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32.聖剣の昔話 其の三

「なんでもするって言ったよね?」


 (言って)ないです。


「なんでもするって言ったよね?」


 言ってないです。


「言・っ・た・よ・ね?」


 言ってないですぅ!!


 何なのお前、俺を救いに来たって言ってたじゃん! 救ってないよ! むしろ死地に送り込んでるよ!


「ああ、確かに言ったな」


 だよね!? はい実験中止! 男ならちゃんと自分で言ったことは守ってください!


「お前(の血を利用して人類)を救いに来た」


 分かるかぁ!

 だいたいレイアやアンズと子ども作ったからってその子がひいじいちゃんみたいに強くなる保証はないぞ? これ以上勇者の血が薄まったら困るだろ!?


「それなら大丈夫だ。あの3人も勇者の末裔だからな」


 ………………そうなの?


「実験だって言ったろ? お前と同じ勇者の血筋しか引き寄せられないようになってるんだよ」


 なんスかそれ。まさか俺に怪しい薬を飲ませたりしたとか?


「三種の神器が扱えるのは異世界から来た勇者しかいなかった。そういう話はしたよな?」


 あくまでそうかもしれないって可能性があるだけでしょ?

 まさかそんな真偽不明の憶測に基づいて実験したわけ?


「代わりはいくらでもいるから失敗しても良かった」


 もうやだこの人。俺を人間扱いしてほしい。

 だいたい前提からして破綻してるでしょ、その説。

 勇者の子孫は三種の神器を基にした加護を受けていた訳だけど、それでもこの世界の人類にとっては魅力的に見えたんだろ。

 じゃあ三種の神器の力が魅力的に見えたってことも同義だろ。


「ところがどっこい、そうでもなかった」


 なんで分かるのさ。神器を使った実験でもしたわけ?


「【禁忌】の力と神様が諸々ごちゃ混ぜで授けた祝福やら恩恵とじゃ、神器の及ぼす影響なんて大したもんじゃなかったのさ」


 つまり?


「勇者の血に、より濃く神器の力を混ぜてみた。結果は大成功。お前の祖父はそれなりに強い力を受け継いだけど女性の影がチラつくことは少なかったし、お前の父親に至っては貴族の地位目当ての平凡な女しかすり寄ってこなかった」


 遺伝子操作とかジャガイモじゃないんだからやめてくれません?

 じゃあ何か? じいちゃんとか父ちゃんの身体に神器の遺伝子を混ぜ込んだってこと? どうやったんだよ。


「お前の祖父は、誰と誰の間に産まれたんだっけ?」


 そりゃ、ひいじいちゃんと4人目の嫁であるメイドの間に。


「そう。それがオレ」


 え、なに? お前、俺のひいじいちゃんだったの?

 どうも初めましてひいじいちゃん。ちょっと若作りしすぎじゃないですか。


「違う、そっちじゃない。もう片方だよ」


 もう片方っていうと……メイド?

 嘘だぁ。だってお前、どう見ても男にしか見えないぞ。


「こっちの姿の方が良いか?」


 急に目の前にいた知り合い1号が消えて女性が現れた。

 ほほぉ……。アンズに負けず劣らずの素晴らしい肉体美ですな。


「やっぱりアイツの曾孫だわ。反応そっくり」


 ────は!? しまった、つい魅入ってしまった。これが俗にいうハニー……なんだっけ?

 まあアレだよ。ハニーマスタードトーストみたいなやつだよ。分かる? 分かって。


「というわけで、俺がお前のひいばあちゃんだ」


 あぁ、はい……。

 ひ孫可愛さに化けて出てきたの、ひいばあちゃん。

 というか何で性別があっちこっちに入れ替わってんの。魔法かなにか?


 あと、なんでひいばあちゃんが俺のひいばあちゃんだからって勇者の末裔云々になるのか分からないんですかそれは。


「神器の血を濃くしたって言っただろ?」


 はい。


「つまり神器の1つであるオレ《聖剣》が勇者の末裔と子どもを作ったらどうなるのか、実験してみたんだよ」


 はぁ、子作りが実験ですか。競走馬でも作ってるのと違うか。

 ………………《聖剣》?

 知り合い1号が聖剣? いやどう見たって人間、その前に形ない恩恵になったって、え?

 思いきり立って話して笑ってますけど。


「神の武器だぞ? 数百年も経てば人格の1つや2つ芽生えるさ」


 そんなたけのこみたいにニョッキニョキ生えてきてたまるか。

 仮に人格があったとして、その肉体はどうしたんだよ。子ども産める肉体って何もないところから生えてこないだろ。


「それはほら、聖剣パワー的な?」


 納得しかねる。


「魔女の末裔だとか稀代の錬金術師だとか、いろいろ手伝ってもらった結果だよ。まあそこら辺の細かいところは話が長くなるから省略するぞ。

 とにかく《聖剣》の血を色濃く受け継いでいる勇者の末裔がリュート、お前だ。OK?」


 OK!


「《聖剣》の血が強いお前は曾祖父と違って見境なくモテるんじゃなくて、同じ勇者の末裔からしか好かれない。OK?」


 だいぶ悲しいけど、うん……まあOK!


「で、お前のことが好きで好きで仕方ない3人は勇者の末裔。OK?」


 アンズとレイアと、あと1人はユードリックだっけ。ホモ……やめよう。気にしたら負けだ。OK!


「いやあの従者は女だろ」


 嘘つけ。決闘で首絞めたけど、レイア以上に身体が硬かったぞ。主に胸部装甲的な意味で。アレは絶対に男だね。


「お、おぅ。そういうことにしておくか……」


 ヨシ、OK!


「お前に学院で友だちが出来なかったのもオレが色々やったせい。OK?」


 いやちょっと待てやテメー。


「じゃあそういうことで、オレの出番はここまでだから姿を消すぜ。またな曾孫よ。玄孫を見られる日を楽しみに待ってるぜ」


 だから待てやオイ!

 ある意味で1番の衝撃な事実を最後にサラッと言うんじゃねえ!


 え、なに? 周りから嫌われてたのってお前のせいだったの!? 俺が貧乏だったからじゃなくて!?

 なんでそんな意地悪したの!?


「いやほら万が一、有象無象の女を引き寄せないようにしようと思って」


 おのれどこまでも実験生物扱いか! 自分の子孫に対する愛着とかないんか!

 というかどうやってそんな悲しい裏工作をやってたんだよ。


「オレにとって肉体はさ、子どもを産むのには必要だったけど、その役目が終わったら用済みじゃん?」


 どうした急に。


「だからお前の祖父をある程度育てたら、死んだことにして肉体は廃棄。あとは精霊とかみたいに霊体でフワフワしてたわけだ。もちろん、見えるのは勇者の末裔である一部の者だけ」


 ……嫌な予感がしてきたんですが。

 1話の時とか剣術の授業の時とか、周りに人目がある中でお前と話してた事、多かったよね?

 え、もしかして俺、傍から見たらヤバい人だった……?


「つまり、こういうことだよ」


 うん。




「タナベ・リュートォ! なぜ君に友だちが出来ず……周りから避けられていたのか! なぜ誰にも見えないはずのオレが君に構っていたのか、なぜ剣術の立ち合いに応じていたのかァ!(アロワナノー)」


 それ以上言うな!


「その答えはただ1つ……!(ハァァ!)」


 やめろぉぉぉ!


「タナベ・リュートォ!

 君が! イマジナリーフレンドに話しかける……! 痛い中二病男子だと周りに信じ込ませるためだったからだァァア゛ーーーーーッハハハハッ!!(ターニッォン)」


 嘘だドンドコドォーン!!


「ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!」




「ということでした」


 お前を殺す。


「残念でしたー! 霊体だから殺せませーん! バーカバーカ!」


 大丈夫。今ならきっと、出来る気がするんだ。

 こう、見えない剣をイメージして……どんな敵でも一撃で葬り去れる、そんな剣を想像して、創造するんだ。


「あっ嘘、ちょっと待ってリュートさん。さっきまで持ってなかったでしょ、そんな光り輝く剣」


 大丈夫だ、知り合い1号。一瞬で終わる。苦しまないよう、すぐに終わらせてやるからな。


「ま、待とう? お願いだから待って。オレ《聖剣》よ? 《聖剣》を《聖剣》で斬るとかそんな荒唐無稽な真似、出来るわけが……」


 お前が言ったんだぜ?

 「聖剣はなんでも斬れる」ってな。

 それが人類を滅ぼす厄災だろうが、ふざけた因果だろうが、なんだって、な。


「こんな状況で勇者の血が覚醒するとか聞いてないぞ!?」


 まずはこの、ふざけた霊体をぶった斬る………………!!


「いや待ってこれ実験の途中というかもうリュートで完成形なんじゃ────」


 スター〇ースト・ストリィィィィィィィィィィィム!!


「パクリ技だしお前の持ってる剣1本じゃねえか……グワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 悪は滅んだ! 第一部、完!

 もうちょっとだけ続くんじゃ。


 話が脱線しすぎて内容が分かりづらいと思うので、次は簡単な設定のまとめ回です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 繁殖実験の黒幕が滅びたので、次回からラブコメ(一方向x3) という名の修羅場が再開かな?
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