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広告塔

「もう結構です……」


 ある日ジェイ様のお屋敷に行くとバッグやアクセサリー靴といった女性向きの小物がたくさん並んでいました。私へのプレゼントのようですが……多すぎます。使いきれないのです!


「ルビナが身につけると売れるんだよ?」


 デザイナーさんもにこにこと微笑みながらスケールを持っていました。これはドレスも新たに作るんですよね?


「でもこんなに要りませんよ!」


 お父様は貰っておけばいい。なんて言っていましたが、貰いすぎて申し訳ないレベルです。


 お父様もお母様も“また増えたね”なんて呑気に言い出す始末です。

 “そういう商売をされているのだから諦めなさい”ってお母様は言った。


 私が使わなくなった物をメイド達にあげても良いってジェイ様はいうけれど、ジェイ様から貰ったものをあげるのも気が引けますし……それに全て可愛くて気に入っています。


「前にも言ったけど私にもメリットがあるって話は覚えているかな?」


「はい。香水の時ですよね」


 例の香水は結局販売することは無かった。凄く気に入った香りだったから、残念に思っていたら私専用にして同じレシピで今後販売するつもりはないんですって。

 香水と同じ香りの石鹸やバスオイルまで作ってくれて、いつもあの香りに包まれているのです。

 


「ルビナが身につけるとクラスで話題に上がるだろう? ルビナのクラスは令嬢ばかりで流行りに敏感だから、こういってはなんだけど食いつきが良いんだ」


 確かに流行りには敏感ですし、令嬢達は新しいものを日々求めています。


「かと言って、毎回プレゼントをしていただくわけには」


「……報酬だよ。前回のブラックパールは予想を上回る売り上げだった」


 アクセサリーにしたり小物に取り入れたり、一時はブラックパールが市場から消えたみたいです。興味の有無が分かるエピソードですよね。


 私が身につけていて、“珍しいアクセサリーですね”とある夫人に声をかけられました。

 隣にいたジェイ様がパールについて話し始めると耳を傾けていた令嬢が“どちらで買えますか?”と聞いてきました。

 ジェイ様は“まだ試作段階です”と言うと、購買意欲が湧いてきた令嬢が手に入れたくなって、それがどんどん広まって……試作段階ではあったのは間違いないのですが、予約が殺到した。というのが事実です。ソフィアさんも気になっていたようで、ジェイ様のお店で予約してくれました。



「学園を卒業したら今まで通りというわけにはいけませんよ?」


 私は来年学園を卒業するんですよ? 分かっているのかなぁ。


「うん。それはもちろん知っているよ」


「広告塔の意味がなくなってしまうのはお分かりですね?」


「……? 何でかな、聞かせてもらえる?」


「学園を卒業すると毎日のように友人達と会う事はなくなります」


「そうだね」


「だからですよ!」


 不思議そうな顔をするジェイ様。


「お茶会にはよく招待されているよね? 今は参加する夜会も少ないけれど、これからは増えるだろう?」


 ……!!


「そ、そうですね。忘れていました」


「学園を卒業したら結婚する為に侯爵家(ジェイの実家)に通ってくれるのでしょう?」


 ジェイ様のお母様は私が卒業をしたら結婚するまでの間、領地から戻ってきてくれて、家のことやお付き合いのある家を教えてくださるのだという。


「母はお茶会が好きですからね。身につけてどんどん紹介してください。レオナルドからもお茶を輸出したいと話が上がっていますから、あのお茶も紹介してくださいね。私はこんなに可愛くて商品をアピールしてくれる婚約者がいて幸せ者ですよ」


「……精一杯ジェイ様のお店のアピールをします」


 負けました。


「頼むよ」


 頬にキスをされて恥ずかしくなる。デザイナーさん達の目が……




「あ、もちろん気に入らないものや、好みではないものを身につける事はしなくて良いから」



 ジェイ様は私より私の好みを知っていると思います。



「ルビナが身につけていて楽しくなるものを選んで欲しい」



 ドレスの生地を選びながらジェイ様が言う。



「そんな事を言われたら断れませんね」



「可愛いルビナを見るのが私の趣味でもある。そして売り上げにも協力してくれて一石二鳥だよね」




 私の仕事はお店の宣伝係です。




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