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お茶会3


「おばぁさまはお茶会が好きだから、よくお客さんを招いてたんだ」


 図書館に着き、いつものソファにマルクさんと座りました。


「はい。よくお茶会をされていたと聞いています」


 お茶会という名の情報交換会。女性は集まってお話しするのが大好きで、もちろん私も友人達とのお茶会は好きです。



「お茶会って夫婦揃っての時や女性のみを招待する場合があるんだけど、夫婦で来る場合はまだ良いんだ。女性だけのお茶会って凄いんだよ。マウントの取り合いがさ」


 

 貴族社会の恐ろしいところです。うちは子爵家なので高位貴族のマウントと聞くだけで、背筋が凍りつく思いです。


「想像ですが……恐ろしいと感じますね」



「僕は子供だから、何を言っても分からないとか思われていたんだと思うけど、おばぁさまや母上がいなくなったら凄いんだよ。さっきの令嬢が正にそうだけど、幼い頃から嫌いだった。ジェイ叔父さんもなんとなく分かっていたと思うよ。おばぁさまが早く相手を見つけて欲しいと言って令嬢を紹介していたけれど、良い人は早く相手が見つかるから」



 笑いながらマルクさんはいいます。アリスさんも他の方も皆さん優しくておっとりとした感じの方。という印象です。皆さん婚約者がいましたね。それに……



「マルクさんは幼い頃から大人の嫌なところをたくさん見てこられたのですね……」



 大変でしたでしょうに、だから先ほどのように大人顔負けの断罪が……?



「ふふっ。そうなんだ。でも侯爵家の嫡男に生まれたからしょうがないよ。外側だけではなく内面を見なきゃこの先、生き残れない。って言われるんだけど、本当にそう思うよ。ジェイ叔父さんがルビナお姉ちゃんの事が好きなのがよくわかるよ」



「え? マルクさん……」



「僕の事、一人の人間として見てくれるでしょう? 侯爵家の嫡男とか関係なしに本を一緒に読んでくれたり、お茶をしてくれたり、話を聞いてくれたり。ルビナお姉ちゃんといると気を張らなくてもいいし、子供でいて良いって思えるから」



 侯爵家の嫡男だとは思っていますよ? でもマルクさんはマルクさんです。そう思い首を傾げる。



「それに下心なしで褒めてくれるし。なんとなくわかるんだよね……そういう感じ。ジェイ叔父さんもそういうところに惹かれたんだよね?」



 チラッと振り向くとジェイ様が近くまで来ていた。


「! ジェイ様?」



「迎えに来たんだ。母がよからぬことを企んでいるのではないかと、気になって」



「もう来ちゃったのかー! せっかくルビナお姉ちゃんと本を読もうと思っていたのに」



 ちぇっ。とマルクさんが言いました。



「嫌なことがあっただろう? ルビナにそんな物を見せるな! と母に注意して来た。義姉さんも母に付き合う事はないのに……マルクはますます兄上に似てくるな」


 ジェイ様はマルクさんの頭をわしゃわしゃと撫でた。


「子供の頃から大人の汚い所を見ておけって言ったのは父上だよっ! その父上が僕はジェイ叔父さんに似てるって言うけど?」



「それはだな、兄上も留学をしたがっていたんだが、あの頃は国境周辺が物騒だったから叶わなかったんだ。だから私が留学したいと言った時は快く行かせてくれた。マルクも反対されないだろう?」


「うん。行って見聞を広めなさいって。ジェイ叔父さんの様に自由な発想や付き合いは大事だって言ってた」


 ジェイ様のお兄様は寛大な方の様ですね。ご自身も行きたかっただろうけれど、快く送り出してくださる様な方。



「兄上は何かをしたいといっても反対はしない。諦めるくらいなら言うな。と言われるぞ。マルクが本当に留学したいのなら帰って来た時に行ってよかった。と思えるよう努力しろよ」


「うん。ジェイ叔父さんみたいに留学中は真面目に勉強して友達を作って、帰って来てからのんびり僕の相手を探すよ」


「いつ出会うか分からないから、そこはノーコメント!」


 友達同士の様な会話ですね。思わず笑みがこぼれました。



「ふふっ。ジェイ様とマルクさんは仲が良いのですね」


「ルビナとマルクも仲良く見えたけど?」



「ルビナお姉ちゃんは優しくて可愛いお姉ちゃんだから、そこは許してくれなきゃ心が狭いって思われるよ? 母上も妹が出来て嬉しいって言ってるし、父上もルビナお姉ちゃんに泊まっていけば良いと言っていたし、もう家族だよね」



 ジェイ様のご実家の方はみんな良い方ばかりです。



「ルビナは無害だからな……」


 貴族の派閥とか? 親同士のあれこれとか? ありませんものね。侯爵家に居座るだなんて恐れ多いです。



「侯爵家は敵も少なからずいるからね。あ、例の令嬢はまだジェイ叔父さんの事諦めてなかったみたいだよ!」


「ちゃんと断っていた……ルビナ変な誤解はしていないだろうね? あの令嬢とは全く、誓って何もないからね」


 ギュッとジェイ様が手を繋いできました。


「はい。大丈夫です。マルクさんが守ってくれましたから」


 マルクさんにありがとうと言って微笑んだ。


「ルビナお姉ちゃんの役に立てて良かったよ! ってジェイ叔父さん怖いんだけど……」


 ジェイ様の方に視線を向けると微笑んでくれた。



「ジェイ様もありがとうございます。悪い噂を流そうとしていたのを止めてくれたのはジェイ様でしょう? モリソ、」 


 モリソン子息との婚約話。と言おうとしたら、唇に人差し指を差されました。



「それはもう過去のことだから、忘れよう。そんな噂を流したところで自分に返ってくるだけだ。だから今回の様な事が起きた。それに私はそれも含めたルビナを愛していると伝えたよね?」


「ジェイ様……」



 頬にキスをされた。ジェイ様のご実家でこんな事をしていると背徳感が……



「ちょっと、いちゃいちゃするなら帰ってくれる? よく甥の前でキスなんて出来るね。ジェイ叔父さんがルビナお姉ちゃんの事を好きだと言うことがよく分かったよ! ルビナお姉ちゃん、またね! 今度こそ本を読むの約束ね」





 マルクさんに追い出される様に帰されてしまいました。






 

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