披露パーティー
鏡の前に立つルビナ。
「ねぇ、リリ、私こんな宝石持っていた?」
グリーンのドレスにルビー? かな……ルビーがリボンに形どられていて可愛い。って! やっぱり見た事がない。
……すっごく可愛いけれど! ドレスに合っているんだけど何? これ!
「ジェイ様からのプレゼントですよね? ドレスと一緒に送られてきて、このドレスにはこちらの宝石をと言われましたよ。さすがジェイ様だと思いました。ルビナ様にお似合いですもの」
「……こんなに貰えないわよ」
「? ジェイ様がくれるというのでしたら貰っておきましょう。身に着けるときっと喜ばれますよ」
「……でも、」
コンコンっとノックをする音。
「お迎えにあがりました。準備はできましたか?」
扉の外からジェイ様に声をかけられた。かちゃりと扉を開けるルビナ。
「お待たせしました……」
扉を開けるとジェイ様がブーケを渡してくれた。
「これはルビナ嬢に。それとこれはリリさんに」
リリには焼き菓子を渡していた。
「まぁ、私にまで……よろしいのですか?」
「えぇ。今日リリさんには留守番をお願いするのですからお茶の時間にでも召し上がってください」
ジェイ様、リリにも気を遣ってくれた。嬉しい……
「やはりルビナ嬢にはグリーンがお似合いですね。以前デートの時にピンクの小物を差し色にしていて、とても似合っていたのでそれを思い出しますね」
あ、そうだわ!
「ジェイ様、宝石まで用意してくださったのですか……」
「それは当然ですよ。ドレスに合うアクセサリーをプレゼントしたくて……異国の地に着いてきて下さったお礼です」
「……でも」
「すみません。勝手な事を。でも私はルビナ嬢にそんな顔をさせたいわけではないのです。私は単純なので、ありがとうと一言言ってくださるだけで満足なんですよ?」
「ジェイ様、たくさん用意してくださり、ありがとうございました。嬉しいです」
「はい。気持ちを受け取りました。それでは行きましょうか」
「はい。リリお留守番お願いね」
「行ってらっしゃいませ。楽しんできてくださいね」
******
「会場はここですよ」
「邸宅? の様な感じなのですね」
「パーティーなどをする際に借りる事ができる様です。ここはレオが購入してこれから貸し出しをする様です。自らパーティーで使い、元王族として付加価値を付けてそれから貸し出すという魂胆ですね。商売上手だと思います」
へぇ。すごい……
ジェイ様と会場に入ると既にたくさんの人がいた。
「大きい人が多いですね」
「ははっ。それはそうですよ。レオの友人ですからね」
「ゴリラというかクマさんのようですね」
のそっとした感じ?
「ジェイ! 可愛い子を連れているじゃないか! やるなぁ」
クマさん達がジェイ様を囲んでバンッと背中を叩いた。
「ルビナ嬢これは私の学生時代の友人達です。怖がらせてしまって申し訳ありません」
皆さん背が高いので見上げる形になる。
「ジェイ様のご友人の方々、初めましてルビナ・ローゼンと申します」
ドレスの裾を摘んで挨拶する。
「俺たちは平民なのでファミリーネームはありませんのでどうぞ気軽に呼んでください」
四人の男性が自己紹介をしてくれた。そして歓談をしていると体格は大きいけれど皆さん、レオ様やジェイ様と友人というだけあって、気さくな方だという事がわかりました。
お仕事は街の警備を担当しているのだそうです。街中にも警備の方がたくさんいましたね。この方達のおかげで夜も安心して歩けるのでしょうね。
それからしばらくすると先ほどの女の人がやってきた。
「ジェイ様!」
「アンナさん、先ほどはどうも」
アンナさんは既にお酒を飲んで楽しんでいる様でした。体のラインにピッタリフィットしたドレスが大人っぽい雰囲気でした。実際に大人ですけれど。
ジェイ様に近寄り話をしていた。胸が痛み出した。
「ルビナ嬢、どうかした? 何か飲む?」
「あ、はい。そうですね」
ジェイ様のご友人が飲み物を渡してくれた。
「令嬢に人気があるそうだ。俺たちには甘すぎるから分からないけど」
体格が良いので飲む量も食べる量も桁違いなんですって。飲み会をよくするそうで、酒場で力比べが始まると盛り上がるのだそうです。
「ジェイ様からもお聞きしました」
くすくすと笑った。楽しい方達だわね。ジェイ様は相変わらずアンナさんと話をしていた。
ジェイ様はアンナさんと……
そんな事を思っていたらレオ様が来た。
「やぁルビナちゃん、よく来てくれたね。嬉しいよ、楽しんでる?」
「この度はおめでとうございます。招待頂きありがとうございます」
ドレスの裾を摘んで挨拶をした。
「堅い挨拶は抜きにしよう。今夜は無礼講だよ。ほらこいつらも頭なんて下げてない。みんなが楽しんでくれたらそれで良い」
はっはっは……と笑うレオ様とご友人達。良い関係性なんだわ。元王族と平民でも関係ないみたい。レオ様は身分に拘らない人でしたね。
「ルビナちゃんちょっと良い?」
「はい」
そういうとすっとご友人達は少し離れた。ぱっと見ガサツな感じがしたけれど(失礼)こういう所なのね。
「今回の件で君がノーと言えない事を知っていて招待した事、本当に悪いと思っている」
頭を下げるレオ様。こ、困ります!




