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14.悪役令嬢の記憶 其の三

「君の可憐さは、有象無象の花とは比べ物にはならないね」

「私のことを今だけは、君だけの騎士として側に置いてほしい」

「思案に耽る顔も愛おしい。どうかその顔を、私以外の男には見せないでおくれ」


 キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい!


 何だコイツ!? 初対面からずっと口説いてくるんだけど!

 今時コッテコテの少女漫画でも言わないよってくらい歯の浮くセリフが、よくもまあそこまでポンポン浮かんでくるもんだ。


 というか四六時中付きまとってくるせいで、リュートに会いに行けないんだけど!?


 王族の、それも次期国王に誘われたら応じるしかないじゃん。

 お茶会だのお食事だのお花見だの、何でも頭に『お』を付けて誘ってきやがって。

 私の休み時間どころか放課後まで自由時間を全部潰してんじゃねえよ。


「私などに構わず、他の方と有意義な時間を過ごされてはいかがでしょう?」


 よし頑張った!

 苦手ながら必死に勉強して身に付けた敬語で繰り出した渾身の皮肉!


「君との時間に比べれば、他の事などすべて些事だよ」


 まったく効いてねえ!

 というか皮肉だってことにすら気付いてねえぞこのバカ王太子!


 いやお前、乙女ゲーだと私のことを速攻で見限ってヒロインとイチャイチャしてたじゃん。ヒロインの方に行けよ。

 何が悲しくて将来的に振られる男に口説かれないといけないんだよ。


 お前なんかに用はねえからどっか行け!


 めっちゃ言いたい。

 言っちゃダメかな?

 ダメだろうなぁ(諦め)。


 だってめっちゃ不敬だもん。

 私どころかお父様たちまで速攻で首が飛ぶ案件だもん。


 何かしら理由を付けて逃げようにも、王太子の周りの奴らが邪魔すぎる。


 側近候補の男どもが「本日レイア嬢に特別な予定はありません」とか言いやがる。

 なんで私の予定知ってんだよ。

 ストーカーか?


 王子に媚売りたい女どもはキャーキャー言いながらウロチョロしてるしよぉ。

 私をライバル視してハンカチ噛み締めてる奴はまだいいよ。こっち見てないで王太子籠絡してくれ。

 将来の王妃に媚売りたい奴らがマジで邪魔。どこ行くにもついてくる。

 トイレ行く時まで一緒に来るなよ。男じゃないんだから連れション文化ないだろお前ら。


 リュートに会いたいよ~。

 あの打算も思惑もないマヌケ面を見てホッと一息つきたい。

 一緒にお茶飲んだり町に遊びに行ったりしたい。

 宝石店で「レイアの髪色によく似合うよ」なんて言われながら髪飾りをプレゼントされでもしたらもう最高だ。

 グヘヘヘヘヘヘ…………


 …………無理だな。うん、アイツ貧乏だもん。


「君の瞳によく映えるネックレスを持ってきたんだ。受け取ってくれるかい?」

「私などにはもったいないので結構ですわ」


 お前じゃねえんだよクソ王太子。引っ込んでろや。


 いやぁ無理だわ~。

 その「この女は俺のことが好きだ」っていう謎の確信から出るイキリムーブが無理だわ~。


 何なの? この世の女はすべて自分の事が好きだとでも思ってんの?

 勘違いも甚だしいわ。一昨日来やがれイキリ野郎。お前なんかよりもリュートの方が100倍カッコいいし良い男だわ。


「あぁ! 高価な贈り物に見向きもしないとは、なんて慎ましいんだレイア!」


 誰の胸が慎ましいって!?

 ケンカ売ってんのかこの野郎。家庭教師に叩き込まれた私の愛想笑いにだって限界はあるんだからな。


 営業スマイルも限界を迎えて頬の筋肉がピクピク痙攣し始めた頃、廊下の向こうに見知った顔が現れた。


 リュート!? リュートじゃないか!

 大きくなったなぁリュート。別れた時には私とほぼ同じ背丈だったのに、遠目で見ても分かるくらい大きくたくましくなったじゃないか。


 いやぁ遅かったじゃないかリュート。

 私はこんなにお前に会いたくて会いたくて震えるラブソング歌手のように、この瞬間を一日千秋の想いで待ち続けていたというのに、お前は違かったなんてことはないよなぁ? オォン?


 さぁリュート。

 一刻も早く、私をこのクソッタレな乙女ゲー脳に犯されたバカ共から助け出してくれ。



 なぁリュート



 お前の隣にいる




 その女の人はだぁれ???




---




 次回『リュート、死す!』


 デュエル、スタンバイ!

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