報告をします4
長期休暇が終わり学園が始まった。その日のランチタイムでの事。
「遅くなりましたが、お土産です」
ビーズの髪飾り、キャンディ、シルクのハンカチをそれぞれに渡した。
「まぁ、素敵ですね」
「可愛らしいですわ」
「嬉しい、お揃いですのね!」
ソフィアさん、デボラさん、レイチェルさんが喜んでくれた。
「旅行は楽しかったですか?」
「はい。とても」
ルビナが顔をピンクに染めると、ソフィアはこれは何かあったな! と確信した。
「伯爵様と何かありましたね!」
きゃぁきゃぁと話は盛り上がる。
「皆さんにお伝えしなくてはと思っていました」
「「「はいっ」」」
三人はドキドキしながら続きを待つ。
「実はジェイ様とお付き合いをする事になりました……」
ルビナは恥ずかしそうに三人に伝えた。
「まぁ!」
「良かったですわ!」
「お似合いですもの!」
きゃぁきゃぁと話は盛り上がる。
「でもお付き合いなんですの?」
ソフィアはルビナに尋ねた。
「将来を見据えた? お付き合いなので、いつかは婚約すると思います」
「良かったですわね! 伯爵様は素敵な方ですので友人としてうれしいですわ」
ソフィアが言うとうんうん。と頷くデボラとレイチェル。
「私たち、この旅行できっとうまくいくと思っておりましたのよ!」
デボラが興奮気味に言う。
「学園祭の時にルビナさんが淹れたお茶を飲む伯爵様がとても嬉しそうで、早くくっ付いちゃえ! なんて思っておりましたの」
レイチェルも興奮気味だ。
「旅行の話を聞かせてください! なんでお付き合いする事になったんですの!」
ソフィアも早く早く! と興奮気味。
「ジェイ様が、優しくて、素敵すぎて……他の女性とお話をしている姿を見たら胸が苦しくなって──」
ルビナは素直に友人達に話をしたら。
「それで、なんて告白をされましたの?」
「……内緒です」
これ以上ないほど顔をピンクに染めるルビナ。
「もうっ! そんな可愛らしい顔を見たらこれ以上聞けませんわね」
「そのお顔を見るとお二人の関係性が良好であるという事が分かりますもの」
「本当ですわね! ルビナさんおめでとうございます」
「ありがとうございます」
友人達に祝福されてルビナはホッとした。
その後ルビナはジェイの家族と会う事になった。家族で侯爵家に招かれてジェイの実家へ行った。
ジェイの兄達は歳が離れていて、家を継いだ長兄は三十歳、次男は二十八歳との事。
ジェイの両親は長兄に家督を譲り領地経営を手伝いながらのんびり過ごす事にしたようだ。
「領地に帰る前に、こんないい話が聞けるとは思わなかった。ルビナさん末長くよろしく頼むよ」
ジェイの父が言う。
「ジェイ、ルビナさんを悲しませるような事をしてはいけませんよ」
ジェイの母もモリソン子爵家との事を知っているようだ。
「ジェイ良かったな!」
「可愛い妹が出来るのは嬉しい」
ジェイの兄達も歓迎している。
両親達は今後の話をすると言い、ルビナとジェイは出かける事にした。
「これでお互いの家に報告は終わりですね」
「はい」
「後戻りはできませんよ?」
「ふふっ、しませんよ」
「家族に報告というのは中々疲れますね。カフェに入ってお茶を飲みませんか?」
「はい、良いですね」
そっと手を出すジェイにどうすれば良いかわからないルビナ。
「手を繋いでも構いませんか?」
「はい」
手を繋いで歩き出す二人。初々しい感じが漂ってくるようだ。
「良い天気ですね」
「はい」
やけに緊張気味の二人は会話が続かないようだ。そしてお目当てのカフェへと着いた。
「ここはミルクレープが美味しいようですよ」
「美味しそうですね、それにします」
コーヒーと紅茶、ミルクレープを二つ頼んだ。
「ジェイ様は甘いものを召し上がるんですね」
「はい、訓練で疲れた時にはみんなでケーキを食べたりもしましたよ。緊張から解放され、せっかくなのでルビナ嬢と食べられたらと思いました」
「ふふっ。ジェイ様がご友人とケーキを? 大きな体でケーキを食べる姿を想像すると愉快ですね」
「はい。一つや二つではなくホールで食べている奴もいました」
「まぁ! すごいですっ!」
「はじめは男達だけでカフェに行くのは勇気が要りましたが、慣れてくると平気になって月に二、三回は行きました」
ジェイの愉快な友人の話をしていると注文した品が運ばれてきた。
「このクリーム美味しいですね。今度友人達と来たいと思います」
「それは良いですね。良かったら帰りに私の店にも寄ってください」
「友人にジェイ様のお話をしたんです。改めて紹介をしても良いですか?」
「はい、喜んで、お待ちしていますよ」
お互いの家族に紹介がすみ、本日から真剣交際がスタートとなった二人だった。




