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夜のお出かけ


 夜に出かけるって、どこに行くのでしょうか? 夜に出かける為に夕食を早めに摂り、入浴をしていた。


 入浴後は侍女に用意されたワンピースを着る。後でブーツに履き替えるんですって。



 着替えたところでジェイ様が部屋に戻ってきた。メイドがお茶を準備してくれて、ジェイ様に大浴場の様子を聞いた。


「温泉は気持ちよかったよ。サウナが人気で、人が多かったようだよ。汗を流した後に水風呂に入るのが気持ち良いそうだ」



「水風呂ですか! 冷たそうですね。サウナは高温ですものね」



「外気浴といって、そのまま外に出てしばらくしてまたサウナに入ってを繰り返すと、血流が良くなるようだよ。これからもっと流行ると思う。山間だから水も綺麗で冷たくてマイナスイオンが出ている。森林浴もマイナスイオンだから同じような感じかもね。ルビナはサウナに興味がある?」


「はい。美容にも良いと聞きました。汗が出ると老廃物? がでるとか?」



「そうみたいだね。よかったら明日入る? 予約しようか?」



 ルビナは首を振る。



「せっかくジェイ様と旅行に来たので同じマイナスイオン? なら森林浴をしたいです。サウナに興味はありますが、また今度にします。今後の楽しみが増えますから」



(なんて可愛い事を……心を無にしなくては……それにしてもサウナか……サウナなら何とか作れそうな気がするな……家の敷地の一角を利用して、小屋を建てて、うん。いける!


 家に帰ったら執事に相談だ! 私たちが使わない日は使用人に利用を可にすればみんなが喜ぶだろう)



 お茶を飲み終わったら、ジェイ様がそろそろ行こうか? と声をかけてきました。



「はい、ところでどちらに?」


「まだ内緒」




 馬車に乗る事十分。もう一度どこに行くか聞いてみると笑って誤魔化されました。怪しいところではなさそうですけど……






「歩いてきても良かったんだけど、夜道は歩きにくいし街灯があるわけでもない。何があるか分からないから、目的地までは馬車にしたんだ」


 手を差し出されて馬車を降りた。馬車を降りると昼間に来た湖だった。



「湖ですか?」



「今からボートに乗るよ。危ないから絶対にボートの上では立たないで」



「はい」



 もし湖に落ちたらと考えるとおそろしいですよね。泳ぐ自信もないですし泳いだこともありません。でも人は浮く。と聞いたことがあります。


 見た感じ湖の周辺とボートはランプで灯されていて、ロープで固定されているようです。



「私が先に乗るから合図をしたら次はルビナが乗る番だよ」




 ジェイ様はボートに乗ると手を差し出してきた。少し段差があり揺れているので恐る恐る手を取った。



「きゃぁぁっ」


「大丈夫だから落ち着いて」


 手をとったつもりだったのに何故かジェイ様に抱きついていました。


「はい、すみません……」


 ジェイ様から離れようとしたら強く抱きしめられてしまいました。足元が不安定なのでジェイ様に抱きついていると安心します。



「ルビナから石鹸の香りがする」


「湯浴みをしましたから……それを言うとジェイ様からも石鹸の香りがしますよ?」


 ドキドキしている私の心臓……暗くて良かった。ジェイ様の心臓もドキドキと音を立てていた。



「この状態は嬉しいのだけど出発しようか。身体を離すからゆっくり座って。今足元を照らすから」


 ゆらゆら揺れるのでゆっくりと座る。ジェイ様も向かいに座り、私に膝掛けを掛けてくれた。


「夜だし水の上だから冷えるかもしれない」


 膝掛けの用意までしてくださっていたのですね。よく見るとバスケットのような物が置いてありました。何が出てくるのでしょうか?



 ジェイ様がボートを漕ぎ始めるとすいすい進み始めた。



「今日は満月なんだよ」


「はい、そうですね」


 大きな月が目に入りました。



「湖が鏡のようになっていて月が浮かんでいるようだね」


「はい、とても綺麗ですね」



 湖面にゆらゆらと映し出される満月。




「満月の夜に、この湖でボートに乗ると幸せになれるんだって。単なる迷信かもしれないけれど、ロマンチックじゃない?」


 この美しい月を一緒に見られるだけでもロマンチックです。やっぱりジェイ様は小説の主人公のように素敵です。嬉しくて感動して涙が溢れて来ました。



「え? ルビナ、なんで泣くのさ!」



「ジェイ様が、かっこいいからです。私なんかにこんな素敵な人生があるなんて思わなかったから……私にジェイ様は勿体無いくらいで、」


「……ルビナは魅力的な女性だよ。ルビナが喜んでくれると思うから原動力になるんだよ。信じられるまで何度も言い続ける」



「私にそんな魅力は、きゃっ」


 ジェイ様に手を取られて気がつくとジェイさまの膝の上に座らされていた。ボートがとてつもなく揺れるので、怖くてジェイ様に抱きついた。




「大丈夫ですかーー?」




 陸から護衛の人の声が聞こえた。ジェイ様は問題ない! と返事をしていた。多分ボートが揺れてランプも揺れたから気になったんでしょうね。



「私から見たら魅力だらけだけどね。ルビナが令嬢だらけのクラスにいてくれるから、安心して学園生活を楽しんで。なんて言っているんだよ。ルビナはここ数年でとても綺麗になったから、誰かに取られるんじゃないかとハラハラしているんだ」


 ジェイ様が? まさかそんな……



「私はジェイ様しか見ていませんよ?」



「それは知っているけど、たまに不安になる時がある。格好付けてルビナに家族との時間を大事に……なんて言うくせに、本当は早くルビナと結婚したい」


「ジェイ様しか見てない事を知っているのに、おかしいですね。私が結婚したらお父様はお兄様に家督を譲って領地に戻るそうです。私は領地が好きだけど、行くのはちょっと……」




 久しぶりにディートの事を思い出してしまいました。



 






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