ジェイ様の元へ
もうすぐ私はジェイ様の元へ嫁ぎます。ドレスの最終チェックをすませてから、学生時代の友人達とお茶会をしています。子爵家でお茶会を開くのはこれで最後になる事でしょう。
ソフィアさん、レイチェルさん、デボラさんとは学生時代から変わらず親しくさせていただいています。
ソフィアさんからは、先日の結婚式の写真をいただきました。
「……私、酷い顔をしていますね」
ソフィアさんが遠くへ行くようで、嬉しい事なのに泣いてしまいましたから。
「そんな事ありませんわよ。ルビナさんの涙でどれだけの人が虜に、こほん。いえ、忘れてくださいませ。来週はルビナさんの結婚式ですわね。私楽しみで仕方がありませんのよ」
「ルビナさんのドレスは伯爵様がデザインにも関わっているのでしょう?」
「ルビナさんのドレスはいつも伯爵様からの贈り物ですものね。楽しみですわね!」
ソフィアさん、レイチェルさん、デボラさんと楽しく話をしていると学生時代に戻ったようで懐かしいのに話題は変わらずジェイ様の事で……
「はいっ。ジェイ様のこだわりのドレスです。楽しみにしていてくださいね」
そう言いみんなで笑いました。
「やだ、もう。ルビナさんのドレスなのに伯爵様のこだわりのドレスだなんて、おかしいですわね」
「だってジェイ様の方が私より遥かに私に詳しいんですもの。ジェイ様にお任せしておけば似合うドレスを提案してくださりますもの。私が意見をしたのは、参列者の皆さんが笑っている式が良いと言いました。実は全貌を知らないんです。携わったことと言えば、お料理とお土産くらいですもの」
ソフィアさんは結婚式の準備が大変だと話を聞いていましたが、人それぞれなんでしょうか?
レオナルド様が来るので警備の面ではお義兄様率いる騎士団の方が警護をされるそうです。以前来た時はお忍びでいらしたようですが、今回は王宮で滞在されるということで、しっかり警護されるようです。
レオナルド様の嫌がる顔が目に浮かぶようです。
「ルビナさんってば……ご自身の結婚式なのに。私は婚約者が任せると言って、あまり参加してくれないのが不満ですわ」
レイチェルさんは半年後にお式をされます。
「私は恵まれていると思います。皆さんが色々と動いてくれて……ジェイ様はお疲れなのにいつも優しくて、思いやりがあって、強くて、私なんかには勿体無いくらい素敵な方なんです」
力説しました。すごく素敵だということを皆さんに知ってもらいたくて……
「惚気ですわね」
「ご馳走様です」
「お幸せに」
「ルビナさん応援隊の私たちとしては、満足のいく結果になったので、よしとしましょう!」
「あら、解散ですの?」
「あとは勝手にどうぞ。といった感じですわね」
学生時代と変わらない会話で、とても楽しいひとときです。
「ずっとお友達でいてください。私ソフィアさんの結婚式ではなぜか、寂しく感じてしまって……ソフィアさんを遠く感じてしまいました。友達の幸せを喜んでいたはずですのにおかしいですね」
「「わかりますっ」」
レイチェルさんデボラさんが声を揃えてお返事してくださいました。
「え?」
「すごく幸せそうで見ていて嬉しいのに寂しく感じましたわ」
「私もです。おいて行かれている? といった感じもしました」
「まぁ。私は何も変わっていませんわよ!」
「ソフィアさんはとても愛されているようで、綺麗になりました! 結婚式では輝いていました」
「……恥ずかしいですわね。ルビナさんほどではありませんわよ。夫の友人はルビナさんに婚約者がいると聞いてショックを受けていましたわ。一目惚れだったようですが、伯爵様といる姿を見て諦めたそうですわ。それでも邪魔するようなら、馬に蹴られろ。ですわね」
ふん。っと息巻くソフィアさん。
「私達は学生の頃から、伯爵様とルビナさんの恋を応援していたのですから、誰であっても邪魔させませんわ!」
既に伯爵夫人の貫禄のソフィアさんでした。
「ルビナさん、お幸せに!」
「ずっと友達ですわ!」
皆さんの言葉にじーんとして涙目になってしまいました。
「いつもありがとうございます。お友達でいてくれてありがとうございます。あの時にソフィアさんがランチに誘ってくださったから今があります……」
誰も言わないけど、あの時の私は人生のどん底でした……婚約は破談になったけど、その代わりに良い友人に恵まれてジェイ様とも出会いました。
「これも全てご縁ですね!」
ソフィアさんが明るくそう言いみんなで頷いで答えました。
どん底の後は這い上がるしかないけれど、私はみんなの手を借りて這い上がる事が出来ました……




