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夜のお出掛け2


「これから先ルビナが子爵家の領地へ行きたいとなると私も一緒に行くよ。だから安心して欲しい」


「ジェイ様が子爵領にですか? 長閑なだけで何もありませんよ?」



 領地には特別これ! といった特産はない。誇れるのは領民の優しさとか、のんびりしているところとか……



「ルビナが育った場所で、ルビナの大事な場所なんだから何もないって事はないだろう?」


 先祖代々守ってきた領地で私たち家族にとっては大事な大切な場所。



「お父様が冗談で言っていました。何にもないのが自慢だって。問題もない、災いもない、って」


 お父様を思い出しふふっと笑う。



「泣いたり笑ったりルビナは忙しいね」



「だって……」




「子爵夫妻に会いに領地へ行きたいと思った時は一緒に行こう。ルビナはおそらくあいつの事を思ったんだろう?」



 バレていますね。隣の領地で川を挟んだ先にディートが住んでいる。



「言うつもりはなかったんだけど、あいつは領地で働いている。所謂肉体労働だ。工事の仕事をしたりとこき使われているようだよ」



「そう、ですか」





 自分は幸せなのにちょっとした罪悪感を感じていた。でもそれを望んだのは自分だもの。ディートとは違う道を歩くと決めたのも自分。




「もうこの話はやめてもいいかな?」


「ジェイ様」


「ん?」



「ありがとうございます。何もかもジェイ様のおかげです」



「何のことかよく分からないけど、最終的な判断はいつもルビナがしている。迷った時は相談に乗るけど、ルビナの意見を尊重したいと思う。これからもずっと」



「はい」




 すこしの沈黙……それを破ったのはジェイ様。




「よし、次へ行くぞ」



「次?」



「ボートを進めるからちゃん掴まってて」


「きゃっ」



 急にスピードアップをしたので驚いてジェイ様に抱きついた。



「はははっ。中々スリルがあるよね!」



「す、少し怖いくらいですよぉ」



 ランプが切れてしまうと真っ暗になってしまうので、船着場に戻るそうです。



 船着場に戻り、地面に着地したらホッと安心しました。ボートは揺れるので足元が不安定でしたから……



 バスケットの中には温かいお茶が飲めるように準備されていて、少し冷えた身体がじんわり暖かくなりました。


 その後は、芝生の上にシートを敷いて二人並んでゴロンと横になりました。



 

「ルビナ上を見て」


 ジェイ様が指を差しました。その先は……


「綺麗……」



 言葉を失うほどの満天の星空。



「綺麗だね。空気が澄んでいるからよく見える」



 流れ星がさぁっーと流れて行きました。それを無言で見ていて……



「私この風景を二度と忘れません」


 ポツリと呟きました。



「絵にしないのか?」



「はい。心にしまっておきます。例え私がどれだけ上手く絵を描けても、今日見たこの瞬間を切り取ることは出来ませんもの」   



 目に焼き付けるように空を見た。



「先ほどの夫婦が五年前に来たというのがよく分かるよね。忘れられない景色がここにはあるんだね」


 

 しばらく横になって星空を見てホテルに帰ることになりました。





「ルビナはベッドを使うといいよ。私はソファを使う。おやすみルビナ、また明日」


 額にキスをされた。私はジェイ様の夜着をギュッと掴んでいた。



「どうした?」



「ベッドは、広いので……」













「いや、それは……さすがに」




「あっ、ちが、違わないけど、今日はジェイ様に抱きしめられながら、」


 

 と言うと後ろからギュッと抱きしめられた。



「抱きしめられながら? どうしたい?」



「ジェイ様と眠りたい、です」



 大胆すぎた。引かれてない? 恥ずかしいけど……ジェイ様と離れたくなくて。



「ん。ルビナがお望みなら」



 ジェイ様が言った後に、


「きゃっ」



 横抱きにされた。噂のお姫様抱っことかいう、あれ?



「やっぱりやめた。は、なしだから」



 ジェイ様は器用に布団をめくって私を横に寝かせてくれた。



「ルビナは温かいね。こうやっていると安心するよ」



 ジェイ様の腕枕……向かい合うとお顔がすぐそこに。恥ずかしくて後ろを向いた。

 

 くすくすと笑い声が聞こえたけれど、顔が見えないだけマシだった。自分で言った事なのにこんなに恥ずかしいとは……



「おやすみルビナ」



 ひゃぁっ。耳元はやめて! 心臓がもたないかもしれません。



 旅行先で大胆な事をしてしまいました。



 今夜は眠れるか心配です。






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