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迷子のルビナ


「ルビナ! 近くにいるなら返事をしてくれ」

「ルビナお姉ちゃん!」



 顔を上げました。約束通り迎えに来てくれたみたいです! 嬉しくなり大きな声を上げました。淑女としては失格かもしれません。



「ここです! ジェイ様、マルクさん!」



「ジェイ叔父さんこの壁の向こうじゃない?」



「ルビナ、ここにいるのか?」


 どんどんと壁を叩くジェイ様に壁をノックしてここです。と返答した。



「そこから動くなよ」


「はい」


「周りに人はいないか?」


「はい、いません」


「マルクは脱出出来るよな? 出口で待っててくれ」


「はいはい。ルビナお姉ちゃん、あとでね!」


「え? えぇ、あとで?」




 ジェイ様は何をする気なんでしょうか?



 軽快な足音が聞こえてきて、ジェイ様が壁を乗り越えて来ました!


 


「きゃぁ!」





 ジェイ様が華麗に飛ぶ姿……着地も軽やかです。



「じ、ジェイ様……」


 バクバクと心臓がうるさいです。




「ルビナ! 良かった」



 ジェイ様に抱きつかれてしまいました。


「悪い、先程の子息の両親に捕まってしまった……」


「いえ、マルクさんとジェイ様を待たずに出歩いてしまった私が悪いです」



「いや。マルクと一緒ならいいんだ。ルビナは方向オンチなんだね。心配だから迷路は一人で入らないで欲しいかな」



 そういってジェイ様は笑いながらそっと離れていった。でもちょっと寂しい気持ちになりました。



「はい。迷路が苦手のようです」


 ジェイ様の腕をギュッと両手で掴んだ。


「迎えに来てくれてありがとうございます」



「マルクからルビナが出てこないと聞いて心配したよ。アラームが鳴る仕組みなんだろう? なんで鳴らなかったんだろうね? 運営に一言いっておこう。また迷子が出たら大変だからね」


 頭をポンと撫でられました。優しい大きな手です。



「ジェイ様?」


「ん?」


「空飛ぶジェイ様はとてもかっこよかったです。それに迎えに来てくれて嬉しかったです」



 背伸びをしてジェイ様の頬にキスをした。学園なのに大胆でした! 恥ずかしいとかより嬉しいの気持ちが勝ってしまいました。



「……ルビナが危機の時には必ず助けに行くよ」



 額にキスをされました。私の婚約者は世界一かっこ良いです!


 それからジェイ様は難なく迷路を攻略しました。



「ジェイ様、なんでこうも簡単に脱出しちゃうんですか!」


「法則があるんだよ。ルビナも覚えておいた方が良いかもね。囚われて迷路に閉じ込められる事があるかもしれないから」



 そんな事あります? 迷路に閉じ込められるだなんて。


「私が迷ったらジェイ様が迎えに来てくれるので、必要ありませんね」


 ふふっと笑うと、それもそうか。とジェイ様は言いました。



 手を繋いで、迷路から出るとマルクさんが待っていて……









「……またいちゃついていたの?」



 と呆れられました。



「そんな事してませんよ」


 と私は否定をしたのですがジェイ様は……


「そうかな?」


 と言って頬に指を当てた。ジェイ様に自分からキスをしたことを思い出してかぁっーっと顔が赤くなる。



「……していたんだね。ルビナお姉ちゃんは顔に出やすいんだから気をつけた方が良いよ」



「もう、ジェイ様っ!」


「良いじゃないか。それよりマルク早々に知らせてくれてありがとうな」


 そうでした! お礼を言わなきゃ。


「マルクさん、探しに来てくれてありがとうございました」


「なんでアラームが鳴らなかったんだろうね。ルビナお姉ちゃんみたいに出られなくなる人がいたら困るから、係の人に伝えておいたよ。迎えに行くのが遅くなってごめんね」


 マルクさんとジェイ様は同じようなことを言いました。


 マルクさんが既に係の人に報告していると言いました。せっかく楽しい催しなのだから、備品には細心の注意をして欲しい。と言ったら係の人は手元にある時計を全て確認していたようなので、もうそういった事は起きないと思う。ですって。偶然調子の悪い時計に当たっただけのようです。



「あ、これ景品なんだけどルビナお姉ちゃんにあげるよー」



「マルクさん凄い! 何分で脱出したんですか?」


「五分以内だったと思う。十分以内で早い脱出だって聞いたよ」



 景品はくじ引きだったようです。高級裁縫セットでした。


「とても高級な品だと思います! 有名店のハサミも!」


 このハサミは軽くて切れ味抜群という人気のものだ。決して買えない金額ではないのだけど今あるものでも十分だと思っていた。


「だって僕いらないし……くじ引きだったんだよ。貰ってよ」



「ルビナ、貰っておいたら? マルクが持っていてもしょうがない物だし、マルクもその方が喜ぶよ」


 ジェイ様がそういうのなら。


「マルクさん、ありがとうございます。遠慮なくいただきますね!」




 その後お礼にと、貰った裁縫セットでブックカバーを作って渡したらとても喜んでくれた。ジェイ様は面白くなさそうな顔をしていた。



「凄くハサミが軽くて使いやすくて……これはジェイ様に」



 クッションカバーを渡した。ジェイ様の植物園のバラだった。



「ワンポイントなので男性の方が使っても良いかな? と思いまして」


 ジェイ様はとても喜んでくれた。書斎で使ってくれるそうです。






 お返しにと結局毛皮のコートを貰ってしまいました……とても暖かいです。

 




 



 


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