旅行に誘われました
季節は移り変わり春になりました。緑が生き生きと輝いています。
「湖に行かないか? デートしよう」
デート! それはもちろん行きたいです。
「はい。楽しみです」
ジェイ様に誘われた湖は王都からだと遠いので一泊する予定だそうです。マルクさんは良いなー僕も行きたい! と言っていましたが、ジェイ様に今度どこかに連れていってやるから今回は諦めてくれ。と言われ渋々諦めていました。
一泊するような遠出は久しぶりだったのでとても楽しみです!
……あ、でもお父様は許してくれるのかしら? 婚約者とはいえ、お泊まりですもの。
「ジェイ様?」
「どうかした?」
「私は行きたいと思うのですが、お父様の許可を得てからでないと……」
ん? ジェイ様は余裕のある顔で私を見ている。
「勿論ローゼン子爵からは許しを得ているよ。だからルビナが行きたいと思ったのなら二人で楽しもう」
「は、」
はい。と返事をしようとしたところで……
「ねぇ、ジェイ叔父さんはルビナお姉ちゃんを迎えに来たんだよね! もう帰ったら? なんでいつもいちゃついてから帰るの?」
「マルクさん! いちゃつくだなんて……」
「ルビナお姉ちゃん、世間ではそれをいちゃついているって言うんだよ。もうさ、結婚式早めたらどう? 卒業と同時に結婚しなよ。その方が僕もジェイ叔父さんの家に遊びに行けるから」
マルクさんってば……同時に結婚だなんて。
「結婚式を早めるのは簡単な事なんだが、ルビナが家族と過ごす時間も大事だ。それに婚約期間中だからこうやってデートするのも楽しいんだ。いつかマルクにもわかる日が来るさ」
ジェイ様は私と家族のことも考えてくれる優しい方で、またジェイ様に対する好きが増えていく。にこにことジェイ様とマルクさんの話を聞く。
「わかる日が来るかな……まだ想像もつかないな」
そして帰る準備をしていたらジュリアンヌ様が見送ってくださいました。
「ルビナお姉ちゃん!」
私の事をルビナお姉ちゃんと呼ぶのはマルクさんとマルクさんの弟のアーサーさんです。アーサーさんは六歳でとっても可愛らしい男の子です。
「アーサーさん。お勉強は終わったのですか?」
「うん! ルビナお姉ちゃん遊ぼ」
「あら……私はもう帰るところでしたのよ。また今度遊んでくださいますか?」
「えー! もう帰ってしまうの? 寂しいよ一緒にご飯食べようよ。僕食事マナーを先生に褒められたんだよ?」
食事マナーを習得すると家族以外とも食事をすることができます。マナーを間違えると相手を不快にしてしまう可能性がありますので、貴族の家ではマナーは最重要とされています。侯爵家となるとそれは厳しい事でしょう。
「へぇ、もう褒められたのか、それは凄いな。努力した甲斐があったな」
ジェイ様がアーサーさんの頭を撫でました。
「ジェイ様もルビナさんもよかったら晩餐を一緒にどう? ルビナさんの家にはうちから連絡するわ」
ジュリアンヌ様に言われてジェイ様を見る。
「ルビナどうする?」
「ジェイ様がよろしければご一緒しましょう」
「義姉上、それではお言葉に甘えます。ルビナの家に連絡お願いします」
「えぇ。お義母様も喜びますよ。晩餐までに少し時間があるからアーサー、ルビナさんに遊んでもらいなさい」
「うん! ルビナお姉ちゃんお庭に行こう。花が咲いたんだよ」
「案内してくださるのですか? ジェイ様行きましょう」
アーサーさんに手を繋がれた。小さな手で本当に可愛らしいです。
「ジェイ様は私と来てもらいますわ。お話がありますのよ」
ほほほほほっ。と笑うジュリアンヌ様。ジェイ様は行っておいで……と言っていたので、お言葉に甘えました。
「ルビナお姉ちゃんこっちだよ!」
「まぁ! 本当に綺麗ですね」
色とりどりのヒヤシンスでした。見た目にも豪華で艶やかですね!
貴族の庭園はお金をかけてお客様に楽しんでもらうところでもあり、自慢の庭を見せたいが為にパーティーをしたりすることもあります。
ジェイ様が作った植物園は誰でも入ることが出来る場所なのですが、近々数ヶ月単位で休園するそうです。
「ジェイ叔父さんの植物園にも行ってみたいなぁ。ルビナお姉ちゃんは何度も行ったことがあるの?」
「えぇ。ジェイ様に連れていってもらいました。レストランもオススメですよ」
「今日テーブルマナーを褒められたら、外で食事もできる様になるからルビナお姉ちゃん一緒に行こうね」
「はい。是非」
その後晩餐となり、ご家族揃っての晩餐となりました。アーサーさんは上手にナイフとフォークを使っていて皆が微笑ましい様子でした。
「アーサー、その様子なら合格だな。今度みんなで外食に行こうか?」
侯爵様が言うとアーサーさんは喜んでいました。
「ルビナお姉ちゃんとジェイ叔父さんの植物園のレストランに行く約束をしたから、ルビナお姉ちゃんと行ってもいい?」
ち、ちょっとアーサーさん? ご家族を差し置いてそれは流石に……
「そうなのか? ジェイの店なら安心だ。ルビナさん頼むよ」
「ルビナお姉ちゃんと行くなら僕も行く」
マルクさんまで?!
「うちの子達は本当にルビナさんに懐いているわね。二人ともルビナさんに迷惑をかけちゃダメよ? ルビナさんお願いね」
行くのは構いませんが、私に任せて大丈夫なのでしょうか? などと考えていたらマルクさんに言われました。
「ジェイ叔父さんもどうせ来るんだから心配しなくても良いよ」
ジェイ様を見ると頷いていた。
「ジェイが子供達を預かってくれるなら、その日は夫婦でデートでもしようか?」
侯爵様がジュリアンヌ様に言ったらジュリアンヌ様も喜んでいるようでした。
「ダシに使われたね。しかし兄上には世話になっているから、ルビナも協力して欲しい。良いかな?」
こちらこそいつも侯爵家にはお世話になっているので、答えは勿論喜んで。です。
ジェイ様はマルクさんとの約束が植物園ですむのなら、願ったりだ。と言って笑った。




