結婚式に参加します
本日は私の友人のソフィアさんの結婚式に参列します。ジェイ様も一緒です!
「ソフィアさんお綺麗ですね。とても幸せそうで、私も嬉しいです」
ぐずっ。
「幸せそうな友達を見て嬉しいのはわかるけれど……なんで泣いているのかな?」
ハンカチで目頭を押さえました。
「だって幸せそうなんですもの。嬉しくて涙が……」
男の人には分からない感情なんでしょうか? 嬉しいけれど、少し寂しいような……
「ルビナ、ソフィア嬢がこちらに手を振っているよ」
こちらを見て笑顔を見せてくれています。眩しいですっ。
「ルビナさーん。次はルビナさんの番ですよっ」
手に持っていたブーケを渡してくださいました。それは白いカラーのブーケでした。
「ソフィアさんっ。おめでとうございます、私、ソフィアさんの事大好きですからっ」
変なことを口走ってしまいました……
「変わらず、友達でいてくだざい……」
ぐずっ。
「ルビナさんったら……当たり前じゃないですか。ずっと友達でいましょうね。ありがとう。嬉しい」
ソフィアさんが抱きしめてくれました。
「ソフィア、そろそろいくよ」
ソフィアさんの旦那様に呼ばれてソフィアさんは行ってしまいました。次は披露パーティーです。
「ハンカチを冷やしてこようか?」
ようやく涙が落ち着いてきました。
「もう大丈夫です」
急に恥ずかしくなってきました。人前でこんなに泣くなんて……
レイチェルさんやデボラさんも涙目になっていたけど、私は大泣きしてしまいました。ソフィアさんの晴れ舞台なのに……
それから披露パーティーでソフィアさんのご家族に挨拶をさせてもらっていたら、ソフィアさんの二人のお兄様が言ってくださいました。
「これからもソフィアの事頼んだよ」
「ルビナ嬢も幸せにな」
嬉しかったです。ソフィアさんのお兄様方も嬉しそうでした。
「ルビナはソフィア嬢と学園に入ってからずっと仲が良いんだったよね?」
テラスでジェイ様とお話しをしていました。
「はい。ソフィアさんに声をかけてもらってからお昼をご一緒するようになりました。義姉のシンシアさんとソフィアさんは親戚で親しいので、それもあって仲よくしてくださって……ソフィアさんには色々と感謝をしています。ソフィアさんがいないと乗り越えられない事もありましたし私の学生生活においてソフィアさんは恩人のようでもあるんです」
あの時にソフィアさんがいてくれたから、今の私がある。
「それにジェイ様のことも相談に乗ってもらいましたよ。ふふっ。最近の事なのに懐かしいですけれど、ジェイ様とくっつけようとして応援してくれていました」
卒業してまだ一年も経っていないのにもう懐かしく感じるだなんて……時が経つのはあっという間ですね。
「あの学園祭の時かな? あの時のルビナは可愛かったなぁ」
「今は可愛くないですか?」
ちょっと拗ねるように聞いてみました。お酒も少しだけ飲んでいます。
「今は綺麗になった。大人の女性になったと感じているよ。ルビナ、今幸せ?」
それはもちろん
「はい。ジェイ様は幸せですか?」
「もちろん、幸せだよ」
答えるように手を繋がれました。
「先日の写真が出来上がったから、母に渡したら喜んでくれてさ、領地に飾るんだって。自慢の息子達と言われて、くすぐったい気持ちになったけれど嬉しかったんだ。些細な事だけど幸せって積み重ねだよね。気がつかせてくれてありがとう」
頬にキスをされました。
「卒業記念にお父様とお母様からジュエリーボックスを貰って、お母様が入れてくれた写真は家族写真で……思い出は大事だと思いました。その時の一瞬の時を切り取っていて、幸せな時や人が集まった時に写真を撮りますもの」
写真はまだ高価で一般的になっていないものの、貴族の間では大人気。カメラマンが憧れの仕事になっている。本日の結婚式にもカメラマンが同行しています。
貴族向けの新聞には写真を載せてある記事も増えてきています。
「兄達と写真を撮って思ったんだけど、今度屋敷の皆を集めて写真を撮ろう。ルビナと私の新生活の記念に」
「ふふっ。エントランスに飾りましょう」
お父様は人材は宝だと言っていました。屋敷で働く皆は家族のようなものだと。本当は写真を撮ったら皆に配りたいところだけど、屋敷の中のことは口外無用としている。
もしその写真を落としたり、見せたりして、屋敷内の事が外部に漏れるのは困りますものね。
少し冷えてきたので会場に戻りました。ダンスを踊って体を温めていたら、ソフィアさんからお声が掛かりました。
「ルビナさん、一緒に写真を撮りましょう」
レイチェルさんデボラさんと四人で写真を撮って貰いました。
ソフィアさんの旦那様とその友人の方も写真を撮っていました。
それからお互いの友人達を交えて写真を撮る事になりました。その後、ソフィアさんの旦那様の友人に声をかけられ……
「初めて見る顔だけど、可愛いね。どこの家の子? 一緒にお茶でもどうかな?」
急だったので驚いて、答えに迷ってしまいました。ソフィアさんの旦那さんの友人だから、遠回しに断った方が……
「ストップ!」
ジェイ様がすっと登場してきました。
「私の婚約者を可愛いと言ってくれて感謝する。しかし君の質問に答える気は無い」
ジェイ様はにこりと笑い私の腰を抱き寄せた。二人でいると対になったような色合いの衣装です。
「……そうでしたか。それは残念です、私はこれで……」
そう言いソフィアさんの旦那さんの友人はそそくさと去って行きました。
「全く油断も隙もない……」
ぼそっと呟くジェイ様。
「初めてお会いする方が多いですから、婚約者がいるかどうかは分かりませんものね」
そっとジェイ様に寄り添いました。
「結婚式寸前の婚約者同士に、部外者は必要ない」
少し声のトーンを抑えていました。怒っているみたいです。
「ふふっ。それではずっとこうしていましょう。ジェイ様が一人でいた時も遠目から令嬢達の視線を集めていましたもの。妬けてしまいます」
二人がいちゃいちゃしている様子を呆れながらも見るルビナの兄夫婦。
「仲が良いようで安心しましたねルーク」
兄嫁シンシアが兄ルークを宥めるように言った。
「……ルビナが幸せなら、それで、いい」
「発言と顔が違うわよ? あらあんなに幸せそうに笑い合っているわ」
二人でルビナとジェイを見た。
「……私の手から離れていくのかと思うと寂しいと思っただけだよ」
そう言いながら寂しそうに笑うルーク。
「ルビナには幸せになってもらいたい」




