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33.チョコを許す

そういえばこの馬車はどこに向かっているんだろうか。リュートは訝しんだ。

 でもそうしたらボブがやってきてこう言うんだ。「じゃあいったい誰がママのミートパイを焼くんだ」ってね。


 ところでレイアさん。なぜ俺の腕に抱きついていらっしゃるので? いや関節キメないでくれるだけマシなんだけどさ。


「私だって胸あるし……!」


 聞こえてた? ねえ俺と《聖剣》の会話聞こえてたの?


「なんかリュートが無駄に光ってるのは見えた」

「用を足しに行ったら光り輝くって何がしたかったの? それともナニしてたの?」


 聞かないでくれ。思い出したら恥ずかしくなってくるから。

 血筋がどうたらの話はレイアとアンズにした方が良いのかなぁ。でもこんな荒唐無稽な話、信じてくれるもんかね。

 まあとりあえず後回しにしておくか。


 で、レイアが「逃げちゃえばいい」って言ってたけど、どこに向かってるのさ。周りが暗いからよく分からんのだよ。


「あぁ、もうすぐ見えてくるんじゃないか?」


 いやだから暗いから見えんのよ。


「ほら見えたわよ」


 だから何が見えたって──


「坊っちゃまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 イヤァァァァァァ! 窓に! 窓に張り付いてる変質者がぁぁぁぁぁぁ!

 ユードリック! もっとスピードあげて! 早く、速くぅ!


「かしこまりました!」


 ガタンと大きな振動、激しい上下運動。俺の頭を胸元に抱き締めてきたアンズのおっぱいがポヨンポヨン。俺の膝上に乗ってきたレイアの柔らかいお尻がポインポイン。


「きゃー☆ こわーい☆」

「いやん♡ リュート、あんっ♡ すっごくはげしい♡」


 エロい声だすのやめてくれません? 俺の聖剣が火を噴いてしまうぞ。


「お帰りなさいませ坊っちゃまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 イヤダァァァァ! 変質者がついてくるんですけどぉぉぉぉぉ!!

 ………………いや、よく見たらこの人あれだ。


 俺の家の執事長だわ。




---




 どうやら馬車は俺の実家である王国南部の男爵領に向かっていたらしい。


「うぅ……、ぼ、坊っちゃま。坊っちゃまのご帰還を、ジイは、ジイは何より心待ちにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 うん、分かった。分かったから落ち着いてくれジイさん。

 もう年寄りなんだから白目剥いてビクンビクン震えるのやめてくれ。発作か心臓麻痺かと思うから。洒落にならんから。


 ちなみにこの執事長、本名が『ジイ』だ。

 爺さん呼ばわりしてるわけではなく、本名のジイさんとして読んでいる。


 じいちゃんが若い頃から男爵家に仕えてくれている大ベテランで、両親からの信頼も厚い。

 俺も生まれた時からずっとお世話してもらったから、ジイさんには頭が上がらない。


 ……レイアの話によれば、この人が公爵家からの援助金を着服していたらしいんだけど。

 そんな人じゃないと思うし、俺に会って号泣してる様子を見ると横領してる風には見えないんだよなぁ。

 メイド長は、まぁ……うん。明らかに分不相応な金の腕輪してたからなぁ。


 馬車をしばらく走らせて到着した村の宿屋で腰を落ち着かせて、ジイさんと話し合うことにしたわけだが。


「久しぶりだな、ジイさん」

「はい。レイアお嬢さまもお元気なようで何よりです」


 顔馴染みのレイアに遅れてアンズとユードリックも挨拶を済ませる。

 レオナルドくんは床に転がってる。さすがに可哀想すぎでは?


「────それでジイさん。公爵家から送られてるはずのお金なんだけどさ」


 さっそくだけど本題に入る。

 ものすごく良い人だし、子供のころお世話になってた人だけど。

 悪い事をしたんだったら、それに応じた処罰をしないといけないからな。

 心苦しい。それでも貴族の端くれとして、断罪させてもらうぞジイよ。




「はい! 大事に貯蓄しております!」




 ………………貯蓄?

 横領とかではなくて?


「もちろんですとも! バッチリ、しっかり、シッポリと! ジイの権限によって誰の手にも渡ることなくそのままそっくり保管しておりますぞ!」


 ……あの、ごめん。

 状況が呑み込めないから、最初から説明してもらってもいいかな?


「坊っちゃまが学院に通われるようになってから公爵家から遣いの人が来られましてな。

 公爵家からの金銭はこの先、男爵家の者が使えないようにしておけと申しつけられました。

 ありがたいことに口止め料として破格の金銭も頂きました」


 ここまではレイアから聞いた話と一緒だ。レオナルドくんが差し向けた間者だったんだろう。


「それを聞いたジイはすべてを理解しました。

 そう! この金銭は坊っちゃまとレイアお嬢さまの結婚資金となるのだと!」


 どうしてそうなったん?


「ジイとしましても、旦那様と奥様の浪費癖には参っておったのです!

 何度苦言を呈しても、何度ビンタを喰らわしてもあるだけの金をすべて使い切ってしまうとはなんと愚かな! ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」


 なんか……ごめんな、ジイさん。いろいろと溜まってたんだな。

 声とリアクション大きいジイさんがこんなに怒ってんの初めて見たわ。


「公爵家もこの現状を知っていたからこそジイに援助金を隠すように言ったのでしょう。

 そして直後に送られてきた坊っちゃまからの手紙!

 『余計な人員を削減して邸宅を売り払え』と! 今まで分不相応に贅沢をしていたご両親を鞭でしばき倒す所業にジイは深く感服いたしました!」


 傍から見たら俺そんな鬼畜なことしてたの?

 父ちゃんと母ちゃん、顔面蒼白でへたり込んでた? 息子に捨てられたと思ってたって?

 いやいやいや、さすがにそこまでは……ねえ?


「しかし援助金は変わらず送られてきます。今使ってはならないお金────つまりは将来、坊っちゃまとレイアお嬢さまが使う為のお金! そうでしょう!?」


 あー、うん。

 まあ、使っちゃいけないのにもらえるお金があったら、とりあえず取って置くしかないよね。


「無能なご両親に代わってご自分たちが将来、民草たちを導いていけるよう先を見据えていらっしゃるとは、素晴らしい!」


 たぶんご本人たち、そこまで考えてないと思うよ。


「あんな生意気で大暴れしていたクソ坊主たちがここまで立派になられたかと思うと、ジイは……、ジイは!!!」


 ちょいちょい口悪いぞこの執事長。

 つまり、ジイさんは公爵家からの遣いをレイアと俺が相談した上で決めたことだと判断したわけだ。

 で、将来的に入り用になるお金まで父ちゃん母ちゃんに取られないよう大事に隠して保管しておいてくれたと。


 おいレイア、どういうことだ。話が違うぞ。

 いや「あっれ~?」じゃなくて。なんでキミたち皆して首を傾げてるのよ。

 レオナルドくんなんか、愕然とした目をしてるよ。あれたぶん猿轡を外したら「なん……だと……!」とか言い出すよきっと。


「それじゃあメイド長は……」

「あの阿婆擦れでしたら援助金に手を付けようとしたのでドラゴンをおびき寄せる罠の生き餌にしましたが」


 あっ(察し)、ふーん。

 何もそこまでしなくても……いや、その前から横領してたしな。

 まあ残当ってことにしておこう。ご冥福をお祈りします。


 つまり、どういうことだってばよ? 助けてアンズさん。


「つまり、送った援助金がただ使われていなかっただけってことよね?」


 おっそうだな。


「レオナルドくんの悪巧みがどうとかじゃなくて、お金がまったく動いてないだけだから公爵家がいくらお金の流れを調べても、そりゃ何も出てこないわけよね」


 だって、流れてないんだから。

 じゃあ何ですか。ただ男爵家が勝手に平民と同じ暮らしを始めただけってことですか。

 貴族にしては変わった趣味だなーって思われてただけってこと?

 俺が今までバイトしたり雑草食ったりと苦労してたのはいったい何だったの?


「………………ずいぶん変わった趣味してるのね? もしかしてドM?」


 ドドドドド! 童貞ちゃうわ!

 いや嘘です童貞です。そんな怖い顔しないで「どこのアバズレに奪われたの」とか言わないで見栄張っただけだから! ちゃんと皆の為に残してあるから!


「レオの悪事を暴いて断罪イベントだーってちょっとワクワクしたんだけどなぁ」


 不満げなレイアお嬢さま。そんな軽いノリで簀巻きにされたんじゃレオナルドくんが可哀想すぎない?


「もういいや。リュートが決めちゃってよ。レオの断罪内容」


 いやいやいやいや。

 まだ10にもならない子どもがやったイタズラだぞ?

 どうせ「お姉さまの婚約者なんかキライ!」とか可愛い理由での犯行だぞ? まあイタズラ内容は可愛くないけど。


 そんな年端もいかない子どもを断罪するなんて俺にはできない!


「ユーリ、レオの猿轡を外して」

「はい」

「──ぷはっ! お前なんか大っ嫌いだバーカ!」


 ブッコロスぞクソガキが。


 ……は!? いかんいかん。危うく殺意の波動に目覚めるところだった。

 殺人犯として本当に地下牢に入るところだったぜ。


 なぁクソガ────レオナルド。

 お前、反省してる?


「………………やりすぎたとは、思ってる」


 お? 意外と殊勝な態度じゃないか。

 ……まあそうか。大好きだったお姉ちゃんからバチクソ怒られたんだろうし、縄で縛られてモノ以下に扱われるなんて、幼気な子どもにはツラすぎる体験だったろうな。


 おいそこ。「リュートに害を成したから極刑でいいんじゃない?」とか言わない。

 レオナルドくんが真っ青な顔色でガチガチ歯を鳴らしてるじゃないか。もうトラウマとかそんなレベルじゃないぞ。可哀想すぎる。俺が気絶してる間に何したんだお前ら。


「な、なんでもします。だからどうか命だけは…………!」


 大丈夫だから! そこまで鬼畜じゃないから! 命とかいらないから!

 ほら、悪いことしたら言う事があっただろ? たった一言、簡単な言葉だから!


「ご、ごめんなさい……」


 うん、許す!


 はい、これでこの話は終わり! 結果的に俺が苦労しただけで実害はほとんどなかったんだし、両親は改心したし、レオナルドくんも謝罪の重要性を学べたし、はい大団円! みんなでお手手を繋いで学院に帰りましょう!


「でももう私たち、学院に戻れないけど?」


 何したのキミたち!?


「ちょっと王太子殿下をぶん殴っただけよ」


 何してくれてんのキミたち!?


「ご主人様を馬鹿にしたジェームズ令息も殴りましたよ」


 それはよくやった。

 じゃなくて!

 どういう経緯でそんなことする事態になるの!?


 いやいい! やっぱり聞きたくない! 聞いたら俺も共犯者にされる!


「共犯者どころか主犯格ですよ、義兄さん」


 なんで!?


「だから言ったじゃん。もう逃げちゃおうぜって」


 嘘だドンドコドォーン!!

某実業家が大好きな社長

「出来ないではなくやらない! なんでも『出来る』と言って引き受けましょう!」


研修生の操作する機械に足を轢かれたボク

「出来ないことは『出来ない』って言ってもらっていいですか???」


 足が痛いよぅ。タンスの角にぶつけたとか比較にならないよぅ。

 これで骨折れてないとか嘘だろちくせぅ。仕事休みたいよぅ。

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[良い点] 面倒臭いから王家と敵対する覚悟で3人とも嫁にもらっちまおう是。 一応、裏事情は話してあげような。 血が呼びあうとか冗談っぽい設定でも可能性は0でもないし、 それ聞かされて揺らぐような結婚…
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