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甘やかしたい


「ジェイ様、お疲れですか?」



 結婚式の準備が整い、来月結婚式を迎えることになりました。ジェイ様は仕事が忙しいのに、結婚式の準備にも人一倍気を遣っています。



「うん。疲れた。今日の仕事相手は気を張る方だったから……」



 本日はジェイ様の屋敷にお泊まりします。実は学園を卒業したあたりからお泊まりの許可を得ています。と言っても入り浸る事などしていません。節度ある適度なら許可する。と言われていますから、お父様やお母様の信頼を裏切るような真似はしていません。



 ジェイ様が私の隣に座って肩に頭を乗せて来ました。ジェイ様が私に甘えてくれています。珍しいです。



「もうやだよ、疲れたよ。一日中ルビナとこうしていたいよ」


「ジェイ様が愚痴を吐くなんて珍しいですね」


 頭を撫でると静かになりましたね。どうしたのでしょうか。



「ルビナに甘やかされるなんて良いもんだね」


「ジェイ様は働きすぎですよ。少し休んでください」


「今が頑張り期だからね……ありがとう」



 ジェイ様の頭を私の膝に乗せた。膝枕ですね。


「こちらこそいつもありがとうございます」


 ジェイ様の頬にキスを落としました。



「ルビナがいるから頑張れるんだよ。来週にはこの仕事も片付くと思う」



 ジェイ様は私の頬を撫でました。


 国外からの商品の仕入れ問題で王宮事務官の方と話をされたようです。国外から違法な商品が入ってくるのを防ぐためらしいのですが、最近違法薬物が問題に上がっているようです。


 販売ルートや港での検問など、細かい事務作業が多いのだそうです。


 侯爵様に相談すれば人を遣してくれたり、王宮事務官の方に話をうまく通してくれるのだそうですが、ジェイ様は自分の仕事だからやれる事はやる。と言い奮闘されています。



「ルビナ、今日は何をしていたか聞いても良い?」



 本日ジェイ様は疲れた。と言い夕方に帰って来ました。最近は休みなく働いていますので、王宮から直帰して来たそうです。


 侍従の方も休んでください。と言って屋敷に送ってくださいました。



「ジェイ様、そろそろ食事にしませんか?」


「そうだね。食事をしながら話を聞こうか」



 食堂に着くと、ジェイ様には椅子に座ってもらって、厨房の様子を見に行きます。



「ルビナ、どこに行くんだ?」


「お待ちくださいね! すぐ戻りますから」



 言われた通り大人しく待つことにしたジェイ。カトラリーがメイドによって用意される。



「お待たせしました」



 カラカラとカートを引いてルビナが戻って来た。


「どうしたんだい? 給仕をしてくれるの?」



 ジェイ様と私のテーブルにビーフシチューとパンとサラダを置きました。シンプルですよね? これが限界でした。


 全て並べ終えると席に着く。すると給仕が赤ワインを淹れてそっと、離れた。



「このビーフシチューにはワインが合うんですよ。良かったらチーズもどうぞ」


「ん? 珍しいね。シチューが出るなんて」



 シンプルな食事を興味深く見るジェイ様。



「ふふっ。今日は私が作りました! 先ほどのジェイ様の質問の答えは、今日は料理をしていました。です」



「ルビナが作ったの? これを? すごいじゃないか!」


「驚きましたか? 冷めてしまいますからどうぞ召し上がってください」



 ドキドキしながらジェイ様が口に入れるのを待つ。



「美味いよ!」



「良かった。お疲れでしたので、食べやすい物をと思って作りました」


「そこまで気を遣ってくれていたのか……ありがとうルビナ」



「このシチューはお母様の実家でよく作られている物で、レシピを教えてもらいました。お母様の実家のワインを使うことでこの味が出せるそうです。私も大好きでお母様の実家に行く度に作ってもらったんですよ」



 お母様の実家の伯爵家はワインが盛んに作られていて上質なワインは高値で売買されているそうです。だからお母様はお酒が強いのです。



「サラダのドレッシングも美味しい。いつもと何が違うんだろう?」


 さすがジェイ様。味の違いが分かるなんて!



「これは白ワインビネガーを使っています」


「これもルビナが?」


「はい。簡単に作れるんですよ。シェフにも味見をして貰いましたし、サラダは植物園のもので新鮮です」


 いつもはシェフが仕入れるのですが、お願いして購入しました。


「美味しいよ。パンもほのかに甘くてワインにもシチューにも合うね」



「ミルクパンといいまして簡単に作れるのですが、形がいびつになってしまいました」



「これもルビナが?」


「はい」


「凄いな……こんな特技があったなんて知らなかった」



 ……特技と言うわけではないので、ここは素直にお答えしましょう。






「練習を重ねてようやく人様にお出しできるようになったので、今日に至ります。お父様もお母様も、しばらくシチューは見たくないって言っていましたもの」



 毎日同じものを作り続けると流石に上達しますよね。お母様にワインが勿体無いと怒られてしまいましたから、伯父様にお願いして分けて貰いました。


 伯父様にこの話をすると、うちで作って良いよ。と言われて伯父様の家でシェフに教えて貰いながら作って完成品をお出しすると喜んでもらえました。


 私が練習している事を知っていましたから練習の甲斐があったね。と伯父様は褒めてくれました。




「その気持ちが嬉しい。おかわりをしても良い?」


「はい」


 喜んでくれたみたいで嬉しいです。



「本当に美味しい。また作ってくれる?」


「はい。伯父様にワインを分けて貰いますね」


「それは申し訳ないから購入するよ。ルビナに頼まれたら伯爵は断れないだろう?」



 伯父様の家に女の子はいないので、私を可愛がってくださいました。


 ジェイ様を伯父様に会わせた時に伯父様は不幸にしたら命がないと思えよ。ってお父様でも言わない事を真顔で言いました。


 ジェイ様はご安心ください。とキッパリ答えてくれて、かっこよかったなぁ……



「伯父様は好きなだけ持っていって良いと言ってくれるのでその言葉に甘えています。ですので今日開けたワインはとても高級な物ですよ。ボトルが残ったら手伝ってくれたシェフに渡したいと思います」



 ジェイ様も私も一杯だけ飲むことにして、後はシェフにお裾分けです。




 その後のデザートはパウンドケーキを出しました。オレンジを使ったパウンドケーキでこれも手作りです。本日は一日中料理をして過ごしました。



 ジェイ様はシチューをとても気に入ってくれてワインの定期購入を決めたそうですが、その後私宛に伯父様が勝手に送ってくるようになりました。




 ジェイ様は買った方が楽なのになぁ……と言いながらお返しを送るようになりました。





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