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最後の学園祭


~ジェイ視点~



「え? 学園祭ですか?」


「何をするの?」



 今日はルビナとピクニックへと来た。秋晴れといっていいような心地のいい日だった。冬物のコートをプレゼントしたいのに買い物は嫌だと言われてしまった。質のいい毛皮が入って来たのになぁ……絶対似合うのに。



「例年通りカフェですよ。一年生の時から人気なので学園側からもそれでと言われているそうです」



 ……困った。困ったぞ! ルビナのクラスは女の子しかいなくて、揃いの衣装を身を包み、自ら茶を淹れて自分たちが作ったお菓子まで出す。人気が出るのは分かる。


 何せ可愛い! 特にルビナはシルバーヘアーで儚げで優しくて人当たりも良い。自慢の婚約者なんだが、それを他の男に見せたくない!


 でも笑顔で楽しそうに話すルビナには言えない。



「学園祭のカフェは一日だけだったよね?」


 兄の時代は二日間だったそうだが、卒業して数年後は一日のみになった。去年も一昨年もそうだった。



「学園祭は人気だそうでチャリティにも繋がるので今年から催し物は二日間になりました。お茶の準備やお菓子の準備が大変なので、人数制限をする事になったので無くなり次第終了です。ジェイ様も来てくださいますか?」


 それは絶対に行く! 前日までに仕事を終わらせて必ず行く。


「もちろん行くよ。義姉上やマルクも行きたいと言っていたから来るかもしれないよ。義姉上はルビナと同じ学科を卒業しているから懐かしいと言っていた」



「まぁ! ジュリアンヌ様とマルクさんが? それは嬉しいですわ」



 マルクはルビナがお気に入りだから学園でのルビナを見たいんだとさ。ルビナもマルクと仲良くしているし喜ぶだろうとは思ったさ。


「一日中席をリザーブって出来ないのかな……」


 心配だ。エプロン姿のルビナは可愛い。



「……それはやり辛いですね。ずっとジェイ様に見られるなんて……」


「嫌?」


「クラスのお友達に揶揄われてしまいますよ。でも……嫌じゃない、です」



 なんて可愛い生き物だろうか! 頬をピンクに染めて恥ずかしがるなんて。


「ルビナ、」


 呼ぶと照れながら顔を上げて来た。そっと顔を近づける。



「だ、だめです、誰が見ているか分からないのに」


 恥ずかしがってぽすんと私の胸に頭を預けてきた。耳まで赤いとは……口付けはお預けとなったけど頭部にキスを落とした。



「いい風だなぁ」


 と言いながらも少し肌寒くなってきたので、ルビナに持って来たショールを掛けた。


「ふふふ。可愛い、ジェイ様ありがとうございます」



 暖かい素材のショールで、膝掛けにも出来る。ルビナ専用にして馬車の中に置いておこう。



 木陰でのんびりとしていたら、メイドがお茶を出してくれた。そしてルビナと目が合いなにやら合図をしていた。


「何かを頼んであった?」



「えぇ」


「何?」


「来てからのお楽しみです」



「ルビナ様、お待たせ致しました」


 皿に並べたクッキーだった。


「はいジェイ様、あーんしてください」


 一つ手に取り口に近づけるルビナ。言われた通りに口を開け食べさせてもらった。サクッとした口当たりでバターの香りがするシンプルなクッキーだった。


「これはルビナが作ったのか?」



「はい。家で練習をしました。ジェイ様にも食べて頂こうと思って持って来ました」



 素朴で優しい味わい。美味しい!


「お口に合いませんでしたか? チョコチップクッキーもありますよ」



 するとまた口に入れてくれた。苦めのチョコを使っているのか。美味いな。



「変わり種で、シェフから教わった紅茶クッキーです」



 放っておくと口に入れてくれる仕組みなのか……なるほど。これも美味いな。



「どれが一番お口に合いましたか?」


 じっと見つめてくるルビナ。はぁ、可愛い。



「全部美味しかったよ。私のために作ってくれたんだから今まで食べたクッキーの中で一番美味いよ」



「もぅ! 答えになってないではないですか」



「本当だって! 三種類も大変だっただろう? ありがとう」


「いつものお礼です。ジェイ様からは貰ってばかりですもの。そうだ、もう一つありました」


 ジェイがルビナに贈ったポシェットから包み紙が出て来て渡された。


「これは何? 開いてもいいのかな?」



「はい、どうぞ……」


 やけに緊張しているルビナの前で綺麗に包装された包みを開く。



「ハンカチ?」



 大判のハンカチだった。



「はい授業で刺繍をしました。提出していたものが漸く戻ってきて……ジェイ様を想って刺繍しました」


 イニシャルと家紋が入っていた。


「細かい所まで大変だっただろう?」


「その分やり甲斐はありましたし、点数はA評価でしたよ」


 婚約者から貰う刺繍したハンカチ……こういうシチュエーションに憧れていたのはナイショだ。嬉しいものだ。



「大事に使わせて貰う、とても嬉しいよ」



 ほっとするルビナ。刺繍はA評価を貰ったというだけあってとても細かい刺繍がされていて、ルビナの人柄がわかる様な物だ。大事に使うと言ったが使わない、いや使えない。




 私は単純だな……





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