21.チョコを選ぶ
「私だよね? 小さい頃からずっと結婚の約束してたもんね? ちゃんと正式な婚約者だもんね?」
「アタシでしょ? アタシの料理美味しいって言ってくれたもんね? 「アンズがいないと俺ダメかもしれんわ」って言葉、今でも覚えてるよ?」
「私、リュートの為だったら何でもできるよ。リュートの邪魔をする奴はすぐ消すし、好きなものは何でも買ってあげる。リュートの好みの女の子になれるように頑張るから」
「アタシ、リュートになら何されてもいいよ。身体だけなら自信があるし、メチャクチャにして壊れるくらい──壊してくれてもいいんだよ?」
「リュートは何もしなくていいの。私にすべて任せていいから。ただ私だけを見て私だけ愛してくれればいいの」
「リュートのこと、身も心もグズグズになるまで愛してあげる。大丈夫、アナタのこと全部受け止めるから」
「子どもはたくさん作ろうね。サッカーできるくらい欲しいな。私の身体、小さいけど大丈夫。心配しないでたくさん欲望を吐き出してね?」
「子どもは少なくてもいいよ。その分、1人1人にたーくさん愛情を注ぎこんであげるの。リュートもアタシの身体にたっぷり愛情を注いでね?」
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助けて。2人の愛が重い。
目が怖い! 完全にキマっちゃってるのぉ!?
俺の方を見てるようで見てないよ! 空想の俺と幸せな結婚生活を送りすぎて目の焦点が合ってないよ!
想像上の俺に美少女2人寝取られるってよく分からないシチュエーションが繰り広げられております。
レイアは俺の膝上でモジモジしているし、アンズは俺の腕を自分の胸に押し付けております。めっちゃ柔らかい。
こんなのただのエロ小説じゃないか! もう僕やだおうち帰る!
運営からBANされたらどうしてくれるんだ! ただでさえ1回オリジナル小説が通報されて強制消去からの警告メール届いたことあるんだぞ!
ええい、いい加減にしろ馬鹿ぁ!!
《リュートの 必殺・カラテチョップ!》
「「ぁいたーー!?」」
《レイアと アンズは 正気に 戻った!》
危ないところだった。
あやうく「俺たちの冒険はここまでだ!」するところだった。
今日も平和は保たれた。完!
「「それで、どっちが好きなの?」」
振り出しに戻った。
もう1回遊べるドン! やったね☆
いや困った。
何に困ったって? この質問、究極の二択に見せかけておいて実は正解がどっちでもないことだ。
仮にレイアを選んだとしよう。
物心ついた頃からの幼馴染みにして婚約者。めちゃくちゃ可愛いし親が大金持ち。そして何より俺のことが大好きときたもんだ。
胸が小さい? 背が小さい? それがどうした貧乳は希少価値だ。合法ロリは最高だ!
うーん最高、ぼくレイアたんと結婚しゅる!
次の瞬間、憤怒の炎に身を包んだアンズの手によってこの世から葬り去られることになるだろう。
では今度はアンズを選んだとしよう。
気心の知れた異性でいつも傍にいる大切な存在。料理は母親譲りでめちゃくちゃ上手いし面倒見も良い。そして何より俺のことが大好きときたもんだ。
抜群なそのスタイルと包容力で疲れた俺のことを癒してくれる最高の伴侶となってくれること間違いなし。
うーん至高、ぼくアンズたそと結婚シル!
次の瞬間、嫉妬に狂ったレイアの凶刃によってこの世から葬り去られることになるだろう。
お分かりいただけただろうか。
この二択に生存ルートは存在しない。う~ん、なんて罠。
救いは……、救いはないのですか……!?
いや! ここで諦めるわけにはいかない!
諦めたらそこで人生終了ですよ!
活路はきっと、どこかにあるはずだ!
「………………?」
──────見えた!
進むべき道は前!
右にも左にも希望がないのなら、ただひたすらに全速前進あるのみ!
勇往邁進、道は自ら切り開く!
即ち、そこでボーッとしているユードリック。君に決めた!
悪いな、君には犠牲になってもらう。
許せユードリック。腐った婦女子から気色悪い目で見られて取り返しのつかない状況になったりするが大丈夫だ、問題ない。
俺はお前で我慢するからお前も俺で妥協しろ!
大丈夫大丈夫、いけるいける! 先っぽだけだから!
もうそこで百合に挟まる男に殺意剥き出しにしなくても良くなるから!
男が好きだと言えば2人とも俺に失望して諦めてくれるから!
………………あ、嫌われるの想像したら涙出てきた。
いやでもここは仕方がない! 俺みたいな馬鹿で貧乏で何の取り柄もない凡夫が2人の隣になんて、いちゃいけないんだ。
2人には幸せになってもらうため、ここで俺に見切りをつけてもらって素晴らしい伴侶探しの旅に出てもらわないと!
「いや~、俺はどっちかというとユードリックみたいに元気いっぱいでまっすぐな性格の子が好きだな~。
どうだいユードリック。ユー、ミーと付き合っちゃいナYO!」
────ピシッ
空気が凍り付く音が聞こえた。
メンタル持ち直すために【ぼっち・ざ・ろっく】の漫画を一気読みした結果、感想欄と評価バーを見て「えへえへ」と気持ち悪い声を漏らす悲しき承認欲求モンスターが産まれました。
みなさん、本当にありがとうございます。
ちなみにSIDEROSの大槻ヨヨコちゃんが好きです。アニメ二期が楽しみになりました。




