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プロローグ 大賢者の秘密

はじめましての人ははじめまして。

お久しぶりの人はお久しぶりです。


タンバです。

今回は一人三役の主人公に挑戦です(`・ω・´)ゞ


年末年始の楽しみにどうぞ見てみてくださいm(__)m


「進め!! 敵軍は退いているぞ! 今日こそ、ルテティア皇国を落とすのだ!」


 十万の軍勢を率いる将軍がそう威勢よく号令をかけた。

 大陸のほぼ半数を領土としている超大国、ガリアール帝国がルテティア皇国の国境へ攻め込んできたのは今朝のことだった。

 今は昼過ぎ。

 侵攻に気づいた守備軍は足止めのため、今の今まで戦っていたが、守備軍は総勢二万。

 十万の敵を食い止めるのは不可能だった。

 どうにか時間を稼ぎつつ、国境の砦まで退いてきた。

 その様子を空から眺めていた俺は、敵の司令部を特定し、そこへ右手を向ける。

 急激な魔力の高まり受けて、敵も気づいたようだが、もう遅い。


「空に黒衣の魔導師!! 顔をフードで隠しているため、確認できませんが……あれは!!」

「馬鹿な!? 皇都にいるはずだぞ!? 上古の〝神淵魔法〟を操る最強の魔導師……!!」

「神出鬼没との噂は本当か!? 防御態勢! 急いで防御魔法を発動させよ!!」


 司令部を中心に半透明の膜のようなものが軍全体を覆っていく。

 さすがに〝魔法の国〟と呼ばれるルテティアに侵攻してくるだけあって、備えは万全のようだ。

 とはいえ、それはガリアール帝国目線での話。

 俺から言わせれば全く足りてない。


「來れ、天罰の槍――【光神槍ブリューナク】」


 空に五つの魔法陣。

 そこから出現した五本の巨大な光槍が司令部へ次々に降りかかる。

 敵軍が張った防御魔法は最初の一撃すら防げず、砕け散り、十万の軍勢を司る司令部は一瞬のうちに壊滅した。

 指揮系統が完全に崩壊した十万の大軍は、ただ茫然と空を見つめていた。

 そして誰かがつぶやく。


「これが……〝黒の大賢者〟……エクリプス……!!??」


 言葉と同時に撤退が始まる。

 撤退というよりは敗走だが。

 恐れに包まれた兵士たちは我先にと帝国へと帰路についていく。

 司令部が壊滅した今、全軍を統率できる者はいない。

 これで帝国がしばらく大人しくしてくれればいいんだが。

 いちいち、呼び出されてはかなわない。

 そう思いつつ、俺は砦のほうへ移動する。


「敵は敗走した。もう安心していい」

「さすがはルテティアが誇る最強の魔導師たち。〝十二天魔導〟の第一位、エクリプス様です! お見事でした! 私も何度か十二天魔導の方々とご一緒したことはありますが、あそこまでの大魔法は見たことはありません!」


 国境の守備軍を率いていた将軍がそう言って、俺を絶賛する。

 見たことないため、おそらく新任だろう。

 俺の魔法を見て、大興奮といった様子だ。


「浮かれるな。追撃は不要。しばらくの間は防御を固めておけ。王より命令があればまた来る」

「もう行かれるのですか!? これより戦勝を祝おうかと……」

「浮かれるなと言ったはずだぞ? 将軍。それに〝私〟は忙しい。急用があるので、王への報告は任せた。では」


 そう言って俺は姿を消す。

 通常の魔導師では決してできない特殊な移動法で、俺は小さな部屋へ戻ってきていた。

 急いでベッドで横になっている分身を消し、忘れずに変身も解く。

 鏡を確認すると、深くフードを被った怪しげな黒い魔導師から、白というにはくすんだ、灰色の髪と黒い瞳の少年がそこにいた。

 猫背で眠そう。身長は百七十前半。

 気だるげという表現が非常によく似合う、いつもの俺。

 ロイ・ルヴェルがそこにはいた。

 それを確認し終えたら、今度は制服に着替える。

 朝からエクリプスとして王に謁見し、敵軍の迎撃について話し合ったから、いまだに寝間着のままだった。

 すでに授業は始まり、昼休みに突入している。

 ギリギリだった。

 すでに遅刻は日常茶飯事と化しているが、それでもお昼を過ぎると飽きずに俺を起こしに来る者がいる。

 それまでには間に合いたいから、さっさと片付けたのだ。

 黒の大賢者エクリプスの急用がお昼休みまでに戻りたい、というものだと知ったら、多くのルテティア皇国の者は卒倒するだろうな。

 雑に〝白い制服〟を身に着けると、部屋の扉がノックされた。


「ああ、起きてるよ」

「失礼します。お兄様」


 扉が開く。

 入ってきたのは肩口で灰色の髪を切りそろえた見目麗しい小柄な少女。

 レナ・ルヴェル。俺の一つ下の妹だ。俺と違って優等生。〝黒の制服〟だってキチンと着ているし、成績も優秀だ。

 そんなレナは、俺と同じ黒い瞳で意外そうに見つめてきていた。


「もう制服を着ているとは驚きました」

「早いだろ?」

「もうお昼ですが」


 呆れたようにため息を吐く。

 しかし、我が妹ながら呆れた姿が様になっている。普段から俺に呆れているというのと、大抵のことはスマートにこなしてしまう完璧美少女だからだろう。

 同じ血を引いているはずなのに、どうしてこうも違うのだろうか?


「今日は午後からの授業には出席するんですか?」

「ああ、する予定」

「では、昼食を一緒に食べましょう。お兄様の分も作っていますので」

「できた妹をもって俺は幸せだよ」


 俺がそういうとクスリとレナは笑う。

 そしてより笑みを深めて告げた。


「お兄様はやらないだけです。私はそう思っていますよ」

「また始まった……」


 どうも妹のレナは俺を高評価しすぎている。

 困るのは間違っていないことだ。

 俺は魔法の国と呼ばれるルテティア皇国において、最強と呼ばれる魔導師。

 黒の大賢者エクリプス、その人だ。

 ただ、問題なのはそれだけじゃないこと。

 俺が今いるのはベルラント大公国。

 ルテティア皇国とアルビオス王国という国に挟まれた小さな国だ。

 俺はその国の小さな男爵家の次男。

 そんな奴がエクリプスの正体だとバレるのはまずい。

 ……のだけど、俺の秘密はそれだけじゃない。

 剣の国と呼ばれるアルビオス王国。

 そこには〝七穹剣〟と呼ばれる凄腕の剣士たちがいる。

 その中で一番強い者だけが〝剣聖〟の称号を名乗れる。ルテティア皇国におけるエクリプスと同じ位置だ。

 今代の剣聖は〝白の剣聖クラウド〟。

 そっちも中身は俺だ。

 言うならば、両国の柱ともいうべき存在。それが小国のしがない貴族の次男だとバレると厄介だ。向こうのプライドも傷つくし、そんな奴を自由にさせるわけがない。

 三国は現在、ガリアール帝国の侵攻に対して同盟を結んでいる。

 俺は剣聖であり、大賢者だが、別に戦いが好きなわけじゃない。

 自由気ままに世界を旅して、風景画を描きたいという夢もある。

 そのために、正体がバレることは避けなきゃいけない。

 どうせ、今の皇帝が死ぬまではガリアール帝国との戦争は終わらない。アルビオス王国とルテティア皇国が突破されたら、故郷であるベルラント大公国にも攻め込まれる。

 だから剣聖と大賢者。両国の武威の象徴を演じている。

 けど、さっさと後任が出てきてほしい。自分の国なんだから、自分たちで守れよというのが俺の考えだ。

 俺がやるのは後任が出てくるまで。それが終わったらさっさと引退して旅に出る。いつ終わるか定かじゃない戦争に付き合わされるのは御免だ。

 正体を明かせば、多くの人が褒めてくれるだろうし、周りを見返すこともできるだろう。

 けど、それは戦争の駒になるということであり、自由も失うということだ。

 それなら今のまま馬鹿にされた方がマシだ。

 たとえ〝落第貴族〟と馬鹿にされていたとしても――。



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― 新着の感想 ―
[一言] 文章の端々から感じる厨二感… 読んでて鳥肌立っちゃいました。
[一言] タイトルが意味不明でクソつまらないく感じてしまい読むか迷いました
[良い点] これから読み始めますが、主人公は三足以上のワラジを履いてそうなので楽しみです!⸜( •⌄• )⸝ 体がいくつあっても足りなさそうでワクワク読みたいと思います♪
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