あらジェームズさん、そんなところでどうしたの。

 床に転がって嗚咽を漏らすジェームズは、水溜りが出来るくらいに涙を流してる。

 そんだけ床をビショビショにしたら、下の階に雨漏りしそう。


 俺、そんなに強く股間を蹴ったかなぁ?

 半日以上経ってるんだし、そろそろ立って歩けるようになってて良くない?


「なぜです……、なぜ私ではなく貴方なんですか、タナベ令息!」


 急にいったい何の話をしてるんだこのロン毛。


「私は伯爵家の人間として、貴族として、自分磨きに徹してきました!

 女性の扱いに長け、男として魅力的であるように、自己研鑽を欠かさなかった!

 『聖騎士』となるのはセドリックでも、ユードリックでもなく、私であるべきです!

 なのにどうして、学院で底辺、貴族としても最底辺で何の努力もしていない貴方なんかが『聖女』に選ばれるんですか!」


 ……なるほど。

 そんなに『聖騎士』とやらになりたかったのかね、ジェームズくん。


「そうです! 『聖騎士』に最も相応しいのは私です!

 本来なら私がなれるはずだった! だというのにポッと出の貴方に奪われたんです!」


 う~ん、それはどうだろうか?

 仮に俺がいなかったとしても、アンズがジェームズを選ぶとは思えない。

 普通にセドリックやユーリとの方が仲良かったしなぁ。


 それにしたって、どうしてそんなに『聖騎士』になりたいのやら。

 国と聖女の為に生涯を捧げるんだぞ? 対価として得られるのは多少の名誉くらい。

 そんなに良い職業なもんかね。

 セドリックみたいな根っからのマジメ君しか向いてないんじゃないの。

 特にジェームズみたいな権力と欲に飢えてる人間はさ。


 ………………はて、そういえばジェームズくん。

 キミのお父さんは王国騎士団の前団長だったね。


「そうですが?」


 セドリックは父の役職である宰相の職を継ぎたがっていたけど、キミは騎士団長の座を継ぎたいとは思わないんだねぇ?


「……何が言いたいんです?」


 まあジェームズくんじゃあ無理か!

 なんせ大して努力もしていない最底辺な貧乏貴族である俺に、ステゴロで勝てないくらいひ弱なんだからねぇ!

 だいたい騎士の訓練学校とか貴族学院の騎士科とかじゃなくてアンズたちと同じ普通科に通ってる時点で、騎士団に入って成り上がろうなんて微塵も思ってないってことだもんね!


「それが、いったい何だと言うんですか!」


 騎士団長の息子が騎士として不適格なんて、周りからは知られたくないよねぇ?

 仮に騎士団に入れたとして、父親と違って無能だなんて比較されてレッテル貼りされたんじゃ、そのちっぽけな自尊心がボロボロになっちゃうもんねぇ?

 それだったら、最初から騎士なんて興味ありませんよーって素振りみせておけば傷付かないもんねぇ?


 そんな中で降って湧いた『聖騎士』候補。

 すごく名誉な職業に就ければ自分に箔もつくし、親からも褒められるし、周りを見返せるし、さぞ素晴らしいことだろうねぇ。


「だから、何が言いたいんですか! ハッキリ言いなさい!」


 アンズはお前の立身出世の為の道具じゃねえんだぞ。


 周りを見返したい。

 親から認められたい。

 自分の自尊心を満たしたい。


 そんなしょうもない理由で女に手を出そうとか、最低だなお前。

 だから俺はお前のことが嫌いなんだよ。


 利己的で打算的。自分のことしか考えていない。

 お前よりもセドリックの方が100倍イイ男だね。ウホッ。


 まあ、そんなTHE・貴族様なお前じゃアンズに振り向いてもらうなんて一生かかっても無理だ。

 おとなしく諦めて、その優男ぶりに惚れてくれる女の下にでも帰るんだな。


「キサマァァァァァァァァ!!」


 おやおや、そんな風に掴みかかってきていいのかい?

 髪の毛振り乱して、貞子かな?

 そんなあなたに必殺・金的蹴り上げ!


「おごぉおおおおおおおおおお!?」


 おいおい、同じ轍は二度も踏まないんじゃなかったのかい?

 仕方ないよな。頭に血がのぼってる状態だったもんな。

 やっぱり騎士とか向いてないよお前。

 親の期待とか周りの目なんか気にせず、自分の人生を歩んだ方が良いんじゃないか?


 悶絶してるジェームズを縄で縛る。

 なんで縄を持ってるのかって?

 まぁ、そういうプレイをしたからですよ。はい。


「………………やっぱりアンタ、そういう趣味なのね」


 誰が男色家じゃい!?

 おや、おはようアンズ。ちょっと待ってね、今この変質者を縛り上げてる途中だから。


「全裸で男を縛ってるアンタの方がよっぽど変質者よ」


 なんで全裸かって、そりゃさっきまでヤることヤってたしね。

 でも俺は誓ってジェームズに興奮したり、そういう事をシようとしてるんじゃない。

 あくまで誘拐犯をマジメに捕縛しているだけなんだ。

 分かってくれるだろ? レイア。


「い~や、お前は立派な変質者だ」


 またまた~、俺のこと好きなくせにそんなゴミクズを見るような目で見なくても~。

 ………………レイア、さん?


「ずいぶんお楽しみだったな? 変質者」


 アイエエエエ! レイア!? レイアナンデ!?

 なんでここにいるの!? 王太子殿下は!?

 ち、違うんだレイア! 何か重大な勘違いをしている!


「御託はいい。死ぬが良い」


 お、お助けぇぇぇぇぇぇぇぇ………………!!

 GW明けの仕事がツラすぎて5月病です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] と、おちょくるレイアさんであった。 だってねぇ? アンズとは手打ち済み。 シェアする事で話は付いてるんだから、 一番を貰った以上2番を取られて文句言う訳に行くまい。 [一言] とはいえ、…
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