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報告をします


 ルビナとジェイの関係性が変わる旅が終わろうとしていた。船に乗り港町に着き、一泊してから明日には帰宅となる。旅での最後の晩餐となったホテルのレストランにて。


「ルビナ嬢、どうかしましたか? 食が進んでいませんが、お口に合いませんでしたか?」


 ルビナの食が進んでいないようで、ジェイは心配になり声をかけた。


「え? あ、すみません。少し考えごとをしていました」


 お互いの気持ちを伝え合い、少し距離が縮まるかな? などとルビナは思っていた。しかしジェイは今まで通りに振る舞い、変わらず優しいのだがあまりにも変わらなすぎて、本当に付き合うことになったのか? とルビナは思った。


 ジェイと付き合うことになった事を家族に話そうかと思っていたが、もしかして都合の良い夢だったのではないだろうか? とも思い始めていた。



「ご自宅に戻った際の事ですか?」


 ! なぜそれを?! と動揺し始めるルビナ。



「ははっ。当たりましたね。実は先程子爵家に手紙を出しました。明日の夕方に到着予定なので、お時間をください。と書きました」


「それは……どういった時間なのでしょう?」


 旅行の思い出を語る会? 無事に着いたという報告? ジェイ様が何を考えているか分かりません。


「それはもちろん、ルビナ嬢とお付き合いをさせていただくことをお許しください。と言う報告ですよ」


「え?」


 ……やっぱり夢ではないようだ。とルビナはほっとした。


「驚く事ですか? 私達は思いが通じ合ったんですよね?」


 真剣な眼差しでジェイがルビナを見てきた。


「えぇ。夢でなければ……」


「……夢ですか。それはショックです、現実ですよ!」


「そうですよね? あまりにもジェイ様が普通だったので、私だけが浮かれているのかと思っていました。お酒がみせた幻惑だったとか……」


 アルコールのせいで都合よくジェイと付き合いをしている。と勘違いしてしまったのではないかと、ルビナは昨晩中々寝付けなかったようだ。


「……きちんと子爵に報告して、了解を得てからルビナ嬢との仲をもっと深めていけたらなどと思っています。きちんと送り届けるまでが今回の旅です。私を信用してルビナ嬢を預けてくれましたので、この旅で子爵を裏切るわけにはいけません」


(……言って欲しかったおかげで寝不足になったではありませんか。ジェイ様らしいといえばそうなのかもれません)


「そこまで考えてくださっていたのですね。もっと早く伝えてくだされば良かったのに……」


 ルビナは少しだけ、寂しいと思った気持ちが晴れたようだ。


「すみません。ちゃんと順序を守ってお付き合いしたいと考えています。それに子爵に交際を断られてしまったら、どうしようなど考えていました」


「それをいうなら、私こそ侯爵家に受け入れていただけるか……」


「あ、それは問題ありませんよ。父はルビナ嬢と会って、可愛らしいお嬢さんだ。なんて言っていましたし……実は子爵とも、」


「お父様がなにか?」


「……植物園のオープン記念の時に、父と子爵が既に話をしていまして……私がルビナ嬢に好意を抱いている事は二人ともご存じですので……外堀を埋めるようで申し訳ありません」


「そうですか……」


(……ジェイ様って強引なところもあるけれど、引くところは引いたり駆け引き上手なのかもしれません。大人ってずるいです)



「ルビナ嬢、その、怒っていますか?」


「怒ってなどいません。でも隠し事はもうやめてくださいね!」


「もちろんです。貴女の嫌がる事は絶対にしません。約束します」




 


 憂いがなくなったルビナ、今晩はぐっすり眠れそうだ。



 




 

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