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お泊まり


 次の日もジェイ様の屋敷にお泊まりすることになりました。


 今日は待ちに待った花が咲くのだそうです。蕾がぱんぱんになっていて庭師曰く“今日咲かないとこの花は咲かないと思います”だそうです。


 咲かないとどうなるの? 萎れてしまいます。ですって……それは悲しい。


 でもこればっかりは自然の力……



 今日は満月で、このお花は満月の日に一日だけ、しかも数時間のみ咲く花で咲くとすぐに枯れてしまう儚いお花のようです。


 蕾になっても萎れてしまったり、蕾になる前に枯れてしまったり……次はいつ咲くのか、数年後なのか数十年後なのか……


 楽しみ半分、不安半分と言ったところで、ジェイ様がヘトヘトになって帰って来ました。



「疲れていてもルビナがいると良いもんだね」



 本日はシェフ特製の胃やお腹に優しいメニューでした。


 今日もジェイ様は王宮に行っていたようで、国外からの定期的な商品仕入れだけど、レオナルド様も関わっていると言うので大きな問題はなさそうです。レオナルド様の信頼たるや!


 それに私達の結婚式にはレオナルド様が出席なさるので、王宮での滞在が決まったようで今回の件も今日でなんとか目処がついたようです。



「レオナルドのやつが王宮での滞在が決まったから拗ねているんだ。ホテルの方が楽だから。他の招待した友人にはホテルで滞在してもらう事にしたよ。あまり長くはいられないようだが、皆来てくれる」



 レオナルド様は二週間の滞在予定です。奥様は現在妊娠中でご実家に帰っているのだそうで、どうぞゆっくりして来て下さいな。と言われているようです。



「レオナルド様は王族ですもの。そうなりますわよね。何かあっては大変ですもの」


 警備の問題がありますよね。元とはいえ王子様で、王族ですものね。友達の結婚式の為に来るだけだ! と言っていたようですが、そう言うわけにはいかない! と王宮での滞在になったようです。


「今回うちには泊めてやれないからね」


「……はい」



 新婚家庭の屋敷に泊まりにくるような真似はしませんよね。レオナルド様は強引だけどそう言う時はちゃんと引く方ですものね。



 食事をし湯浴みをして温室へと行きました。温室は心地のいい温度に設定されていました。


「ジェイ様、お茶をお淹れしますね」



 お茶を淹れる準備をしてもらい、ミルクティーを淹れた。



「はい、どうぞ」


 カップを受け取るジェイ様。少し大きめのカップに淹れて渡しました。



「ありがとう。蜂蜜が入っている? コクがあって美味しい。落ち着く甘さだね」



「はい、蜂蜜を入れるとほっとしませんか? ジェイ様、お花が咲きそうになったら声をかけますから、少し目を瞑られてはいかがですか?」



 毎日お疲れですから、少しは休んでほしいと思いました。



「いや、勿体無いよ。こんな機会中々無いからね。愛する (ルビナ)と一緒にこの花が咲く瞬間が見られるなんて思わなかった。私も噂でしか聞いたことがなく、目にするのは初めてなんだよ。この花はとても珍しく、今の技術では増やすことが出来ないから貴重なんだ。この花が咲いたら屋敷の者には見に来ても良い。と伝えてあるから興味があれば見にくるだろう」

 


 屋敷の皆も咲くかどうかと、朝からそわそわしていましたもの。皆で楽しむだなんて素敵ですね。



 離れたところには植物園の人達もいます。


「マルクさん達も呼んであげれば良かったのに」



「……マルク達がいたらルビナとこうしてのんびり花を咲く様子を観察できないよ……それに夜だし子供は寝る時間だよ」



「そうですね。子供が夜更かしすると悪い子になってしまいますもの、良くありませんね」




「悪い子になる?」



「はい、子供の頃眠れなくてお部屋を出たらおばぁ様に見つかって、そう言われました。夜更かしは非行の始まりだって……悪い子になりたくなくて、その日はお兄様と寝ましたもの」



「今は良いの? もう遅い時間だけど」


 くっくっくっ……と笑い声が聞こえた。


「もう成人していますから大丈夫です。その後に夜更かしをするとお化けが出ると言われて怖くてお兄様に一緒に寝てもらいました」



「……それはルビナが何歳までの事かな?」



「十歳位だったと思います。お兄様は眠るまで一緒にいてくれました」


「もう怖くない?」


「はい。おばけがおじぃ様やおばぁ様だと良いよね。とお兄様に言われて、それならおばけに会うのも怖く無いと思いました」



 おじぃ様とおばぁ様は、馬車の事故で亡くなりました。急なお別れで悲しくて屋敷内は暗かったですもの。



「そうだね。そう言う考え方もあるよね。おじぃ様とおばぁ様はどういう方だったの?」



「二人とも厳しくて優しくて凛としていましたよ。大好きでした」



「お会いしたかったね。事故か……新聞で読んだ事があるな。たしか崖崩れに巻き込まれて……不幸な事故だったね



「ジェイ様を紹介したかったなぁ。喜んでくれたと思います」



 少し思い出に浸っていたらジェイ様に肩を抱かれました。


「こんな姿はお見せできませんね。結婚前に異性とくっつくなんて、ふしだらです! と怒られそうです」



「もっと怒られるようなことする?」


「え?」



 ジェイ様のお顔が近づいて来ました……こ、これは口付けをされる?


 ギュッと目を瞑ったら….



 ピチョ……と首筋に冷たいものが!



「きゃぁぁっ」


 ごんっ。重い音。



「いてっ」



 私が悲鳴をあげるとジェイ様は顎を押さえていました……だって冷たくて……



「酷いな、ルビナ」


「だって、首筋に冷たいものが……あっ!」



 上を見て指を指す。



「ジェイ様っ!!」



「あっ!」




 


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