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ジェイ×侯爵家


「あら、ジェイ来たの?」


「今執事から聞きましたよ! ルビナの前で物騒な事をしないでください! 嫌われたらどうするんですか!」


 入るなり、母を責めた。


「こんな事もこれからある。という事よ。あの令嬢ったらジェイの嫁になる気満々で、侯爵家の名前を使って無理やりドレス工房に予約なしで入ったり、自分より格下の身分の令嬢を貶したり最近は特に酷かったのよ。ルビナさんが元婚約者を平民に落としたとか、ジェイを誑かしたとかという噂を、」


「あり得ません! そんな噂が出回ることのない様に手は打ってありました。兄上や義姉上にも協力していただきました!」



 ジェイがそう言うとジュリアンヌも呆れた口調で言う。



「元婚約者との事はともかく、ジェイ様に頼まれて私の方でも噂にならぬ様に、各方面に通達しておきましたし、お友達にも言ってありましたから誰も信用していませんよ。噂にならなかったのが証拠です。ルビナさんはもう家族ですから全力で守ります。ジェイ様は良い子を見つけましたわね。あのマルクがすっかり懐いてしまうなんて」



 マルクは子供の頃から大人の汚いところを見ているので、精神的に大人びている。外見を取り繕うだけの人間を見抜く力がすでに備わっている。



「……ルビナは気の弱いところがあります。暗部は見せたくないと正直思いますが、母上と義姉上にカバーして頂きたいと思います。よろしくお願いします」



 母と義姉に頭を下げた。




「はい。お任せください」

「もちろんよ」



 義姉上と母からの返事が返って来た。



「ジェイの結婚相手となると、侯爵家との付き合いは切っても切れない関係になりますから、ルビナさんには覚えてもらいたい事があるのよ。そうじゃないと後々ルビナさんやジェイが恥をかく事になるから、ジュリアンヌさんも助けてくれるしルビナさんは素直だから教え甲斐があるわよ、ねぇジュリアンヌさん」



「はい、ルビナさんは一生懸命で良い子ですわよ。でも良い子すぎると困るところもありますから……ね」


 義姉は良い子すぎると周りに騙されたり、嵌められたりすると言いたいのだろう。特にマウントをとりたがる貴族達のカモになるかもしれないという事。



「そういう汚いところはルビナに見せたくありませんが、彼女はそれを求めていないでしょうね……歳を重ねる毎に目に入ってしまうでしょうし」




「ルビナさんは伯爵家の妻として家を切り盛りしていかなければなりませんからね。使用人が足りなければそちらに回すから、執事長に言いなさい。信用出来る人間を育てるのは大事な事だけど、信用出来る人間に育てさせるのが一番よ」


 ルビナを女主人として尊敬してくれる使用人が必要だし、ルビナにはそれに応じる様な主人になって欲しい。


 質の悪い使用人やルールを守れない使用人は必要ない。


 侯爵家の女主人として培って来た経験で母は言ってくるのだから間違いない。侯爵家の使用人はそうやって育てられて来て、侯爵家で働いていることを誇りに思っているしそういう家でありたいと思った。



「ジェイ様、ルビナさんはマルクと図書館に居ますよ。私たちと話が終わるとマルクはすぐにルビナさんと図書館に行くのよ。マルクはルビナさんの事が好きなんですって。もちろんお姉様としてね」



「……そうですか。家族として認められてルビナも嬉しいでしょうね。そろそろルビナを迎えに行って来ます」


「えぇ、ルビナさんにまた来週お待ちしています。と伝えてください」




******




「お義母様良かったですね。ジェイ様がこうやって来てくださる様になって」



「えぇ。留学に行ってから呼ばない限り家に近寄らないし、夫から貰った爵位も領地なしを選ぶし、店をするといってもうまくいく可能性も分からなかったし、王都郊外の土地を買って植物園を開くとか何を考えているかさっぱり分からない子だけど、落ち着いたみたいね」



「お店の売れ行きも順調ですし、植物園はいろんなアイデアのおかげで市民の憩いの場になっていますし、劇団を呼んだりバレエ団を呼んだり忙しそうですけど、楽しそうですわよね」



「気楽な三男と揶揄されていたけれど、あの子がやりたい事をして成功しているのだから親としては見守りたいわ。私も甘いわよね」



「こうやってルビナさんが侯爵家に通ってくれるようになって、ジェイ様も顔を見せてくれる事を思うと、婚約者で男の人は変わるのですね」



「ジェイは面倒を見たいタイプだったのね。ルビナさんの持ち物すべてジェイからのプレゼントなんですって。ローゼン夫人とこの間お会いした時に聞いたのよね……」



「まぁ……ジェイ様は貢ぐタイプでしたのね。それだけルビナさんがお好きなんでしょう」


「大事にしているみたいだから、良いんじゃないの? ルビナさんを泣かせることがあったらボコボコにしてあげましょうか」


「武力では敵わないので、マルクに精神的に痛めつけさせるというのはどうですか?」


「良いわね、それ。子供に言われるのが一番嫌よね」










「そんな事にはなりませんよ、ご安心を」


 スタスタと部屋に入り、忘れた帽子を取り被るジェイ。



「ルビナを傷つけるくらいなら自分が傷ついた方がマシです。それでは失礼」




「ですって」


 とジュリアンヌ。


「あれよ! 長年恋愛してなかったから加減がわからないのね。大丈夫かしら?」


「……大丈夫ですわよ。ルビナさんも受け入れているのではないですか?」



 二人でコロコロと笑っていた。


 


 その頃図書館では──


「っくしゅ」


「ルビナお姉ちゃん寒い?」


「何かしら? 急に寒気? が」



 キョロキョロと辺りを見渡すルビナだった。



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