最後の学園祭3
休憩時間になりました。ジェイ様は先程の子息の両親が来て、出ていってしまいました。
ジュリアンヌ様は学生時代の友人と偶然会ったようでお話に花を咲かせていました。
「マルクさん良かったら、一緒に学園祭を見てまわりませんか?」
ジェイ様がいるのなら一緒に過ごしたいと思いましたが忙しそうなので、ジュリアンヌ様に言付けを頼み、マルクさんと学園祭を回ることにしました。明日もジェイ様は来てくださるので、その時には二人で……
「うん。行きたい! ルビナお姉ちゃんはいつも何をして過ごしているの?」
教室から外に出ました。
「お友達とお茶を飲みながらお話をしたり、図書館で本を借りたりしています。図書館の本は持出禁止書籍などの貴重な本などもあるので週に何度か足を運びます」
「ルビナお姉ちゃんは本が好きだよね」
「えぇ。好きですね。マルクさんと同じです」
いつものように他愛のない会話をしていました。
「ここは何をしているの?」
ええっと、確か噂になっていた催し物です。
「巨大迷路だそうです。他国で流行っているようで二年生の官吏科クラスの方が数ヶ月かけてつくったそうです」
数ヶ月前から準備をしていて作業しているところを見たことがあります。凄く大掛かりだと皆さんも感心していましたもの。
「面白そうだね」
「マルクさんはこういったものがお好きですか?」
「うん。ルビナお姉ちゃんは?」
「苦手だと思います。迷子になって出られなくなると思います……」
「出発から三十分以内に脱出出来ない場合はスタート時に渡された時計のアラームがなるんだって。へー。それで三十分経つと係の人が迎えに来てくれるんだって」
「それは安心ですね。タイムの早い人は景品が貰えると書いてありました。マルクさんやってみたいですか?」
「うん。でも一人ずつしか入れないみたいだからやめようかな、ルビナお姉ちゃんが迷子になると困るしね」
「それなら迷子になったら助けに来てくださいね。約束してくださるのなら迷路に入りましょうか?」
「うん。必ず迎えに行くよ!」
必ず……って。マルクさん私が迷子になるのを見据えていますね。
それなら、と。まず私から迷路に入ることになりました。
『僕はとっとと迷路を攻略するつもりだからルビナお姉ちゃん、先にどうぞ』
マルクさんなら有言実行といったところでしょうね。
「わぁ……これは迷わない方がおかしいわね」
どこをみても同じような作りです。
とにかく足を進めることにしました。
「あれ? また行き止まり……?」
元に戻ることにしたのだけれど……
「なんでスタート地点に戻っちゃったの?」
それならば、と、先ほど行ったであろう道の逆を……
「あ、あれ?」
この道、通りませんでしたっけ?
手元の時計を見ると三十分経過……って! 無理だわ。私にこの迷宮を脱出するなんて無理なんだわ。
……あれ? アラームが鳴るんですよね? なんで鳴らないの? きょろきょろと周りを見るけれど人はいないのに声だけが聞こえてきた。
【クソ、また行き止まりか!】
【ここどこ?】
皆さん迷っているようです……あ。また行き止まりです。
疲れてきました……
二度とこの迷宮から出られないのではないでしょうか……
この迷宮を壊す時にようやく見つけてくれるとか……
疲れてしまって行き止まりでしゃがみ込みました。マルクさんが迎えにきてくれると言ったので、待っていた方が早いような気がしました。
たまたま空を見上げると青空で……
「いい天気だわ」
と呟いていた。
ジェイ様、心配してるかな? もう一人で迷路に入るのはやめよう……そう思っていた時でした。
「ルビナ!」
「ルビナお姉ちゃん、どこー?」
この声はジェイ様とマルクさんです。




