46.転生魔王の悪巧み 其の二
そうだ、聖女を孕まそう。
我は妙案を思い付いた。
我が現在、器としているこのジェームズとかいう貧弱な男。
この軟弱な身体では世界征服など成し遂げることは出来ぬ。
いったいどうやって器を強化するか。それが目下の課題となる。
………………いや、違う。
いくら魔王の素質があると言っても、そこまで才能に満ち溢れているわけではない。
才能の限界まで強化したとしても、タカが知れている。
ではどうするのか。
新しい器を作ってしまえば良い。
才能に溢れた器を。
ジェームズの記憶を探す。
どうやらコヤツは『聖女』とやらの婚約者候補であるらしい。
聖女というのは、さっき我のチンコを救った美女である。
あの聖女が使っていた癒しの力には見覚えがある。
我を討伐した勇者の1人が持っていた神器『奇跡の錫杖』。
そう、神がヒトに与えた奇跡の力を、あの聖女は持っているのだ。
なぜ神の力をヒトごときが所有しているのかは分からぬ。
しかし分かるのは、あの忌々しい神の力を我が得れば、世界征服も可能であるということだ。
ヒトを守る為に神が遺した力を、ヒトを滅ぼす為に使う。
素晴らしいではないか?
魔王の素質を持つジェームズと、神の力を持つ聖女の間に子を成す。
そして魔王としての教育を施し、我の魂を移す。
これを何世代も重ねるのだ。
より才能を持つ者同士を掛け合わせ、次代の魔王を創る。
いくらヒトが魔族に比べて弱いと言えど、いずれは強い個体を産み出すことが出来るだろう。
よし、そうと決まればさっそく行動に移そう。
まずは婚約"候補"から、正統な婚約者にならなければ。
その為に、この王国の権力者たる王族に媚を売らなくてはな。
『聖女』というのは国にとっても大切な存在。
その婚約者選びに王家が関わっていないはずがない。
表向きには聖女の気持ちを尊重するとされている。
しかし最終的には、国の最大利益となる人材が選定されるのは間違いないのだ。
そしてその選定に王家が関わっていないはずがない。
王家の一員であり同じ学院の生徒である王太子に媚を売る。
そうすれば、我が聖女の婚約者となる可能性はグッと高まるだろう。
幸いにも、最近ジェームズは自分の派閥の長であり婚約者候補のライバルでもある侯爵令息セドリックを見限って王太子派閥にすり寄っていたようだし、さっそく今から王太子の元へ馳せ参じるとしよう。
お、いたいた王太子殿下。
いや~、今日もお美しい! 気品に満ち溢れた立ち居住まい、惚れ惚れとします!
そのお姿を一目見れば、世の女性はすべて貴方様の虜となるでしょう!
ささ、どうぞお座りください! 食事は私めがお運びいたしますので!
………………なんだ。言いたいことがあるなら言え。
我だってなぁ。
我だってなぁ!
こんな年端もいかぬガキ相手に媚び諂いたくないんだよぉ!
でも仕方なかろう!? 今の我は何の力も持たぬ小童!
世界を制する力を再び手に入れるためには、どうにかしてこの王族に気に入られなければならぬのだ!
野蛮民族だと思われているが、魔族にだって政治くらいあった。
魔王としての地位を確立する前には、こうした有力者へのご機嫌伺いだってやったもんだ。
耐えろ、耐えるんだ我!
お世辞に酔いしれるこのクソボケ王太子に、何としても口利きしてもらうのだ!
それが聖女を手に入れる最短ルートなんだ!
しかしこの王太子と食事の席を共にしているレイアとかいう少女。
この少女が持つ魔力、どこかで知っている気が────
「近寄るんじゃねえよ、人間のカスが」
お、王太子がビンタされたぁ!?
で、殿下! しっかりしてください!
壁にめり込んだ王太子を救出すると、王太子は去っていった少女の後を追いかける。
我も慌てて追いかける。
するとそこには、我の覚醒直後に金的蹴りを喰らわせた憎き宿敵!
王太子から逃げようとする男の前に立ち塞がれば、やはり我の股間を狙って足を振り上げてくる。
バカめ! 同じ手を二度も喰らうか!
さあおとなしく捕まれ! そして我の好感度稼ぎになれ!
「ぐふぅうううううううううう!?」
な、なんだ!? 今度は腹が抉れるような痛みが!?
どこかで感じたことがあるような痛みだ! だが一体どこで!?
「レイア! 話だけでも聞いてくれ! レイアァァァァァァァァァァァ!!」
だ、だれか……たひゅけて………………。




