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30.〇〇の昔話 其の一

 昔も昔、大昔。

 世界を支配せんと攻め込んできた【魔王】率いる魔族に成す術なく敗北を続けていた人類。

 滅亡しかけていた人類の祈りを聞き届けた神様が異世界から召喚した人類の救世主が『勇者』だ。

 勇者は迫りくる魔族の軍勢をあっという間に壊滅させ、そのまま魔族の本拠地まで乗り込むと【魔王】を討伐して世界を救ったのだった。

 めでたしめでたし目玉焼き。


 っていうのが、俺が子どもの頃に聞いた勇者のおとぎ話なんだけど?


「まあ、だいたい合ってるな。詳細は多少違うけど、それは今回の話には影響しないから放っておくとして」


 というか勇者って本当にいたんだな。

 いや信じてない訳じゃないよ? 聖女だっていないと思ってたらまさかの知り合いが聖女だったし、勇者や魔王がいたとしても驚かない。


 ……嘘です。割と驚いてます。というか半信半疑です。話の内容によっては目の前のコイツをフライアウェイさせる気なんでそこんとこ夜露死苦!


「じゃあまず、おとぎ話では語られていない部分からだな。

 人類は【魔王】によって滅亡しかけていた訳だが、他にも人類にとって脅威になる存在はいた」


 あ、ゴメン。俺頭悪いからこの紙に書いてもらってもいい?


「いやお前がケツ拭く用の紙じゃねえか!」


 バレた? 一応もってけってレイアに渡された俺の自尊心はもうボロボロよ。当時の人類とどっちがボロボロか試してみるか?


「人類が必死になって守った未来がコレとかな、涙が出ますよ」


 じゃあその紙で涙拭いちゃいなよ、YOU!

 ………………マジでいらない? そっか、残念。


「人類にとって最大の脅威は当時3つ。

 【魔王】・【龍王】・【禁忌】

 この3つの存在が、人類を滅ぼしかねない【厄災】として存在していた」


 なんか1つだけ毛色が違う名前が混じってませんかね。

 じゃあその【厄災】ぜんぶ勇者が倒したと。


「いや【龍王】は【禁忌】が倒した」


 仲間割れしてるじゃないですかヤダー。

 じゃあ勇者は【魔王】と【禁忌】を倒したのね。


「いや、それも厳密に言えば違う」


 ワケワカンナイヨー!!

 もう俺黙ってるからサッサと説明してクレメンス。

 ……そうしようとしてるのに俺がうるさい? ごめんなさい。


「【魔王】を倒した勇者は【禁忌】の討伐に向かうんだが、その途中で倒れてしまった。その勇者の命を救ったのが、他でもない【禁忌】自身だった」


 【厄災】さん優しいじゃん。それなのに人類滅ぼそうとしてたとか本当かよ。

 というか勇者さん、途中で力尽きちゃったのね。何でもできるスーパーサイヤ人ではなかったんだ。


「勇者そのものは、たぶんどこにでもいる一般人と変わらなかったと思うぞ」


 嘘だー。

 だったらなんで魔族をちぎっては投げちぎっては投げって出来るのさ。


「勇者には、神様から授かった三種の神器があったんだよ。


 なんでも斬ることができる《聖剣》

 どんな魔法も操ることができる《魔法の杖》

 死以外の傷をすべて癒すことができる《奇跡の錫杖》


 この三種の神器を駆使して勇者は偉業を成し遂げた」


 ほぉん、神様の武器すごかったのね。ただの人間を勇者に変えるほどの力があるなんて。

 ………………じゃあ勇者を異世界から召喚しなくても、この世界の人に渡せば良くない?


「扱える奴がいなかったんだろ。あるいはこの世界の住民に強力な武器を渡したくない理由があったか」


 異世界の人に助けてもらうしかなかった理由がある訳か。

 「詳しいことは知らん」? お前、自分が説明するとか言っといて無知を晒すとか恥ずかしくないの? 反省して♡

 ──アイダダダダダダ! ゴメンって! もう煽らないから説明お願いします!


「……勇者は自分を救ってくれた【禁忌】に恋をした。しかし【禁忌】は勇者を助けたことが原因で死亡した


 【禁忌】って人間だったの? まさか勇者に獣趣味とかない……ないよね?


「【禁忌】は神様が勇者を創ろうとした失敗作だ」


 生まれながらに業を背負った悲しい子だった……。

 人類を救うために産まれたはずだったのに人類を滅ぼしかねない存在になってしまうとは、神様やらかしすぎでは?


「勇者は世界を救った見返りに【禁忌】を生き返らせるよう神様に願った。

 真実の愛に感動した神様は願いを聞き届け、勇者と【禁忌】に最大限の祝福と加護を与えた」


 世界を救ったのは勇者でも神器でもなく、真実の愛だったと。

 いや~、良かった良かった。

 ピースフルでハートフルなおとぎ話をありがとう。感動したよ、パチパチパチ。


 ………………まだ終わらないの? なんで?


「勇者と【禁忌】の間には3人の子どもが産まれた。真実の愛が大好きな神様は、その子どもたちにも恩恵を与えることにした。



 長男には《聖剣》の加護を。

 長女には《魔法の杖》の叡智を。

 次女には《奇跡の錫杖》の祝福を。


 神器を形あるものから形ないものに昇華させて、3人の、その子孫に無形の力として授けた。これが未来────つまり現在の『聖騎士』・『魔女』・『聖女』の元ネタになったわけだ」


 勇者一家、神様にえらい可愛がられてて良かったね。

 ……で、あの~。そろそろ本題に入ってくれないかな~、なんて。


「問題は、一般人だったはずの『勇者』の血が強化されてしまったことだ」


 強化? 神様から恩恵をもらうことがそんなにマズいの?


「まず【禁忌】の血が混ざった。神器なしでも人類を救えるように神様が創った最強生物だぞ? そんなのから産まれた子どもも、人間どころじゃないとんでもスペックを受け継いだ。

 次に、神様が授けた馬鹿みたいな量の加護・祝福・恩恵。他の人間からすれば羨ましいなんてもんじゃない。すごすぎてドン引きするレベルだ。

 最後に、ダメ押しで三種の神器を象徴する力。しかも子孫代々継承できると来た。

 勇者が一般人な設定はどこに行った? 残ったのは化け物みたいな遺伝子を持った人類最強の血統だ」


 眉間に皺を寄せて、頭を掻き毟って一言、


「1人いれば国が建つような稀代の英雄が、世代を重ねれば重ねるほどネズミ算的に増えていくんだぜ? 笑えるだろ?」


 深いため息をついて肩を落としてるところ悪いんだけど、ちょっとこれ見てよ。


「………………あん? なんだよ」


 さっきの紙で折った紙飛行機。上手でしょ? めっちゃ飛ぶぜコレ。


「────ふんぬぁ!!」


 あぁ! 俺の紙飛行機ぃ! 夜の闇に消えていくぅ!


「マジメに聞けよお前! オレが必死こいて説明してんだろうが!」


 いやだって説明長いしつまらないしお前の顔がどんどんしかめ面になっていって面白いし、読者もそろそろ飽きてくる頃だと思ってちょっとしたお茶目心を入れようかと思って!


 だいたい勇者の血筋が強くなって何の問題があるんだよ!? 勇者の血筋を巡って戦争が起こったならまだしも、そんな伝承残ってないぞ!

 人類にとっても神様にとっても喜ばしい事じゃんか! 素敵な事やないですか!


「いいかよく聞けバァーカ!」


 あまりにもまっすぐな罵倒に心が痛いよ。


「カミサマは純愛が好きだったんだよ! だから勇者と【禁忌】の願いを叶えたの!」


 そ、そうだね。その後の子孫も見守ってるくらいだから、よっぽど好きだったんだろうね。恋愛ドラマ見てる女子みたいな気分だったんだろうさ。


「じゃあその子孫が純愛と真逆なことしてたらどう思うよ!?」


 可愛がってた子孫が自分の教えと反対なことしてたら?

 うーん、それは相当ブチ切れるんじゃない? 神に対する裏切りとかヤバすぎだよね。


「つまりそういうことだよ!」


 どういうことだってばよ。




「お前のひいじいちゃんが『ハーレム』なんて作ったせいで、神様ブチ切れちゃったんだよ!」




 えっ。

 純愛とハーレムは両立するか?

 作者の考えは否です。

 それはそれとして純愛ハーレムものは好きです。

 ハーレムメンバーを好きだったモブ男がハーレム主人公に負けて絶望してる顔も大好物です。


何とは言わないけど宣伝です。→ https://ncode.syosetu.com/n3800id/

昔話がちょっと詳しく分かりますが、読まなくても問題ないです。

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