表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/100

ジェイの学生時代


「この劇場によく来ていたんですよ。その時に劇団員と知り合いました」


 今では人気になっていて各国を回っている。そしてジェイ様に連れて行って貰ったのが既に懐かしくなりつつある。


「学生時代からよくここへ来ていたのですね?」


「はい。レオの言う通り午後の訓練をサボってきてました。と言っても訓練は自主練でしたけどね」



 今日はバレエを観に来ていた。興味があるといっていたのをジェイ様が覚えていてくれて、滞在中にチケットを取ってくれたようです。



「美しかったです。ジェイ様本当にありがとうございます。良い思い出になりました」


 また来たいな……



「喜んでもらえた様で何よりです。どうしましょう、まだ少し時間があるので歩きましょうか?」


 暗くなってきているけれど街灯が明るくてたくさんの人が歩いていました。


「はい。夜風にあたるのも良いですね」


 バレエを見た興奮が冷めてなかったので、少し涼みながら歩いて帰るのも良いですね。暗くなってきて外を歩くなんてした事がありませんし、悪い事をしている様でどきどきしてしまいます。

 お母様が聞いたら驚くかもしれませんね。帰ったらお話ししてみましょう。



「ホテルまでは歩いて十分ほどですが、先に食事をしましょう。川を渡った先にお店があるんですよ」


 行きは馬車で来たので、風景をゆっくり見る事がありませんでした。歩いてのんびりと周りを見渡すのも良いですね。橋を渡る為に川を見ると……



「わぁ。川面が光っています。ジェイ様、あれはなんですか?」


 青白い光が幻想的で美しい。きれい……


「あれはこの地方にしかいない虫なんですよ。この時期になるとたくさん集まってきます」


「虫なんですか! 美しい光を見せてくれてありがとうございます。良い思い出になりました」


 あんなに綺麗な虫がいるなんて……



「ふふっ。虫にお礼を言う人を初めて見ましたよ。令嬢に虫と言うと嫌がるかと思っていました」

 

 ジェイ様が笑っていた。


「でも確かに綺麗ですよね。この景色をルビナ嬢と見ることが出来て良かったです」


「はい、私も。この国に来てから楽しいことばかりです。見たことのないものに触れて、体験して。全てジェイ様のおかげですね」


「満足してくださった様で良かったです。ところで明日はピクニックに行きませんか?」


「ピクニックですか?」


「街で買い物をして、首都を見下ろせる丘の上でのんびりしませんか?」


「ジェイ様はいいのですか? お友達に会いに行かなくて。お仕事関係の方とか」


 留学時代の友人に会いたいですよね? 毎日私に付き合ってくれて申し訳ないですもの。


「あぁ、それは結婚式で会うので問題ありませんよ。せっかくですから案内させてください」


 ……ジェイ様がいつもの通り笑ってくれるのだけど、月明かりに照らされてすごく……




 その後行ったレストランは野菜がたっぷりで美味しくいただきました。食後のお茶はテラスで出してくれて、ガーデンはライトアップされていて夢心地でした。ジェイ様は私を喜ばせる天才なんだわ……夢なら覚めてほしくないなぁ。


 ******


「明日は結婚式があるので、早めに帰って体を休ませましょう」


 レディには準備があるのだから遅くまで連れ回すことは出来ないとジェイは思った。


「はい。明日も晴れると良いですね」



「そうですね。このまま晴天が続いてくれれば良いですね」


 そんな話をしながら首都の街を歩いていた。予約していたサンドイッチや簡単につまめそうなオードブルを受け取り、街で人気の屋台の前に着いた。


「この屋台からは甘い香りがします」


 興味ありげに屋台を見るルビナ。


「先日屋台での食事が楽しいと言っていましたので、ここで人気の屋台のものも購入しましょう。持ち帰りもできる様ですから」


 クレープが人気で気軽に街歩きをしながら食べられるというところがウケている。貴族の子女は食べ歩きという事に抵抗があるのか、持ち帰って楽しんでいる様だ。元々屋台は気軽に食べられる様に販売しているのだがそれを買って家で家族と共に楽しむということもあるそうだ。


「わぁ、美味しそうですね」


「いま私の侍従が並んでいるので、私たちはドーナツを選びましょう。たくさん買ってみんなでいただきましょう」


 今から行くピクニックは総勢十人。国を出てからみんな疲れているだろうから、のんびりとランチをしてお茶を飲んで過ごす。どこにも行かずにホテルで過ごすだけでも彼らは休めないし、みんなで食事をする事で慰労も兼ねる。


 カラフルなドーナツに目移りするルビナ。


「気になったものは購入しましょう。彼らはあればあるほど口にしますから、どれだけあっても足りませんからね」


 それなら……気になったものを遠慮なく……どっさりと購入したドーナツ。こんなに買っても大丈夫なのかしら?


「さぁ、馬車に戻りましょう」


 どっさりと食材が馬車に用意されていた。目指す丘の上は馬車で三十分ほど。小高い丘の上だった。


 芝生の上にシートを敷いて、購入してきた物を次々と手際よく並べていく。お湯を沸かしてお茶の準備も万端。みんなで囲むランチは美味しい。


 ランチの後は少しだけ周りを散策して、ホテルへと戻った。お腹がいっぱいで夕食は遠慮しました。明日の準備もしなくてはいけませんからね。


 はぁ。緊張する……


 


 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ